救急場面における非定型抗精神病薬
Atypical Antipsychotics in the Emergency Setting
Glenn W. Currier, M.D.
University of Rochester Medical Center, Rochester,
NY, USA, Presenter

多くの患者にとって、精神科的ケアの一連の流れは救急治療室から始まる。救急場面で彼らの呈する暴力行動は、自傷他害のリスクをはらんでいる。米国精神科救急学会の調査によると、救急治療室スタッフの56.5%が休職を要するほどの傷害に少なくとも1回遭遇していた。

クロザピン、オランザピン、ジプラジドン、リスペリドン、クェチアピンを対象とした研究によると、非定型抗精神病薬は攻撃性に有効であることが示唆されている。これらの投薬によって身体拘束による傷害を避けることができる。経口投与が可能であれば、筋注による傷害を避けることができる。

Currier博士は、精神病性焦燥状態の急性コントロールにおいてリスペリドンの経口投与とハロペリドールの筋注を比較する予備的研究を行った。救急治療室受診患者がどちらかの治療を選ぶ方法で行われ(リスペリドン経口またはハロペリドール筋注。ロラゼパムを併用)、治療効果の評価は治療の選択にブラインドで行われた。対象者は19〜58歳までの39名の男性と21名の女性であった(平均年齢37.5歳)。60名の患者のうち、30名がリスペリドンを経口投与され、残りの30名にハロペリドール筋注が行われた。17名に尿検査が行われ、うち2名にコカインの陽性反応が検出された。大多数の患者(60名中56名)が受診時に特定不能の精神病と診断されていた。

焦燥状態評価得点のベースラインは両群で同様であった。リスペリドン+ロラゼパム経口投与の組合せはハロペリドール+ロラゼパム筋注の組合せと同様の効果を示した。治療効果の発現も両群で同等であった。最初にリスペリドンを投与された患者のうち1人は治療のためハロペリドールの投与が必要であった。副作用の報告は1例であった(ハロペリドールを投与された1患者でジストニア)。

対象者が少数で、無作為化していないこの予備的検討の限界を踏まえ、現在Currier博士らは、救急場面におけるリスペリドンの使用に関する大規模な多施設試験を施行中である。

終わりにCurrier博士は、精神分裂病患者における急性の攻撃性・暴力のマネージメントを入念に行うことが、長期的な攻撃性のリスクを減少させる可能性を示唆した。その他の研究課題として、非経口的投与の模索、他の非定型抗精神病薬の使用、ドロペリドールの使用、急性期治療の選択が長期的な治療継続に及ぼす影響についての調査、などが挙げられた。


レポーター:Elizabeth Coolidge-Stolz, M.D.
日本語翻訳・監修:Department of Psychiatry, Harvard Medical School 笠井清登
 


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