リンパ節マッピングと前哨リンパ節生検:消化器の悪性腫瘍患者における病期決定の改善に役立つ画期的手技について
Lymphatic Mapping and Sentinel Lymphadenectomy: A Novel Technique to Improve Staging in Patients with Gastrointestinal Neoplasms.
Anton J. Bilchik, M.D., PhD,
John Wayne Cancer Institute, Santa Monica,
CA, USA

リンパ節マッピングと前哨リンパ節の摘出は、消化器癌と悪性黒色腫や乳癌とでは、その意味合いは異なる。悪性黒色腫や乳癌では、前哨リンパ節を追求し摘出することによって不必要な外科的な手術や病気を最小限にくい止めることができる。消化器癌では、どれが前哨リンパ節であるのかを慎重に位置付けることが、病理学的検索で第一に求められることである。

イソスルファンの青色色素(isosulfan blue dye)を手術中に消化器癌の腫瘤に注入する。色素はリンパ液の流れに乗って前哨リンパ節へと運ばれる。そして、主要な腫瘤病変と前哨リンパ節と他のすべてのリンパ節を根治的に摘出する。Bilchik博士は126人の患者にこの方法を用いて、平均1.7個(範囲0〜4個)の前哨リンパ節と平均15個のリンパ節を患者1人につき摘出した。摘出された標本は、多くの切り出し標本を作成し、HE染色法、サイトケラチン免疫化学的染色法を用いて詳細に検討された。

HE染色法では癌細胞が見いだせなかった前哨リンパ節のうち20%において、サイトケラチン免疫化学的染色法によって癌細胞が検出された。こうした前哨リンパ節の所見で病期が上がった症例は、大腸癌、小腸癌ではそれぞれ18%と25%であり、胃癌では30%、膵臓癌では25%であった。

Bilchik博士は、これらの消化器癌の微少転移数と腫瘍の大きさには逆相関があることを見いだした。彼は、「腫瘍が小さいほど、サイトケラチン免疫化学的染色法によって、前哨リンパ節に微少転移巣が見いだされるチャンスが大きかった」さらに、「このことは、これらの癌に対する外科的治療の在り方を考えさせる結果となった」と述べた。

博士は、右の大腸癌の患者において、左側のリンパ節に転移しているのが検出された一例について言及し、消化器癌患者において前哨リンパ節をマッピングすることの難しさについて注意を促した。 このような非典型的なリンパ液の流れは、リンパ節腫脹を伴った症例の8%に認められた。さらに、腫瘍の圧迫によってリンパ流が途絶えているような場合には、前哨リンパ節は偽陰性となる。この場合は、従来の病理学的な検索によってこれらを明らかにし、関連しているリンパ節をすべて取り除かねばならない。

他の方法としては、内視鏡的に腫瘍にテクネシウムを注入し、リンパ節シンチグラムを用いる方法がある。リンパ節シンチで陰性の場合は、手術は腫瘤と前哨リンパ節を取り除くという最低限の手術でよい。この方法を用いると、病期の早い胃癌患者では、根治的だが術後の合併症の多い拡大切除を避けることができるなど、胃癌の治療を変える可能性がある。

Bilchik博士は、予後については未知であるが、リンパ節マッピングと前哨リンパ節の検索は術後療法の選択を改善すると結論づけた。


レポーター:Aaron Levin
日本語翻訳・監修:東京慈恵会医科大学内科学血液・腫瘍内科講師 薄井紀子

 


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