COPERNICUSトライアル:カルベジロールは重症慢性心不全患者の死亡率を軽減するか
COPERNICUS: A Multicenter, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study to Determine the Effect of Carvedilol on Mortality in Patients with Severe Chronic Heart Failure
Milton Packer
Columbia University College of Physicians and Surgeons, New York, USA


基本治療にカルベジロール投与を追加して重症心不全患者を追跡したCOPERNICUSトライアルの結果が、既に簡単に報告されている。それによれば、本トライアルは開始から21ヵ月で全死亡を35%減少させた(p<0.001)。その時点で勧告を受け、トライアルは中止に至っている。本学会において、Packer博士はこの記念すべき臨床トライアルにおけるその他の主要結果を、はじめて明らかにした。

COPERNICUSトライアルは、安静や軽労作で心不全症状が発現し、利尿薬やACE阻害薬、それに適宣のジゴシン使用にもかかわらず駆出率が25%未満の2,289名を対象とした。報告によれば、カルベジロール投与は次に掲げる全てのエンドポイントを減少させた。
  1. 死亡または入院: 24%の減少
  2. 死亡または心・血管事故による入院: 27%の減少
  3. 死亡または心不全増悪による入院: 31%の減少
  4. あらゆる入院: 20%減少
  5. 心・血管事故による入院: 28%減少
  6. 心不全増悪による入院: 33%の減少
  7. 入院日数: 27%の減少
  8. 入院患者数: 20%の減少
  9. 一回当たりの入院日数: 9%の減少

これらエンドポイントの減少は全て統計学的に有意であった。加えて、入院中に使われた治療法の総数(例えば、利尿薬の静注や強心薬の静注)、それに心エコー図検査の回数をも減らした。また、入院期間や集中治療の度合いもカルベジロールは減らし、患者自身による概括改善度は良くなった。一方、心不全の悪化や不整脈、それに突然死などの有害事象は減少した(P<0.05)。そして多分最も重要なことであるが、投与初期並びに増量時期での有害事象の発生が増加しなかった。というのは、心不全患者にβ遮断薬治療をはじめた臨床医は、この時期における悪化徴候の出現が随分気になっていた。

Packer博士は、「カルベジロール効果は病気の重症度と相関しており、重いヒトほど利益が大きい可能性がある」と述べている。β遮断薬の心不全治療と歴史的経緯に関する質問に答えて、Packer博士は次の様に言っている。「我々の考えは過去10年から15年間で大きく変わった。かつて心不全は収縮能の低下に基づく血行動態の異常としてしか考えなかった。その脈絡では心不全患者へのβ遮断薬投与は到底考えられなかった。しかし、現在では、心不全の本質は慢性的な神経・体液因子の活性化にある。その意味から心臓へのカテコラミン刺激抑制は効果的である」と。


レポーター:Andre Weinberger, MD
日本語翻訳・監修:北里大学医学部内科学教授 和泉 徹


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