DOL APA2002 学会速報




 
 
Medical Director
Bruce B. Dan, M.D.
日本語版総監修
上島国利
(昭和大学医学部
精神医学教室教授)


双極性障害に対する薬物併用療法:理論的根拠と議論
Combination Therapy for Bipolar Disorder: Rationales and Controversies
  
双極性障害の治療における薬物併用療法の理論的根拠
The Rationale for Combining Medications in the Management of Bipolar Disorder
 
双極性障害の病態は複雑であり、薬物併用療法により一層効果的な治療ができることが考えられる。薬物併用療法は相乗的な薬理作用を生じ得る。例えば、臨床的・基礎的研究によれば、リチウムと抗けいれん薬であるdivalproexはその有用な効果において相乗的に作用する。リチウムとdivalproexの併用療法を受けている症例では、それぞれ単剤の場合と比べて服薬コンプライアンスがより高いと報告されている。双極性障害の他の治療法についても論じられる。
  
治療抵抗性双極性障害における多重薬物併用療法
Complex Combination Therapy in Refractory Bipolar Illness
 
双極性障害患者における急性期の症状改善を達成するためには、現在ではより多くの薬物を必要としている。これは病相の頻回交代化および双極性障害の発病年齢の低下によるかもしれない。本障害の治療に現在使用可能な薬物(単剤療法と併用療法)を概観した。Post博士は頻回交代型の症例の治療に関する博士自身の方針を呈示した。  
  
双極性うつ病:気分安定薬単剤か抗うつ薬併用増強療法か?
Bipolar Depression: Mood Stabilizers Alone, or Antidepressant Augmentation?
 
双極性障害患者においては、抗うつ薬はしばしば躁病や病相の頻回化を誘発する。双極性障害患者に対する治療指針の一つとして、複数の気分安定薬の使用を推奨する。自殺傾向のある症例は常に抗うつ薬により治療し、中でも選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を第一選択とする。2ヵ月間の寛解状態の後、抗うつ薬を漸減・中止する。2種類の漸減法に失敗した場合は抗うつ薬を維持する。双極性障害の長期的治療の指針となるアルゴリズムを提示する。 



双極性障害の治療における問題
Bipolar Treatment Issues
  
Topiramateによる難治性双極性うつ病の治療
Topiramate in the Treatment of Refractory Bipolar Depression
 
Topiramateの安全性と有効性について、135名の双極性障害患者を対象とした単一施設における非盲検化臨床試験が行われた。患者は36ヵ月間topiramateの追加投与を受けた。Topiramateの忍容性は高く、投与開始後2〜4週以内に臨床上有意な効果が認められた。Topiramateを投与された患者では、抗うつ薬やベンゾジアゼピン類、気分安定薬の使用量は減少していた。このことは、双極性障害の治療として、topiramateが、抗うつ薬と併用した時の気分安定薬と同様の有効性をもつことを示している。



ADHDの薬物療法
Drug Treatment of ADHD
  
塩酸メチルフェニデート1日1回投与による注意欠陥/多動性障害治療:2年調査
ADHD Treatment With a Once-Daily Formulation of Methylphenidate Hydrochloride: A Two-Year Study
 
塩酸メチルフェニデートを用いた大規模(407人)オープン試験結果が報告された。両親および教師による効果評定によると、追跡期間(最高24ヵ月)にわたって、短期治療期間に関して確立された効果と同様の効果が、安全性を有した上で維持された。薬剤使用は成長やチック、心血管系バイタルサインおよび採血上の異常といった有害事象とは関係を認めなかった。



子どもの精神疾患への沈黙を破って:国のイニシアティブ、早期発見、
および新たな薬物療法について(Part2

Breaking the Silence of Children's Mental Illness: National Initiatives, Early Detection, and New Pharmacotherapies, Part 2
  
双極性障害や他の状態からのエビデンスに基づく、若年の精神障害に対する治療の発展
Evolving Treatments for Psychiatric Disorders in Young Patients with Evidence from Bipolar and Other Conditions
 
小児期発症の双極性障害は従来信じられていたような稀な病態ではない。躁病像は大人より非定型で、焦燥感、慢性経過、そして混合状態に特徴付けられるが、この困難な診断の妥当性を経過、治療結果の研究から示した。感情調整剤に加えて、非定型抗精神病薬の投与が治療上の選択となろう。
  
児童期および思春期患者の抗精神病薬による薬物療法:何が長期投与での安全性を示すエビデンスなのか?
Antipsychotic Pharmacotherapy in Children and Adolescents: What Is the Evidence for Long-Term Safety?
 
抗精神病薬は慢性精神障害に投与されることが多く、従来型の定型抗精神病薬よりも副作用の少ないものが望まれる。児童・思春期患者への抗精神病薬投与も、EPSの少ない非定型抗精神病薬に移行してきた。しかし、対照との比較試験は多くない。行為障害へのリスペリドン投与の研究が長期安全性に関する最大のデータを提供しているが、1年間に限られている。より長期の安全性を示すことが今後の課題である。



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