国立精神保健研究所(NIMH)では、過去30年間(1970〜2000年)の退院時のデータにより、双極性障害患者における急性期の症状改善を達成するためには、現在ではより多くの薬物を必要としていることが示唆されている。2000年のデータでは1970年代に比べて病相の頻回交代化の頻度が高くなり、発病年齢が低下している。これは双極性障害患者にとっては、自分の子どもたちは親よりも8〜10歳若く初発症状を呈する可能性のあることを意味する。さらに、これらの子どもたちは親より2〜3倍の頻度で病相の頻回交代化を呈するかもしれない。Post博士によれば、これらは双極性障害が以前より難治化している原因の一部である。
Post博士は現在行われている治療法について概観した。博士によればlamotrigineは躁転を起こしにくい抗うつ薬である。対照的に、gabapentinは抗躁薬、気分安定薬ではない。Topiramateは気分安定薬の候補であり、体重減少という有益な副作用がある。双極性障害においては非定型抗精神病薬が広く使われているが、うつ病および長期的な病相予防における非定型抗精神病薬の効果は十分に研究されていない。これらの薬物は体重増加に関与するかもしれない。甲状腺ホルモンやΩ-3脂肪酸などの増強療法が使用されているが、これらの治療法の妥当性を決めるためにはさらにデータが必要である。
リチウム、カルバマゼピン、バルプロ酸は気分安定薬として広く認められているが、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、定型および非定型神経遮断薬と併用されていても、双極性障害では効果不十分であることも多い。例えば、最近のある研究によれば、頻回交代型双極性障害におけるリチウムとバルプロ酸の併用療法の有効率は25%と低かった。さらに、うつ病相の日数は躁病相の約2.5倍であった。したがって、双極性障害の治療に関しては新たな抗うつ療法が必要である。
Post博士は薬物併用療法を用いてより良い治療成績を得た。博士の患者がNIMHから退院するのに要した薬物は、平均4.4剤であった。博士の頻回交代型双極性障害の治療方針は以下の通りである。
ラピッドサイクラーの治療法の一案
薬物併用療法 | - |
| リチウム+バルプロ酸 |
| リチウム+カルバマゼピン |
| リチウム+LTG | 補充療法
| - |
| クロナゼパム、ロラゼパム、Gabapentin |
| 非定型抗精神病薬 |
| 第3の気分安定薬 |
| Topiramate |
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ナルトレキソン、Acamprosate |
| ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬 |
| MAOI
、(SNRI + Bupropion) |
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Post博士によれば、この治療法は気分状態の経過表と共に用いられている。経過表は患者により入念に作成される。患者と医師は共同作業により実際の治療計画を策定する。
レポーター:
Andrea R. Gwosdow, PhD
日本語翻訳・監修:昭和大学横浜市北部病院精神神経科助手 大嶋明彦
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