DOL ACC 2001 学会速報
心不全
Heart Failure
拡張不全とはどのような病態をいうか、そしていかにそれを治療するべきか?
What is Diastolic Heart Failure and How Should I Treat It?
左室収縮機能障害に基づく心不全患者の治療を評価する大規模試験は今までに数多く行われてきたが、左室拡張機能障害に基づく心不全の治療を評価した大規模試験はいまだない。左室拡張機能障害に基づく心不全患者の数は多く、医師がこの現象をよく理解し(拡張不全を来した患者を)、どのように診断し、治療するべきかを学ぶことは重要である。
COPERNICUSトライアル:カルベジロールは重症慢性心不全患者の死亡率を軽減するか
COPERNICUS: A Multicenter, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study to Determine the Effect of Carvedilol on Mortality in Patients with Severe Chronic Heart Failure
軽度から中等度慢性心不全患者を対象に行われた臨床トライアルでは、カルベジロールは死亡率を軽減し、明らかに好ましい結果を示している。今回のCOPERNICUSトライアルでは、さらにカルベジロール治療を受けた重症心不全患者でも死亡率が有意に減少することが示された。
CAPRICORN:急性心筋梗塞後に左室機能障害を来たした患者の生存率と罹病率にCarvedilolがもたらす効果に関する国際協同無作為二重盲検試験
CAPRICORN: A Multinational, Randomized, Double-Blind Study on the Effects of Carvedilol on Mortality and Morbidity in Patients with Left Ventricular Dysfunction After Myocardial Infarction
急性心筋梗塞症におけるβ遮断薬治療の意義を検討した過去の研究は、血栓溶解療法とACE阻害薬が導入され、aspirinが広く使用されるようになる以前の古い時代のものである。CAPRICORN試験の結果は、急性心筋梗塞後に左室機能不全を認める患者において、carvedilolの長期投与が、全死亡、心血管死亡および非致死性再梗塞の頻度を実質的に低下させることを示した。
InSync多施設無作為臨床評価試験 (MIRACLE試験):心不全患者に対する再同期療法評価のための無作為化比較二重盲検試験成績
Multicenter InSYnc Randomized Clinical Evaluation (MIRACLE): Results of a Randomized, Double-Blind, Controlled Trial to Assess Cardiac Resynchronization Therapy in Heart Failure Patients
心房同期両心室ペーシングによる心臓再同期療法は、心室内伝導遅延や心室非同期のある心不全患者に対し将来有望な治療法と思われる。
対照をおかない小規模な予備的臨床試験で、心臓再同期療法は、好結果を得ていたが、大規模比較試験であるMIRACLE試験により、この技術が、中等〜重症心不全例に極めて効果的であることが証明された。
慢性心不全患者におけるアンジオテンシン変換酵素およびレニンの再上昇に対するカルベジロールの有効性
Beneficial Effects of Carvedilol on Angiotensin-Converting Enzyme and Renin Activities Escapes in Patients with Chronic Heart Failure
心不全は多用な神経体液性因子の慢性的活性化を伴う病態である。従来からカルベジロールは交感神経系のいくつかのステップを抑制することが知られていたが、本研究はカルベジロールがレニン・アンジオテンシン系に対しても有効な作用を有することを示した点で、大変興味深い研究である。
急性代償不全患者におけるtezosentanの有効性と安全性に関する前向き無作為二重盲検、プラセボ対照、多施設協同試験(RITZ2)
A Prospective, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Multi-Center Study of the Efficacy and Safety of Tezosentan in Patients with Acute Decompensated Heart Failure (RITZ 2)
急性代償不全に基ずく心不全において、左室機能を回復させる手段としては後負荷の減少が基本となる。本研究においては、強力な内皮依存性の血管収縮物質であるエンドセリンの受容体拮抗薬、tezosentanは急性心不全患者で心係数と、その他の血行動態的指標を有意に改善することが示された。