C-Kit (CD117)を表出する切除不能あるいは転移性胃腸間葉系腫瘍患者における分子標的経口薬STI571の安全性と有効性に関する評価
Evaluation of the Safety and Efficacy of an Oral Molecularly-Targeted Therapy, STI571, in Patients with Unresectable or Metastatic Gastrointestinal Stromal Tumors Expressing C-Kit (CD117)
Charles D. Blanke, M.D.
Oregon Health Sciences University,
Portland, OR, USA

STI571は, 慢性骨髄性白血病の非常に有効な治療薬として開発された細胞のシグナル伝達阻害物質であるが、進行した胃腸の間葉系腫瘍に対しても有効性が認められることが第II相試験で明らかとなった。この新薬の成功は、ガン細胞の増殖に関わる特異的な分子を標的とした治療が、癌治療の分野にも導入されるという期待をもたせる結果となった。

STI571は、慢性骨髄性白血病細胞が有するbcr-abl融合蛋白により表出されるチロシンキナーゼのレセプターにより出現する伝達シグナルを阻害し、細胞の増殖を阻害するが、同様に、血小板から誘導される成長因子(PDGF)のレセプターや、種々の細胞の増殖に関与する蛋白であるKITのレセプターを阻害する。

胃腸の間葉系腫瘍は、腸管の結合組織から発生する悪性腫瘍である。米国における年間の発症頻度は、約5000人(Blanke博士による)であるが、化学療法や放射線療法に反応しない。多くの腫瘍細胞では、腫瘍細胞の増殖を刺激するc-kit遺伝子が発現している。

このSTI571の第II相試験では、腫瘍細胞にc-kitが表出されていることが確認された症例を対象に施行された。139人の評価可能な症例のうち、59%に部分寛解(PR)が得られた。さらに26%の患者は病気の進行を抑制することができた(SD)。 PETによる画像診断では大半の患者で腫瘍の代謝が低下している像が捉えられたが、患者によっては1回の投与でこの現象が認められた。

腫瘍による消化管出血、肝障害、浮腫、好中球減少などの重篤な副作用は、患者の21%に認められた。

生検材料を用いた突然変異の解析では、c-kitの突然変異は86%の患者で認めた。このc-kitの突然変異を有する患者は、変異を起こしていないc-kitを有する患者に比べてSTI571の治療によく反応していた。

これらの臨床試験において、STI571が胃腸の間葉系腫瘍に有効であったという有望な成績を踏まえて、第III相試験が行われている。


レポーター:Jill Waalen, M.D.
日本語翻訳・監修:東京慈恵会医科大学内科学血液・腫瘍内科講師 薄井紀子

 


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