DOL ASCO2001 学会速報


消化器癌
Gastrointestinal Cancer

 Epithelial Growth Factor Receptorを有するCPT-11耐性大腸癌に対するcetuximab(IMC-C225)併用塩酸イリノテカン(CPT-11)療法の有効性
 Cetuximab (IMC-C225) Plus Irinotecan (CPT-11) is Active in CPT-11-Refractory Colorectal Cancer that Expresses Epidermal Growth Factor Receptor
 
 現在標準的化学療法である5-fluorouracil/CPT-11療法に耐性を示した大腸癌患者には治療法がない。Epithelial growth factor receptorのモノクローナル抗体であるcetuximab(IMC-C225)の臨床第 II相試験では、化学療法に耐性を示す腫瘍において22.5%の奏功率が得られた。これは、大腸癌を初めとする多くの癌腫に対する新たな治療戦略を期待させる成績といえる。

 進行結腸直腸癌におけるOxaliplatin(OXAL)またはCPT-11併用5-FU/Leucovorin (LV)療 法:NCCTG/CALGB Study
 Oxaliplatin (OXAL) or CPT-11 Combined with 5FU/Leucovorin (LV) in Advanced Colorectal Cancer: An NCCTG/CALGB Study
 
 Intergroupで計画された6つのarmから成る無作為化臨床第V相試験(NCCTG-N9741) のうち、3つのarmは研究開始後早期に中止された。中止された3armは、いずれも5FUを4〜5日連投するタイプのレジメンであった。中止されたうちのひとつのarm (5FU/LV) は、それよりも良好な生存率を有するSaltzのレジメンがFDAにて承認されたため、そ の後中止された。他の2つのarm (CPT-11+5FU/LV, OXAL+5FU/LV) は、10例の治療関連死が報告された後、中止された。この2つのレジメンは、日常臨床など臨床試験以外 の場では用いられるべきではない。

 
 大腸癌の手術的手法の現状:術後治療は必要か?
 Current Surgical Management of Colorectal Cancer: Is Adjuvant Therapy Still Necessary?
 
 米国における大腸癌は130,000以上の年間罹患数があり、その約半数が進行癌である。近年の罹患率および死亡率減少の一部は、外科的技術の向上に起因しているとされているため、Beart博士は、各術者の技術の違いが患者の治療成績の独立した予測因子だろうと推定した。博士の検討では、関連学会に属している外科医および属していない外科医の患者治療成績に有意差はなかったが、外科的技術は治療成績に影響している可能性があると結論づけた。さらに、外科的技術が向上していけば、局所再発が減少し、術後化学療法を必要としない患者がふえると考察した。
 
 直腸癌補助療法のアプローチ
 Approaches to Adjuvant therapy for Rectal Cancer
 
 拡大手術を施行するにも関わらず、直腸癌は全層性腫瘍患者やリンパ節転移患者では局所もしくは区域再発の危険性がある。術前補助療法は臨床病期に従って施行され、肛門括約筋の温存のため必要とされている。また術後補助療法は病理学的病期診断に影響される。 Minsky博士は補助療法の役割と共に、新規抗癌剤を含めた補助療法に関する臨床試験の重要性について主張した。
 
 直腸癌治療における5-フルオロウラシルと放射線療法の展望:分子生物学的知見の有用性
 Beyond Fluorouracil and Radiation in Rectal Cancer Therapy: The Potential of Molecular Biology
 
 現在、直腸癌の治療においては手術療法、放射線療法、化学療法が基本となっている。家族性の遺伝的腫瘍発生におけるリスク評価や一般的な癌検診の進歩に伴い、今後、直腸癌患者数、特により早期の段階で発見される患者の増加が見込まれている。よって個々の患者の予後あるいは治療の有効性を予知するのに有用な分子マーカーを確立することにより、医療の進歩につながると期待される。そしてその際、分子生物学がいかにその役割を果たし得るかについてLeichman博士が論じた。

 直腸癌術後補助療法の患者選択
 Patient Selection for Adjuvant Therapy in Rectal Cancer
 
 Tepper博士は、直腸癌術後補助療法に対する適応患者の選択限界の一つに、臨床医が局所および遠隔再発の危険性を明らかにできないことを指摘した。Tepper博士は、現在の術後補助療法の患者選択基準に、より効果的な、さらに新しいリスク査定基準が加えられる必要があると主張した。

