ELUTES:パクリタクセル溶出ステントのトライアル評価
ELUTES: Evaluation of Paclitaxel Eluting Stent Trial

Anthony H. Gershilick
University Hospitals
Leicester, UK


6ヵ月間の安全性、効力、薬剤濃度による効果をみたELUTESと呼ばれるスタディは、パクリタクセルをコーティングしていないV-Flex Plus coronary stentと、4種類のコーティング濃度(0.2、 0.7、 1.4、 2.7μg/mm2)のうちの1種類をコーティングしているV-Flex Plus coronary stentを患者に使用して施行された。パクリタクセルはポリマーコーティングしていないステンレススチールステントに適応された。効力エンドポイントはステント内径の狭窄度(%)と、ステント留置後から平均6ヵ月後のフォローアップまでのステント内径の損失("late loss"と呼ばれる)であった。安全性のエンドポイントは、1ヵ月と6ヵ月に大きな有害な心イベントが起きないということであった。トライアルは単一の新しい病変のある患者に施行された。

患者は平均年齢60歳で、82%が男性であり、毎日300mgのアスピリンを投与されており、1日75mgのclopidogrelを3ヵ月間投与された。総合的な技術的成功率は99.0%(190/192患者数)であった。6ヵ月での定量的冠動脈造影では濃度との関連性がはっきりと示された。つまり、コーティングしていないステントでは34%のステント内径の狭窄率であったが、パクリタクセルをコーティングした場合、濃度が上昇するにつれステント内径の狭窄率は33%、 26%、 23%、 14%となった。コーティングしていないものと、2.7μg/mm2の濃度のパクリタクセルをコーティングしたものとの間には有意差がみられた(p<0.01)。Late lossでも同様に、0.73mmのコーティングステントと2.7μg/mm2のパクリタクセルをコーティングした0.1mmステントの間で有意差がみられた(p<0.005)。

ステント内再狭窄率はコーティングしていないステントで21%、パクリタクセルの濃度が上昇するにつれ、再狭窄率は20%、 12%、 14%、 3%となった。コーティングしていないステントと2.7μg/mm2のパクリタクセルをコーティングしたステントでは統計学的有意差はみられなかった(p=0.055)。

安全性は1ヵ月後の各群間に差はなかった。6ヵ月後ではコーティングしていないステント群の89%と、2.7μg/mm2のパクリタクセルをコーティングした群の89%で心イベントはなかった。

Gershilick博士はステント内径の狭窄とlate lossによるエンドポイントとevent-freeの生存率で示される安全エンドポイントは達成されたと締めくくった。また、パクリタクセル溶出ステントは日常のステント留置術の重要な一部分になるだろう、と述べた。

6ヵ月後の定量的冠動脈造影の結果

Dose density
Diameter Stenosis
Late Loss
Binary In-Stent Restenosis Rate
μg/mm2
%
(mm)
-
0 (control)
33.9
0.73
20.6
0.2
32.6
0.72
20.0
0.7
26.0
0.47
11.8
1.4
23.3
0.47
13.5
2.7
14.2
0.10
 3.1

レポーター:Walter Alexander
日本語監訳:京都大学医学研究科循環病態学 小野澤陽子