初産の母親のうち約13%が産褥期うつ病に罹患する。産褥期うつ病は多くの場合抗うつ薬を用いて治療される。多くの女性は治療とともに母乳を授乳することを望む。母乳は小児にとって有益である。認知発達を改善し、感染症、アレルギー、湿疹、小児期および成人期の肥満、糖尿病、自己免疫疾患の発症を抑え、母親との感情的なつながりを確立する。母乳を授乳する母親にとっても乳癌や卵巣癌の発症率の低下、妊娠後の体重減少が促進されるなどの益が得られる。
本研究の目的は、乳児への曝露が最小限となる抗うつ薬を同定することである。乳児への曝露が最小限ということは、乳児が最小薬物用量に曝露されることを必要とする。さらに、薬物に曝露された乳児は残遺効果を示すことなく代謝することが可能でなければならない。本研究は授乳中の母親と乳児の双方の抗うつ薬濃度測定によって施行された。データは報告者の未発表データと包括的な文献検索(1966年から2001年8月まで)によって得られた。
統計的なメタ解析からfluoxetineとdothiepinにおいて乳児の薬物血中濃度が最高レベルになることが示唆された。乳児におけるその濃度は母親のそれに比して10%以上も上昇していた。ノルトリプチリンとパロキセチンの乳児における濃度は通常計測不能なくらい低値であった。乳児で濃度の上昇はsertraline(7.6%)、citalopram(16.7%)でも認められた。出生前にfluoxetineに曝露された場合は、生後6週を超えて高い濃度が持続した。
乳児血漿中の母親の薬物濃度
薬物 | 乳児血漿中濃度
(ng/mL) | %上昇率
(母親のレベルを超えて) | ノルトリプチリン | 0.005 | 0 | パロキセチン | 0.01 | 2.1 | Sertraline | 0.03 | 7.6 | Fluoxetine | 0.06 | 29.4 |
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また、母親の血漿中あるいは母乳中の薬物濃度は乳児の薬物血中濃度と相関を示さなかった。したがって、乳児の薬物濃度を正確に予測する方法はない。
Weissman博士は母乳授乳中の母親にとってノルトリプチリンとパロキセチンが望ましい薬物であると結論付けた。第二選択薬はsertralineであった。母乳授乳中の母親のうつ病治療において避けるべき薬物はfluoxetineとcitalopramである。
レポーター:
Andrea R. Gwosdow, PhD
日本語翻訳・監修:昭和大学医学部精神医学教室助教授 中込和幸
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