Paul Dudley White International Lecture:
もしAndreas Grüntzigが帰ってきたら?
Paul Dudley White International Lecture:
If Andreas Grüntzig Came Back ...

Patrick W. Serruys
Erasmus University
Rotterdam, The Netherlands


Andreas Grüntzig博士は冠動脈形成術の発案者であったが、Serruys博士は循環器の医師にとって重要な手技、診断、治療についての現状とその将来について述べた。その内容は心筋梗塞センター、プラークの診断、新しい画像診断、梗塞心筋の再生治療、また博士自身の夢である自動操縦によるinterventionと多岐にわたった。

博士は最近報告されたRotterdamにおける心筋梗塞センターでの成績について触れ、同センターが患者の治療成績を改善していることを示した。入院時に患者は心筋梗塞部屋へ入室し、治療後は関連病院へ治療、または観察のため紹介される。

また新しい診断法として、プラークやsheer stressを検出する画像診断について述べた。プラークの検出に用いるechothermal catherterは、multi-point tomographyが可能であり、また超音波による画像診断と血管壁にかかるストレスを計測できるだけでなく、プラークの温度も感知する。プラーク温度は0.5度上昇するだけで、心事故率が上昇すると言われ、最近注目されている。このカテーテルにより、血管内の脂肪沈着、繊維組織が明瞭に区別できる。現在、人への応用が試みられており、プラークが、び漫性であれば薬物療法を選択し、危険なプラークの存在が確認できれば、血管形成術を行っている。

さらに博士はmagnetic resonance imaging、high resolution black blood imaging, multi-slide spiral computer tomography、などプラークを検出する多くの新しい画像診断について述べ、その長所と短所についても言及した。例えば、MRIは放射線や造影剤を用いない方法であるが、診断能力が低い。Multi-slide spiral computer tomographyは造影剤と放射線が必要であるが、明瞭な画像を得ることができ、プラーク内の石灰化病変や脂肪の検出も可能である。これら画像診断は診断、治療効果判定に用いられる。博士は新しい非造影検査の開発が今後重要であると述べている。これらは何度でも使用でき、被爆時間の心配もなく、立体的な病変の画像が得られるという利点がある。

心筋梗塞部の組織の再生治療は現在フランスで治験が行われている。この方法は梗塞部に myoblastを注射するもので、心筋組織は再生し電気的特性も持つようになり、治療を受けた患者の心駆出率は13%上昇し、臨床症状も改善していると述べた。

最後に博士は自動治療装置が近い将来出現し、術者は外部から操作を行うだけで、カテーテルが病変部に到達し、治療できるようになるであろうと述べた。


レポーター:Andrea R. Gwosdow, Ph.D.
日本語監訳:京都大学医学研究科循環病態学 佐藤幸人