急速交代型気分障害に対する治療は臨床上の課題となっており、その判断基準(表1参照)や、抗うつ薬の使用・中断による症状の不安定化に関すること、適切な薬物選択方法などについての問題が残されている。これまで、精神科医の多くは、気分安定薬や新しい抗てんかん薬、非定型抗精神病薬の中から治療薬を選択している。
表1
DSM-IVにおける急速交代型双極性障害の判断基準
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過去12ヵ月間に、少なくとも4回の、明らかな躁病、軽躁性エピソード、大うつ病、混合性エピソードがあった | ・ | 転換性が認められ慢性に経過する |
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Hussain博士は、全双極性障害患者の中の13〜24%は急速交代型であると述べているが、50%というある有病率調査も引用しながら、最近ではこれまで考えられていた以上に高い頻度で認められる、という考え方が一般的であると指摘している。急速交代型は、双極性I型障害よりもII型の方が5倍多く、そしてその大部分(70〜92%)は女性である。
23名の双極性I型障害の患者(男性4名、女性19名、年齢17〜57歳)と37名の双極性II型障害患者(男性8名、女性29名、年齢17〜57歳)を登録し、その後3年間の追跡調査を行った。ベースラインでの双極性I型障害群の平均罹病期間は16.2年、双極性II型障害群では14.7年であった。全患者は過去において炭酸リチウムやバルプロ酸、リスペリドン、抗うつ薬などによる治療を受けたことがあり、多くはその他の薬剤についても服用中か服用歴を有していた。
登録の際に、患者は抗うつ薬やリチウム、バルプロ酸は中断し、非定型抗精神病薬は継続することとした。Topiramateによる治療は表2に示す方法で行われた。
表2
臨床試験におけるtopiramateの投与方法
・ | 初期投与量:25mg/day | ・ | 2日毎に増量し、様子をみながら200mg/dayまで増量 | ・ | 必要に応じて最大600mg/dayまで増量 | ・ | 平均投与量:1年目328mg/day、2年目339mg/day、3年目317mg/day
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3年の追跡期間中、7名は転居のため脱落し13名はtopiramateの服用を中断していた。服薬中断は副作用の出現によるものであり、その主なものは感覚障害(9名)、時に喚語障害を伴う意識障害(6名)であった。
ハミルトン抑うつ尺度得点の改善は3ヵ月までには明らかになり、追跡期間終了まで持続した。3年間で、3名だけがtopiramate単剤で治療され、残りの37名は複数の薬剤による治療を受けていた(表3参照)。
表3
追跡期間終了時点での薬物療法
Topiramate単剤 | 3 | 2種類の薬剤併用 | 12 | 3種類の薬剤併用 | 18 | 4種類以上の薬剤併用 | 7 |
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双極性I型障害患者に対する典型的な治療はtopiramate(しばしばlamotrigineも併用)と非定型抗精神病薬の併用治療であり、双極性II型障害患者に対する典型的な治療は、topiramate(しばしばlamotrigineも併用)と抗うつ薬の併用療法であった。
研究者らは、topiramateを中心とした治療は、急速交代型気分障害に有効であり、また(他の抗てんかん薬が体重増加の副作用をもつのに対し)多くの患者に体重減少がみられるなどその忍容性も高いと結論付けている。追跡研究は現在も進行中である。
レポーター:
Elizabeth Coolidge-Stolz, MD
日本語翻訳・監修:昭和大学医学部精神医学教室 田中克俊
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