CAPRICORN:急性心筋梗塞後に左室機能障害を来たした患者の生存率と罹病率にCarvedilolがもたらす効果に関する国際協同無作為二重盲検試験
CAPRICORN: A Multinational, Randomized, Double-Blind Study of the Effects of Carvedilol on Mortality and Morbidity in Patients with Left Ventricular Dysfunction after Myocardial Infarction
Henry J. Dargie
University of Glasgow Royal Infirmary, Glasgow, Scotland, UK

CAPRICORN試験は、血栓溶解療法とアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬が導入され、さらにaspirinが広く使用されるようになった今の時代において、急性心筋梗塞に対するβ遮断薬療法の効果を検討した初めての大規模プラセボ対照試験である。さらに過去の多くの試験は心不全患者を除外しているが、CAPRICORN試験では、臨床的な心不全合併の有無を問わず、左室駆出率が40%未満の左室機能不全を認める急性心筋梗塞患者を対象とした。1,959 例を無作為にプラセボ投与群と carvedilol投与群の2群に分けた。Carvedilol は漸増法で開始し、最大用量は25mg/日、1日2回投与とした。実薬群の75%の患者が最大用量まで増量可能であり、忍容性も良好であった。治療は発症後3日から21日以内に開始され、平均では約10日後に開始された。平均観察期間は1.3年であった。

その結果、carvedilolは全死亡を23%減少させ(p<.03)、非致死性心筋梗塞を41% 減少させた(p<.01)。また、全死亡あるいは非致死性心筋梗塞を発症した総数は実薬群で 29%減少した(p<.002)。有意ではなかったが、入院の頻度も実薬群で減少傾向を認めた。以上の成績は、carvedilolにより1年間に一人の患者を死亡から救うためには43人を治療すればよいことを示している。この数値はACE阻害薬に匹敵し、満足すべきものである。しかも、このcarvedilol の効果はACE阻害薬の効果に相加的と考えられ、両薬剤の併用によって好ましい複合的な効果が得られる可能性も高い。

CAPRICORN試験の結果は、CCUにおける患者管理と慢性的なうっ血性心不全治療の間の架け橋となるものである。多くの場合、うっ血性心不全の誕生の場は CCUである。したがって本研究の成績は、左室機能不全を合併する急性心筋梗塞に対してCCU 在室中に carvedilol治療を開始することにより、うっ血性心不全への進展抑制が期待できることを示している。



レポーター:Andre Weinberger, MD
日本語翻訳:大阪大学大学院病態情報内科学 佐藤秀幸
日本語監修:大阪大学大学院病態情報内科学教授  堀 正二


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