 C-Kit (CD117)を表出する切除不能あるいは転移性胃腸間葉系腫瘍患者における分子標的経口薬STI571の安全性と有効性に関する評価
 Evaluation of the Safety and Efficacy of an Oral Molecularly-Targeted Therapy, STI571, in Patients with Unresectable or Metastatic Gastrointestinal Stromal Tumors Expressing C-Kit (CD117)
 
 慢性骨髄性白血病の非常に有効な治療薬として、最近開発された細胞のシグナル伝達阻害物質STI571を用いて、胃腸の間葉系腫瘍(肉腫)患者を対象に第II相試験が行なわれ、その治療成績から、固型癌においても選択的なシグナル伝達阻害が有効である可能性が示唆された。前治療に抵抗性の、進行したGIST患者139人に対してSTI571で治療を行なったところ、59%に部分寛解(Partial Response =PR)を得、26%に不変(Stable Disease =SD)を得た。

 転移性胃腸間葉系腫瘍における積極的薬剤STI571に関するEORTC第T相試験
 STI571, an Active Drug in Metastatic Gastrointestinal Stromal Tumors, an EORTC Phase I Study
 
 STI571を用いた転移性の胃腸の間葉系腫瘍に対する第I相試験の成功により、第II、III相試験がEORTC(European Organization for Research and Treatment of Cancer)で施行された。第I相試験では36人の患者のうち25人にSTI571の有効性が得られ、わずか4人が治療中に病気の進行を認めたにすぎなかった。

 食道癌手術における術前化学療法の有効性−Randomized Control Trial
 Surgical Resection With or Without Pre-Operative Chemotherapy in Oesophageal Cancer: An Updated Analysis of a Randomized Controlled Trial Conducted by the UK Medical Research Council Upper GI Tract Cancer Group
 
 食道癌治療において手術単独群と術前CDDP/5FUを2クール加える群とを比較した、最大規模の第V相試験を行なった結果、化学療法群で生存期間の中央値および2年生存率が有意に改善された。

 直腸癌における再発リスクの予測:病理組織学的所見等に基づいた予後因子
 Predicting Risk of Recurrence in Rectal Cancer: Tissue-Based Prognostic Factors
 
 直腸癌において完全切除後の病期分類に基づく予後予測の重要性は、局所あるいは直腸周囲のリンパ節を十分調べられないことで、しばしばないがしろにされているとMcGill University病理学教室のCarolyn Compton博士は述べている。そして12〜15個の摘出リンパ節から通常の病理学的所見がない場合には、tumor-based prognostic factorを重視すべきであると主張した。発表の中でCompton博士は、局所再発あるいは遠隔再発を予測し得る可能性のある特異的因子について論じた。

 転移性大腸癌に対するFOLFIRI-FOLFOX療法とFOLFOX - FOLFIRI療法の比較試験:第III相試験の最終報告
 FOLFIRI Followed by FOLFOX versus FOLFOX Followed by FOLFIRI in Metastatic Colorectal Cancer: Final Results of a Phase III Study
 
 転移性大腸癌に対する5- fluorouracil(5-FU)とfolinic酸(ロイコボリン)の併用にirinotecanを加えたFOLFIR療法とoxaliplatin を加えたFOLFOX療法のクロスオーバー第III相試験では、この両治療法とも、 初回治療として用いる場合は、病気の進行期間と生存期間に有意差はなかった。しかし、second line chemotherapyとしては、FOLFOX先行 の方がFOLFIRI先行より優れていた。

 PELF療法は転移性胃癌においてFAMTX療法よりも有効である
 PELF is More Active than FAMTX in Metastatic Gastric Carcinoma
 
 転移性胃癌症例に対して、シスプラチン、エピルビシン、l-ロイコボリン、5-フルオロウラシルの併用療法(PELF療法)は、奏効率、1年生存率、2年生存率においてメトトレキサート、5-フルオロウラシル、アドリアマイシンの併用療法(FAMTX療法)よりも良好である。

 リンパ節マッピングと前哨リンパ節生検:消化器の悪性腫瘍患者における病期決定の改善に役立つ画期的手技について
 Lymphatic Mapping and Sentinel Lymphadenectomy: A Novel Technique to Improve Staging in Patients with Gastrointestinal Neoplasms
 
 消化器悪性腫瘍(消化器癌)の病期(病気の進行度)を決定する上で、リンパ節の検索は非常に重要である。手術時の腸管リンパ節の位置決定(マッピング)と前哨となるリンパ節生検が、消化器癌の病期決定を改善するかどうかについて検討した。前哨リンパ節は、微少病変の転移を高頻度に検出できるために、術後化学療法などの補助療法を受けるべき患者の選出を改善することができるだろう。


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