臨床第 II相試験結果において、epithelial growth factor receptorの活性阻害を行うモノクローナル抗体治療は、標準化学療法が無効な大腸癌の縮小効果を呈した。Leonard Saltz博士は、5-fluorouracil/CPT-11療法が無効と判定され、現在、他の治療法がない大腸癌患者においてcetuximab(IMC-C225)の有効性を認めたという、大変興味深い結果を報告した。
さらにcetuximab(IMC-C225)は、癌細胞内で特殊な分子標的治療デザインを有する最初の臨床成功例の一つである。この抗体はepithelial growth factor receptorに結合することにより、細胞増殖に関するシグナル伝達を阻害することが立証された。
この臨床第 II相試験は、塩酸イリノテカン治療に無効であったepithelial growth factor receptor陽性の転移性大腸癌120症例を対象に行われた。同量の塩酸イリノテカンとcetuximabを併用、22.5%の症例に50%以上の縮小効果の有効性が得られ、さらに7.5%の症例にstable disease(SD)の効果が認められた。
61%の症例に"ざそう(ニキビ)"様発疹を認めた以外には、cetuximabの副作用は殆ど認められなかった。またこの発疹はdose-limitingの要因にはならなかった。
Saltz博士は、この試験は無作為化試験ではないため、cetuximabによって生存期間の延長が得られるとの結論は示すことができなかった。しかしながら、5-fluorouracil耐性および他の治療法耐性大腸癌に対し、13%有効性を有する塩酸イリノテカン単独療法に比し、22.5%有効性を有したcetuximab併用塩酸イリノテカン療法は有用であったと主張した。
Cetuximab治療の有効性を高めるには、epithelial growth factor receptor陽性の腫瘍患者を選択しなければならない。1グループでは難治性大腸癌400症例の72%がepithelial growth factor receptor陽性であると明確にしており、予測以上の高頻度であった。
Saltz博士は、今回大腸癌を対象としたcetuximab療法の研究結果は、epithelial growth factor receptor陽性の他の腫瘍においても興味深い結果であると述べた。現在肺癌の臨床試験が進行中であり、さらに頭頸部癌および、膵癌の臨床試験が計画中である。
さらに2001年6月にはU.S. Food and Drug Administration (FDA)での同薬剤の一括申請の承認を睨んでいる。