AGI-1067はprobucol同様、強力な抗酸化作用を持つ血管保護剤である。臨床試験によりprobucolがPTCA後の冠動脈再狭窄を予防することが報告されているが、QT延長という副作用のため、米国市場では敬遠されている。
CART-1の第一目標はAGI-1067をPTCA(バルーンのみで終了した例とステント留置例を含む)の術前2週間と術後4週間投与し、AGI-1067が冠動脈の再狭窄を予防するか否かを冠動脈血管内エコーで確認することであった。多施設、二重盲検、プラセボ
- コントロール試験を行い、患者群はプラセボ、probucol 500mg1日2回投与、AGI-1067 70mg、AGI-1067
140mg、AGI-1067 280mgのいずれかの群に振り分けられた。PTCAは冠動脈の新規病変で50%以上の狭窄に対して行った。
305名の患者が試験により振り分けられ、インターベンション手技の81%にステントを使用した。経過中60msec以上のQTc延長がprobucol投与群に有意にみられた(p=0.02)。
フォロー時に、冠動脈血管内エコーにより確認されたPTCA部位の最小血管面積はprobucol 投与群(p=0.01) とAGI-1067
280mg 投与群(p=0.046) でプラセボ群より有意に大きかったが、probucol群とAGI-1067群の比較では差はなかった。血管内狭窄の体積率も同様の結果であった(AGI-1067
280mg p=0.035, probucol p=0.02)。Primary endpointとして、プラセボ群では37.5%、probucol群では25.5%、AGI-1067群では26.0%で、インターベンション部位が再狭窄していた。
また、referenceとなった非インターベンション部の容積変化を血管内エコーで観察したところ、probucolは-0.2mm3
、AGI-1067 140mgでは+3.5mm3 、AGI-1067 280mgでは +1.8mm3
であった。
結論として、AGI-1067もprobucolもPTCA後の再狭窄を抑制したが、AGI-1067は非インターベンション部の血管径に対しても有効であった。また、AGI-1067群ではQTc延長はみられなかった。従ってAGI-1067の長期投与は、PTCA部の再狭窄予防と、血管径そのものの動脈硬化を改善する作用とを併せ持つと思われた。
討論参加者であるDavid O. Williams博士は、AGI-1067の効果が臨床的に十分であるか検討するためには、さらなる大規模試験が必要であると述べている。
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