高血糖症の診断、分類、病因
Diagnosis, Classification, and Pathogenesis of Hyperglycemia

Harold E. Lebovitz, M.D.
State University of New York Downstate Medical Center,
Brooklyn, NY, USA, Presenter


U型糖尿病は、その高い罹患率と有病率(全人口の6%、40歳以上の10〜12%と推定される)のため、米国公衆衛生における最大の関心事となっている慢性代謝性疾患である。

2000年に刊行されたアメリカ糖尿病学会の報告によると、診断基準は次のように改定されている。(1)臨床症状を有する患者において、任意血糖値が200 mg/dL(11.1 mmol/L)以上、または(2)空腹時血糖値が126 mg/dL(7.0 mmol/L)以上、または(3)75g耐糖能試験(75g OGTT)で2時間後血糖値が200 mg/dL(11.1 mmol/L)以上。

U型糖尿病への罹患しやすさには多因子遺伝に基づく素因がからんでいるが、高齢、肥満、運動不足、薬剤などの環境因が臨床症状の発現に大きく関与している。

代謝異常の内容にはインスリン抵抗性や相対的インスリン分泌不全だけでなく、脂質組成の変化(中性脂肪の増加とHDLコレステロールの低下)と高血圧も含まれる。いったん罹患すると動脈硬化を加速化し、眼や腎臓などの器官に微小血管症を形成する。

Lebovitz博士は薬剤がインスリン抵抗性を引き起こす経路についてこれまでの知見をいくつか紹介した。食欲やカロリー摂取量の増加による肥満(あるいは肥満の程度の悪化)、インスリン作用カスケードへの干渉、脂肪細胞からの遊離脂肪酸の放出の増大などである。それに加え、薬剤がβ細胞(膵臓のインスリン産生細胞)に直接干渉する、あるいはβ細胞の破壊のトリガーとなる、などの機序も考えられている。これらの影響のいずれもがU型糖尿病の発現に関与している可能性がある。

最近、非定型抗精神病薬と呼ばれる抗精神病薬の使用が糖尿病性ケトアシドーシスの発現にからんでいるとの症例報告がいくつかある。糖尿病性ケトアシドーシスとは重篤なインスリン分泌不全の急性合併症であり、早期診断・治療が施されてもなお2〜4%の死亡率がある。

Lebovitz博士は非定型抗精神病薬を服用していてU型糖尿病のリスクファクターを持つ患者のモニタリングを推奨した。モニタリングの内容は、(1)服用によって体重増加が見られたら定期的な体重のチェックを行う、(2)ベースラインの空腹時血糖値・脂質の測定と6週間後の再測定、その後は3ヵ月おきの定期検査、である。


レポーター:Elizabeth Coolidge-Stolz, M.D.
日本語翻訳・監修:Department of Psychiatry, Harvard Medical School 笠井清登

 


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