DOL APA2001 学会速報
Industry-Supported Symposia
抗精神病薬服用中のグルコース動態と糖尿病
Glucose Control and Diabetes Mellitus During Antipsychotic Treatment
高血糖症の診断、分類、病因
Diagnosis, Classification and Pathogenesis of Hyperglycemia
U型糖尿病は、さまざまな程度のインスリン抵抗性やインスリン分泌不全による病態で、有病率は米国人口の40歳代以上のおよそ10〜12%である。U型糖尿病への罹患しやすさには多因子遺伝に基づく素因がからんでいるが、薬剤を含む環境因も臨床症状の発現に大きく関与している。Lebovitz博士は現在用いられているU型糖尿病の診断基準を概説するとともに、病因や非定型抗精神病薬との関連性についても言及した。
糖尿病の状態如何によらず血糖レベルが心血管疾患のリスク増大を規定する
Cardiovascular Risk Increases with Glucose Levels Regardless of Diabetes Status
糖尿病への罹患が心血管疾患のリスクを増大することは周知であるが、糖尿病の診断基準を満たさなくても血糖レベルが心血管疾患のリスクに関連するとの報告が増えてきている。Gerstein博士は血糖値が心血管疾患の罹患に対する連続的リスクファクターであることを支持するデータを提示した。高血糖症をきたす薬剤が心血管疾患のリスクの増大に寄与する可能性が、自験データおよび他グループの報告から一貫して示唆されている。
抗精神病薬に関連したグルコース代謝の変化
Antipsychotic-Related Change in Glucose Regulation
精神分裂病患者においては、U型糖尿病を中心とするグルコース代謝異常が一般人口より高頻度にみられる。抗精神病薬による治療は、体重増加を呈さない患者においても糖代謝の異常をきたしうる。Newcomer博士は抗精神病薬服用中の患者のデータを提示し、患者と治療者に及ぼす臨床的影響について論じた。
非定型抗精神病薬: 糖尿病とBergmanの最小モデル分析
Atypical Antipsychotic Agents: Diabetes and Bergman's Minimal Model Analysis
非定型抗精神病薬の使用とグルコース代謝異常の関連に関する予備的な報告が増えているが、それが薬の直接的な影響なのか他の要因がからんでいるのかについては明らかでない。Henderson博士は精神分裂病患者において非定型抗精神病薬がグルコース代謝に与える影響を調べた2研究に焦点をあてて報告した。
抗精神病薬によるグルコース輸送の阻害
Inhibition of Glucose Transport by Antipsychotic Drugs
脳はそのエネルギー源をグルコースに依存しているにもかかわらず、ニューロンによるグルコースの取り込みのメカニズムは未知の部分が多い。Dwyer博士はラットのニューロンモデルを用いてグルコースの取り込みに対する抗精神病薬の影響を検討した。博士は自身のデータとこれまでの知見から、抗精神病薬によるグルコース代謝変化の作用機序について推論した。
化学的拘束:臨床、研究、倫理上の示唆
Chemical Restraints: Clinical, Research, and Ethical Implications
救急場面における非定型抗精神病薬
Atypical Antipsychotics in the Emergency Setting
精神病患者による暴力行動は救急場面では決して稀ではなく、迅速な行動のコントロールが傷害のリスクを減少させる。薬物療法は急性の暴力行動をコントロールし、暴力行動がおさまった後も安定した状態を維持するのに役立つ可能性がある。Currier博士は精神科救急場面で非経口製剤を含む非定型抗精神病薬の使用について論じた。
抗精神病薬の持効性注射製剤: 強制的投薬にかわって
Depot Antipsychotics: An Alternative to Forced Medications
暴力行動のリスクは重症精神疾患患者、特に急性精神病ないし躁状態の患者に多いことが報告されている。暴力行動のリスクを高める要因として物質乱用の合併が高頻度に見られる点がしばしば指摘される。抗精神病薬の持効性製剤は長期のコンプライアンスを高め、暴力行動の頻度・程度を弱める可能性がある。現時点で持効性デポ剤として使えるのは定型抗精神病薬2剤(フルフェナジン、ハロペリドール)のみである。Berry博士は、現在臨床第V相試験の段階にある非定型抗精神病薬のリスペリドンのデポ剤について論じた。
アルツハイマー病における精神病性障害:
新しい知見と新しい治療戦略の発展
Psychosis of Alzheimer's Disease:
New Knowledge, New Treatment Strategies
痴呆における精神病性障害は、妄想や幻覚といった特有の症状に示される特異な症状群である。この痴呆における精神病性障害の臨床的特徴がまず明らかにされた。次に、現時点で考えられる治療のアルゴリズムが示され、行動的介入とともに、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、定型・非定型抗精神病薬、その他の向精神薬を含めた薬物療法の指針が述べられた。講義後の質疑応答は、提示された症例への対応を視聴者参加形式で検討しながら進められた。
痴呆の精神病性障害に対する実地的治療戦略
Practical Strategies for the Treatment of Psychoses Due to Dementia
痴呆の行動障害に関する現時点での治療アルゴリズムが提案された。行動的・対人的・環境的アプローチによりケアを行うことに加えて、薬物療法を補足することが精神病症状をもつ痴呆患者に有用であると考えられた。コリンエステラーゼ阻害薬、抗精神病、その他の向精神薬とともに、薬物の複合療法が適当な場合も示唆された。副作用/安全性を監視する実際的な方法や、治療抵抗性の患者の管理に関する戦略が強調された。
痴呆の精神病性障害
Psychosis of Dementia
痴呆に基づく精神病性障害は攻撃性や焦燥といったより非特異的な行動障害とは明らかに臨床的に異なる特異な症候群とみなされる。精神病性障害はアルツハイマー病患者の約20%に生じる。痴呆における精神病性障害のいくつかの臨床的特徴が示された。痴呆の精神病性障害を的確に臨床診断することで、妥当な治療方針を決定していくことができる。
精神病治療における新時代:患者の生活の再構築と家族治療
A New Era for Managing Psychosis: Rebuilding Lives for Patients and Families Treatment
若年発症の精神病における治療
The Treatment of Juvenile-Onset Psychosis
初発精神病の早期発見と低用量のリスペリドンを用いた早期治療は、若い患者群において、長期にわたる能力障害を最小限に抑える可能性がある。認知行動療法と低用量リスペリドンで治療された患者は、6ヵ月間の研究において、精神病に移行する傾向が有意に少なかった。
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