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糖尿病の状態如何によらず血糖レベルが心血管疾患のリスク増大を規定する |
Cardiovascular Risk Increases with Glucose Levels Regardless of Diabetes Status |
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Hertzel C. Gerstein, M.D.
Division of Endocrinology and Metabolism, McMaster
University, Hamilton, Ontario, Canada, Presenter |
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Gerstein博士は発表の導入として「リスク」に関連した用語の定義を確認した。彼によれば、リスクファクターとは転帰を予測する変数である。連続的リスクファクターとは、その値が高値ならば与えられた転帰の起こる可能性が高い、という変数である。修飾性(反応性)リスクファクターとは、その値のレベルを下げれば転帰の起こるリスクが減少するような変数である。
U型糖尿病は心血管疾患のリスクファクターであり、血糖値やヘモグロビンA1c値は連続的リスクファクターである。しかし、糖尿病の診断基準となる血糖値を定義している内分泌の専門家によると、最小限の血糖レベルでも網膜症や腎症を引き起こし得るとしている。つまり、糖尿病の診断基準より低い血糖レベルでも心血管疾患の罹患率を高める可能性がある。したがって、重要なのは血糖が比較的高い(糖尿病の基準は満たさないが)患者を同定し、血糖レベルを低下させるような介入を行うことである。同様な根拠から、血糖値を増大させるような医学的介入(例えば薬剤の投与)を避けるか最小限にとどめることも重要である。
糖尿病患者を対象とした研究によると、血糖値は修飾性リスクファクターである可能性がある。つまり、糖尿病患者の血糖値を下げることが心血管疾患のリスクの減少につながるということである。しかしながら、糖尿病の診断基準を満たさない高血糖成人を対象として血糖値と心血管疾患のリスクの関連を検討した研究はこれまでにない。
以上のことから、糖尿病の診断基準を満たさない高血糖成人を対象として血糖値と心血管疾患のリスクの関連を検討することの重要性は明らかである。この関連の臨床的重要性を示す前向き研究がある。それによると、糖尿病患者、耐糖能異常者、空腹時血糖値が6.1 mmol/L以上の対象者を除外したのちも、空腹時血糖値が5.2 mmol/L以上の群の方が正常な血糖値の群より心筋梗塞の罹患率がほぼ3倍との結果が得られた。
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レポーター:Elizabeth Coolidge-Stolz, M.D. |
日本語翻訳・監修: Department of Psychiatry, Harvard Medical School 笠井清登 |
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