InSync多施設無作為臨床評価試験 (MIRACLE試験):心不全患者に対する再同期療法評価のための無作為化比較二重盲検試験成績
Multicenter InSync Randomized Clinical Evaluation (MIRACLE): Results of a Randomized, Double-Blind, Controlled Trial to Assess Cardiac Resynchronization Therapy in Heart Failure Patients
William T. Abraham
University of Kentucky College of Medicine, Lexington, Kentucky, USA

心房同期両心室ペーシングによる心臓再同期療法が、慢性心不全患者の生活の質(quality of life;QOL)や社会的能力を改善することが、開発段階の研究により証明されていた。しかし、それらの研究は対照をおかず、少数例によるものであった。MIRACLE試験はこの治療法における初の大規模、二重盲検、比較試験であり、試験実施者は、極めて良い成績が得られたことを今回の学会で発表した。

試験参加全症例に対して、心房同期両心室ペーシング装置の埋め込みを行った。試験実施者の予想を上回り、手術成功率は93%であった。無作為に対照群に割り付けられた132例の患者のペーシング装置は作動させず、治療群に割り付けられた134例は、試験期間の6ヵ月間装置を作動させた。結果は、劇的であった。装置を使用したNew York Heart Association (NYHA) Class III ないし IVの心不全例のQOLが改善され、NYHAの機能分類は平均で1段階良くなり、運動耐容能の改善、心臓形態、心機能の改善が得られた。これらのパラメーターは、心臓超音波検査や標準化した6分間歩行を含む、種々の方法により評価した。
治療群では、複合心不全スコアの改善もみられた。

Abraham博士は、米国内には約500万人の心不全患者がおり、約75万人がこの治療法の対象者(言い換えれば、NYHA Class III ないし IVの心不全例および非同期例)になるであろうと発言した。彼は、二重盲検相で対照群となった全症例の装置を6ヵ月の試験期間終了後に作動させるようにしたことに言及した。彼のグループはいずれ、「クロスオーバー」させた臨床経過の成果を発表する予定である。この装置の長期安全性に関する質問に対し、Abraham博士は、装置を埋め込んだ最初の症例は1998年以来仕事をし、元気でいると答えた。「実際、有害事象が無いだけでなく、長期の使用についても首尾一貫して有益に思われる。」

レポーター:Andre Weinberger, MD
日本語翻訳:日本大学医学部第二内科 高橋敦彦
日本語監修:日本大学医学部第二内科教授  上松瀬勝男


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