抗精神病薬の持効性注射製剤―強制的投薬にかわって―
Depot Antipsychotics: An Alternative to Forced Medications
Sally A. Berry, MD, Ph.D.
CNS Medical Affairs, Janssen Pharmaceutical Products,
Titusville, NJ, USA, Presenter

重大な医学的・社会的問題である暴力行動は、重症精神障害患者に高頻度で見られることが報告されている。暴力行動のリスクを高める要因として物質乱用の合併がしばしば見られる。一方、本人の意思に反して投薬を行うことは薬物の副作用、身体的・心的外傷、合併身体疾患の悪化、法的問題の勃発などの危険をはらんでいる。

抗精神病薬の服薬コンプライアンスを高めることにより急性の暴力状態のリスクが減少する可能性があるとはいえ、抗精神病薬服用中の患者が服薬を遵守しない問題は周知の事実である。抗精神病薬の服薬コンプライアンスを検討した24研究のレビューによると、全体の遵守度は58%にすぎなかった。

抗精神病薬のデポ剤を使用することによりコンプライアンスが改善され、急性の暴力状態のリスクが減少する可能性がある。現在、デポ剤として利用可能なのは定型抗精神病薬2剤(フルフェナジン、ハロペリドール)である。定型抗精神病薬のデポ剤を使用した場合とさまざまな非定型抗精神病薬の経口製剤の場合とで再入院率を比較した研究がある。それによると非定型抗精神病薬の経口投与の場合で再入院率が有意に低いことが示されている。ただしこの研究の問題点として、患者を異なる治療群に無作為割付けしていないことが挙げられる。そのためより重症の患者がデポ剤治療に割付けられたことによる選択バイアスが生じた可能性がある。非定型抗精神病薬リスペリドンの持効性製剤が現在臨床第V相試験の段階にある。ペプチドやその他の小分子を持続的に導入できることが確認されたメディソーブという技術を用いることにより、この製薬メーカーは持効期間を日、週、月単位で「セット」することを可能にした。

リスペリドンのデポ剤の臨床第V相試験がうまくいけば、急性暴力患者のマネージメントに効果的な新しい選択肢が加わることになるかもしれない。


レポーター:Elizabeth Coolidge-Stolz, M.D.
日本語翻訳・監修:Department of Psychiatry, Harvard Medical School 笠井清登

 


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