DOL AHA2002 学会速報






 
 



Plenary Session VII:
最新の臨床試験
Late-Breaking Clinical Trials

SAPPHIRE:血管内膜切除術に対するリスクが高い患者のステント留置と血管形成による保護

SAPPHIRE: Stenting and Angioplasty with Protection in Patients at High Risk for Endarterectomy
Yadav博士は、ステント留置による頸部血管形成と血管内膜切除術による塞栓予防を比較した「血管内膜切除術に対するリスクが高い患者のステント留置と血管形成による保護(SAPPHIRE試験)」で得られた結果から報告した。無作為に抽出したこれらのハイリスク患者307人の間では、30日目までの観察では、ステント留置による頸部血管形成術により塞栓保護を行った群が明らかに、脳卒中、心筋梗塞、死亡のリスクが低かった。最終結果は1年間の観察の後、出されることになっている。

TETAMI−enoxaparin とtirofiban による急性心筋梗塞の治療

TETAMI - Treatment of Enoxaparin and Tirofiban in Acute Myocardial Infarction
Cohen博士は、TETAMI試験(enoxaparinとtirofibanによる急性心筋梗塞の治療)の結果につき報告した。この試験は低分子ヘパリン(enoxaparin)と血小板IIb/III受容体遮断薬(tirofiban)を再灌流療法が実施されなかった患者に投与し、評価するように計画されている。結果は、enoxaparinとヘパリン、およびtirofibanとプラセボで治療された患者に統計学的な有意差は認めなかった。しかしながらサブグループ解析では、enoxaparinはKillipT型(最も軽症の心筋梗塞)の患者においては、有益であるかもしれないという結果を導き出した。Enoxaparinとtirofibanはともに、発症後12時間以内の患者においては有益であるかもしれない。


Special Session VIII:
AHA/APSCジョイントシンポジウム−虚血性脳卒中:最近のチャレンジ
Joint AHA/APSC Symposium - Ischemic Stroke: The Current Challenge

虚血性脳卒中の危険因子:東洋の立場

Risk Factors for Ischemic Stroke: East
日本における脳卒中死亡率は全体として減少した。しかしラクナ梗塞および脳出血の発症率に関しては依然として欧米諸国より高い、と尾前博士は述べた。彼はまた脳梗塞に対する生活習慣上および医学的危険因子についても言及した。

虚血性脳卒中の危険因子:西洋の立場

Risk Factors for Ischemic Stroke: West
西側諸国における脳卒中発症の重要な危険因子には高血圧症、糖尿病、喫煙および心房細動が含まれている。西側の研究者は、最近患者の脳卒中発生の危険度を評価するのに臨床所見下の疾病マーカーを多く使用するようになってきている。脳卒中の疫学において東洋と西洋の間には多くの重要な違いがあるが、それ以上に多くの類似点がある。西側でも東洋の国々でも、喫煙の中止など危険度を低下させる手段を十分に活用できていない。

再灌流術の適応

Revascularization Options
頸動脈狭窄症に対して多くの患者において頸動脈血栓内膜切除術(CEA)が行われているが、この手技には一定のリスクが伴う。頸動脈の血管形成術やステント留置術はこれに替わる治療手技である。ステント留置術のリスク低減のためには、ステント留置術に適した症例を選択することが重要となる。また遠位塞栓症の予防のためにはprotective deviceの使用が大変有用である。また脳虚血に対する頭蓋内外バイパス術が有効な症例が存在するのも事実であり、日本では現在その効果を明らかにするための無作為比較試験が行われている。

頸動脈内ステント植え込み術

Carotid Stenting
末梢塞栓防止装置の登場により、頸動脈内ステント植え込み術の成績は劇的に改善されてきた。経験を積んだ術者なら、外科的な頸動脈内膜切除術と同等かあるいはより良い成績で頸動脈内ステント植え込み術を行いうることが今回のデータから示唆される。塞栓防止装置を併用しながらの頸動脈内ステント植え込み術は、手術による危険性が高いと考えられる種々の患者にとっては理想的な治療法となるかもしれない。


心房性不整頻拍の機序と治療
Mechanisms of Atrial Tachyarrhythmias and Therapy

ラットを用いたアルコール誘発性心房頻脈性不整脈:分子生物学的機序とNaチャネル遮断薬の効果

Alcohol-Induced Atrial Tachyarrhythmias in Rat Hearts: Molecular Basis and Effects of Na+ Channel Blockade
アルコール投与により数時間以内にイオンチャネルのリモデリングが生じ不整脈基質が形成されることが、新しいラット心房細動モデル作成の過程で明らかにされた。ピルジカイニドによるNaチャネル遮断はこのアルコール誘発性心房細動を抑制した。

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