DOL APA2002 学会速報




 
 
Medical Director
Bruce B. Dan, M.D.
日本語版総監修
上島国利
(昭和大学医学部
精神医学教室教授)


気分障害の精神薬理学
Psychopharmacology of Mood Disorders
  
大うつ病性障害における疲労感と睡眠障害に対するmodafinil付加療法
Adjunct Modafinil for Fatigue and Wakefulness in MDD
 
Doghramji博士らは、大うつ病における疲労感と眠気における付加療法としてmodafinilを用いた小規模無作為二重盲検試験結果を報告した。年齢(平均45歳)、使用中の抗うつ薬(大部分がfluoxetine)、ベースラインの疲労感と眠気の得点は2群間で著変はなかった。付加6週間後、両症状において、modafinil群はプラセボ群に比較して改善を示したものの有意ではなかった。頭痛や不安などの副作用はmodafinil群で目立たなかった。  
  
更年期および閉経後女性における抗うつストラテジーとしてのエストラジオール短期使用
Short-Term Use of Estradiol as an Antidepressant Strategy in Perimenopausal and Postmenopausal Women
 
更年期および閉経後女性におけるうつ病緩和に経皮17-β-エストラジオールを用いた小規模(対象者20名)オープン試験結果の報告がなされた。治療反応において有意差が認められ、更年期女性では9名中6名でうつ症状の完全寛解を認めた一方、閉経後女性では11名中1名で反応を示したのみであった。興味深いことに、血管運動性症状の改善と気分における効果とは関係を示さなかった。


双極性障害の治療
Management of Bipolar Disorder
  
Topiramateによる急速交代型気分障害の治療
Topiramate Treatment of Rapid-Cycling Mood Disorder
 
急速交代型双極性障害に対するtopiramateの効果についての小規模臨床試験(対象者数は調査開始時60名、追跡調査終了時40名)の結果が報告された。治療によって、それまで増加していたYoung Mania尺度とハミルトン抑うつ尺度の得点は有意な改善を認めた。3年後、topiramate(しばしばlamotrigineと併用)は、双極性I型障害においては非定型抗精神病薬と、双極性II型障害においては抗うつ薬と併用されるなど、多くの患者は複数の薬剤による治療を受けていた。  


双極性障害の治療における問題
Bipolar Treatment Issues
  
Topiramateによる難治性双極性うつ病の治療
Topiramate in the Treatment of Refractory Bipolar Depression
 
Topiramateの安全性と有効性について、135名の双極性障害患者を対象とした単一施設における非盲検化臨床試験が行われた。患者は36ヵ月間topiramateの追加投与を受けた。Topiramateの忍容性は高く、投与開始後2〜4週以内に臨床上有意な効果が認められた。Topiramateを投与された患者では、抗うつ薬やベンゾジアゼピン類、気分安定薬の使用量は減少していた。このことは、双極性障害の治療として、topiramateが、抗うつ薬と併用した時の気分安定薬と同様の有効性をもつことを示している。


ADHDの薬物療法
Drug Treatment of ADHD
  
塩酸メチルフェニデート1日1回投与による注意欠陥/多動性障害治療:2年調査
ADHD Treatment With a Once-Daily Formulation of Methylphenidate Hydrochloride: A Two-Year Study
 
塩酸メチルフェニデートを用いた大規模(407人)オープン試験結果が報告された。両親および教師による効果評定によると、追跡期間(最高24ヵ月)にわたって、短期治療期間に関して確立された効果と同様の効果が、安全性を有した上で維持された。薬剤使用は成長やチック、心血管系バイタルサインおよび採血上の異常といった有害事象とは関係を認めなかった。


薬物療法における問題点
Issues in Medication Management
  
パニック障害患者のコンプライアンスと治療中断について
Compliance and Treatment Discontinuation in Panic Disorder Patients
 
パニック障害・広場恐怖(PD)患者の多くは抗うつ薬によって治療されている。多数の患者は副作用、治療抵抗性および症状の寛解のために治療を中断する。治療を維持する患者は、広場恐怖がより重症で、罹病期間が長く、依存的で抑うつの素因をもち、寛解が得られた時期が遅かった。  
  
授乳中の母親の母乳および乳児における抗うつ薬濃度についてのメタ解析
Meta-Analysis of Antidepressant Levels in Lactating Mothers' Breastmilk and Nursing Infants
 
本研究の目的は母乳を授乳中の産褥期うつ病患者の治療に最も適した抗うつ薬を同定することである。用いた基準は、乳児への曝露が最小限となる薬物を決定するためのものである。得られた結果から、ノルトリプチリンとパロキセチンが望ましい薬物であることが示唆された。第二選択薬はsertralineであった。母乳授乳中の母親のうつ病治療において避けるべき薬物はfluoxetineとcitalopramである。  



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