パニック障害・広場恐怖(PD)患者の多くは抗うつ薬によって治療されている。多くの患者は副作用のために治療を中断する。服薬非遵守につながる副作用には、いらいら、体重増加、性機能障害および抗コリン性の症状が挙げられる。中には薬物恐怖症のために薬物を中断する患者もいる。
本研究では、長期治療反応性、副作用発現と服薬非遵守の間の関連性を検討した。抗うつ薬治療を受けた計326名のPD患者について、3年間にわたって追跡調査を行った。用いられた薬物はimipramine
n=127、39%;clomipramine n=93、28.5%;paroxetine n=76、23.3%;その他の抗うつ薬
n=30、9.2%であった。全患者の評価にはStructured Clinical Interview for
Diagnosis(SCID)、Panic Disorder/Agoraphobia Interview(PDI)およびLongitudinal
Interview Follow up Examination(Life-up)を用いて行った。
3年間の追跡期間の間に、179名の患者(54.9%)が薬物治療を中断した。48名の患者(26.8%)は追跡不能あるいは面接を拒絶した。残りの患者のうち66名(20.2%)はPDの寛解のために精神科の援助を必要としないと感じていた。興味深いことに、寛解のために薬物を中断した患者は、治療を維持した患者に比して再発が少なかった。薬物中断のその他の理由としては、治療抵抗性(n=39、18.4%)、副作用(n=19、10.6%)および個人的な理由(n=13、7.3%)であった。最もよくみられた副作用は悪心、抗コリン性の症状、いらいら、振戦および体重増加であった。全般的には、三環系抗うつ薬(TCA)を服用している患者は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を服用している患者に比して多くの副作用を報告した。個人的な理由には、転地や転医が含まれていた。
治療中断例:感情気質(%)
- | 抑うつ型 | 高揚型 | 循環型 | 治療中 | 19.0 | 7.5 | 10.9 | 寛解 | 9.1 | 7.6 | 9.1 | 治療抵抗性 | 15.2 | 6.1 | 6.1 | 副作用 | 21.1 | 26.3 | 5.3 |
p< 0.05
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症状寛解のために薬物治療を中断した患者は治療抵抗性のために中断した患者に比して、より長く研究に留まった。PDの寛解のために治療を中断した患者はその他の群と比較して、PDおよび広場恐怖の重症度が低く、罹病期間も短かった。薬物治療を維持し、服薬遵守がより確実であった患者は、広場恐怖がより重症で、罹病期間も長く、依存的で抑うつの素因をもち、寛解が得られた時期が遅かった。
Perugi博士は患者の服薬非遵守には複数の要因が関わっていると考えている。そうした要因として、副作用、治療抵抗性、症状の寛解が挙げられる。Perugi博士は、より重症で長期間持続する症状をもつPD患者は長期間の抗うつ薬治療においてより良いコンプライアンスが得られると結論付けた。
レポーター:
Andrea R. Gwosdow, PhD
日本語翻訳・監修:昭和大学医学部精神医学教室助教授 中込和幸
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