AHA2001



DOL AHA 2001 学会速報


血行再建術

Revascularization

Late Breaking Clinical Trials
 
  CART-1:
Canadian Antioxidant Restenosis 試験
  CART-1:
Canadian Antioxidant Restenosis Trial
 
  AGI-1067(AtheroGenics) の長期投与は、PTCA部の再狭窄予防と血管の動脈硬化抑制効果とを併せ持つ可能性がある。AGI-1067とprobucolは、いずれも強力な抗酸化剤である。しかしながら、CART-1ではAGI-1067投与群にのみ血管径の改善効果があった。また、AGI-1067群ではprobucol群でみられる様なQTc延長作用はみられなかった。
 
 
  ELUTES:パクリタクセル溶出ステントのトライアル評価
  ELUTES: Evaluation of Paclitaxel Eluting Stent Trial
 
  ELUTES (パクリタクセル溶出ステントのヨーロッパにおける評価)のクリニカルスタディでは、パクリタクセルをコーティングしているステントとコーティングしていないステントを比較した。そのスタディでパクリタクセルはステント内の再狭窄およびステント内径の狭窄、後期のステント内径の損失を抑制した。患者は単一の新しい病変を持っていた。スタディでわかったことはパクリタクセルをコーティングしたステントはルーチンのステント留置術において重要な役割を果たすであろうということである。
 

 
  Clopidogrelはチクロピジンよりステント血栓症の予防に優れているか?
−多施設研究の結果より−
  Is Clopidogrel Superior to Ticlopidine for the Prevention of Stent Thrombosis? Results of a Multicenter Study
  Clopidogrelを含んだ抗血小板療法を受けた患者は、チクロピジンを含んだ抗血小板療法を受けた患者に比べて、ステント血栓症の危険性が大きかった。この結果より、clopidogrelを含んだ抗血小板療法は、チクロピジンを含んだ抗血小板療法よりステント血栓症の予防効果が小さいことが示唆された。
 


 
  冠動脈内ステント留置後におけるチクロピジンとシロスタゾールの二重盲検比較
  A Randomized Comparison of Cilostazol versus Ticlopidine after Coronary-Stent Implantation
  演者らは、チクロピジンとシロスタゾールを比較した。ステント内血栓の予防に関して、シロスタゾールはチクロピジンに劣り、亜急性血栓閉塞の予防には、ステント留置の前からチクロピジンを使用すべきである、と述べた。
 

Plenary Session III:
Late Braking Clinical Trials
 
  PRESTO試験−再狭窄に対するトラニラストの効果
  The PRESTO Trials - Tranilast for Restenosis
  経皮的冠動脈インターベンションが成功した患者において、トラニラストがプラセボに比して主要冠動脈イベントの発生頻度を減少させることは証明出来なかった。しかしながら、この試験によって、いま世界中でどのような治療が行われているかを示す膨大なデータベースが出来上がった。このデータは新しい時代のインターベンションが実際にどのようなものであるかを知る上で有用であると思われる。
 


Plenary Session VI:
Joint AHA/ESC Symposium: New Frontiers in Stenting
 
  Paul Dudley White International Lecture:
もしAndreas Grüntzigが帰ってきたら?
  Paul Dudley White International Lecture:
If Andreas Grüntzig Came Back ...
  Serruys博士らは循環器の医師にとって将来重要な診断、治療の分野について述べた。その内容は心筋梗塞センター、echothermal catheterによるプラークの診断、high resolution black blood imaging、multispiral computer tomographyおよび非造影検査などの画像診断、梗塞心筋の再生治療、また自動操縦によるinterventionと多岐にわたった。
 
  多枝病変へのステント治療が冠動脈バイパス術より良い適応となるのはどのような場合か?
  When is Multivessel Stenting Preferable to Coronary Artery Bypass Grafting?
  Jacobs博士は、冠動脈疾患に対する適切な治療方針の決定のための一般的ガイドラインについて述べた。それによると、リスクが低い、ないしは中等度の患者、左室機能障害を合併していない患者、あるいはバイパス手術が禁忌である患者が、経皮的冠動脈インターベンションの良い適応となる。一方、冠動脈バイパス手術には糖尿病を合併した患者、高リスク群、および多枝病変を有する患者が適応となる。
 

Special Session VI:
Joint AHA/APSC Symposium:
The Rising Tide of Diabetic Cardiovascular Disease
 
  糖尿病患者における「経皮的冠動脈インターベンション」対「冠動脈バイパス術」:
結論のでていない問題
  Percutaneous Coronary Intervention versus Coronary Artery Bypass Graft in Diabetics:
Unanswered Questions
East vs. West
   
  東洋: Lee博士は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)の予後の比較をするにあたり、前ステント時代とステント時代の症例が混在しているために比較が困難なものになっている、と述べた。博士の講演の大半は、Korean Multicenter Revascularization Registryから得られたデータの発表に当てられた。これは、医師の選択によって集積された1995〜2000年に治療を受けた3,000症例以上のデータベースである。PCI症例のほぼ70%はステント留置を受けていた。PCI群、CABG群のいずれもおよそ1/3が糖尿病患者であった。

西洋:Frye博士は個人的な未解決の問題を提起し、それに解答することで論題にアプローチした。博士は、個々の患者に対し、治験のデータおよび医学的な証拠の範囲内で治療方針を決定するべきであると強調した。また循環器医の役割において、患者の糖尿病の治療に強力に介入することにより、急性冠動脈疾患後の予後が有意に改善され得る、という確信が強まってきていると発言した。さらに博士は、いくつかの現在進行中の臨床治験において、インスリンによる血糖値の管理や、インスリン感受性の増強による管理といった治療方法について重大な情報がもたらされるかもしれない、と述べた。

 

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