児童・思春期患者への抗精神病薬での治療は、従来型の定型抗精神病薬から、EPSの少ない非定型抗精神病薬に移行してきた。しかし、対照との比較試験が少ない上に、多くは最近5年間に行われたもので、長期投与の安全性を示すことが大きな課題である。
Clozapineは神経学的副作用(特に若年者には痙攣)と血液学的副作用(無顆粒球症)に注意して使用することが知られている。36人の治療抵抗性の思春期分裂病患者への長期投与研究が報告されている。330mg/dayと少なめの用量で、平均154日治療された結果、75%の改善率を示し、過去報告されている改善率のデータに一致した。
ただし、重い副作用のため36人中6人が治療を中断しており、昏迷が1例、白血球減少症が2例、高血圧・頻脈・心電図異常が1例、著しいトランスアミナーゼ上昇が1例であった。
行為障害へのリスペリドンの長期投与の研究は、現時点で長期安全性に関する最大のデータを提供している。6週間のプラセボを対照とした二重盲検から48週間のオープン試験に移行するデザインで、米国(RIS-USA-97)とカナダ(RIS-CAN-20)で施行された。
リスペリドンで問題になる高プロラクチン血症に関して、米国で行われた試験(RIS-USA-97)では男性がオープン試験開始時をピークに、女性が4週間後をピークにプロラクチン値が低下し始め、リスペリドン群とプラセボ群との差異が消退している。
高プロラクチン血症と臨床症状との関係では、66例の高プロラクチン血症の内、身体所見が出現したのは15例(その内女性化乳房が12例で最大、無月経は1例のみ)と報告されている。
心電図異常に関して、米国での行為障害への長期投与研究(RIS-USA-97)では、QTc延長所見はみられず、著変は認められなかった。
眠気と頭痛は普通にみられる副作用であるが、その他ではEPSの出現率、TDの出現率(0.47%)ともに低く、特に後者は可逆的であったことより、総じてリスペリドンの忍容性は高く推移した。
クエチアピンを12歳から16歳の分裂感情障害(7人)と双極性障害(3人)の計10人に平均445日間投与した研究では、有効性は示され、EPSも全く出現しなかった。鎮静と頭痛はリスペリドン同様に最も普通にみられる副作用であった。
行為障害へのリスペリドン投与の研究が長期安全性に関する最大のデータを提供しているが、1年間と期間が限られている。より長期の安全性を示すことが今後の課題である。他の非定型抗精神病薬に関しては実薬間の比較試験や、より長期投与での研究が必要である。
レポーター:
緑誠会光の丘病院理事長・院長 馬屋原 健
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