非ステロイド系抗炎症薬はアルツハイマー病の発症リスクを低下させる可能性がある、という報告がAmerican
Academy of Neurology学会で発表された。研究者らは計15,834人を含んだ9つの研究の結果を解析した。その結果、アスピリン以外の非ステロイド系抗炎症薬を内服していた者におけるアルツハイマー病の合併相対リスクは0.72であった。一方アスピリンの合併相対リスクは0.87であった。アスピリン内服による有意な効果が認められなかったのはこの集団においてアスピリンの内服をしていた者の数が少なかったためと思われた。筆者らはまた、アスピリンは通常心血管イベントの予防には低用量が使用されており、他の抗炎症薬と伴に用いられる場合の用量はそれよりも高用量が用いられていることを指摘している。今後前向き試験が行われることにより薬剤とリスク軽減の関係が明らかになるであろう。
母親がうつ病を有すると子供は十代半ばまでにうつ病を発症するリスクが高い、という報告がArchives
of General Psychiatry 3月号に掲載された。研究者らは816人の女性とその15歳の子供に対し、母親のうつ病の重症度、時期、および期間と子供のうつ病および不安症などのうつ病以外の精神障害の発症の有無を調査した。その結果、母親がうつ病を有するとその子供がうつ病またはうつ病以外の精神障害を有すると診断される確率が有意に高かった。他の因子を調整したところ、母親のうつ病の重症度はその時期よりも有意に子供のリスクに影響した。母親が1〜2ヵ月間大うつ病を有していたり、軽度のうつ病を12ヵ月以上有している場合は、子供のリスクが上昇した。
うつ病に対し抗うつ薬のみまたは主に抗うつ薬で治療を受けた患者は、その治療に満足していないことが多い、という報告がAmerican
Journal of Managed Care 2月号に掲載された。研究者らはうつ病と初めて診断された患者274人に調査を行った。全体の78%に抗うつ薬が処方されたが、教育的あるいはカウンセリングなどの方法が取られた患者は33%に過ぎなかった。3ヵ月後に薬物療法の中断や治療に対する不満などの不良な結果が得られたことから、筆者らは、精神的ケアなどの紹介を含めたうつ病に対する包括的な治療が必要である、と主張している。
生理や他のホルモン関連性の症状を有する思春期の女性は将来の妊娠出産に不安を感じており、精神的評価およびケアにより利益がもたらされる可能性がある、という報告がJournal
of Pediatric and Adolescent Gynecology 2月号に掲載された。研究者らは多嚢胞性卵巣症候群を有する思春期の女性97人と同世代の女性187人を調査した。その結果、多嚢胞性卵巣症候群を有する群では将来の妊娠出産を心配している確率が3倍以上高かった。それらの不安があると「生活の質」に関する12のカテゴリーのうち10においての、特に自己尊重、メンタルヘルスにおけるスコアが有意に低かった。
核磁気共鳴画像の結果から、嫌気のような表情は脳の特定の部位で認識されることが示された、とAnnals
of Neurologyオンライン版2月14日号に掲載された。フランスの研究者らは術前に頭部に電極を埋め込まれたてんかん患者を調べた。患者が嫌気を示した人の写真を見てそれを認識すると、島(insula)のある亜区域が活性化された。他人の表情に対する認識は統合失調症、ある種の痴呆、ハンチントン病その他の障害で典型的に乏しく、今回の発見からこれらの障害の神経生物学的なmapを描くことが可能となる、と筆者らは述べている。
食事あるいはサプリメントからのカロチンやビタミンC、Eの摂取はアルツハイマー病のリスクを減少させることはない、という報告がArchives
of Neurology 2月号に掲載された。研究開始時にアルツハイマー病を有さない高齢者980人を4年間追跡調査した結果、242例の同疾患の発症がみられた。短期の食事の情報によると、抗酸化ビタミンを多く摂取していてもアルツハイマー病の発症は減少しなかった。同研究においては若年期の食事の情報が含まれていないため、長期の食事が発症のリスクに影響しているか否かは検討できていない。
注意欠陥多動性障害の小児およびその両親が、行動技能ならびに社会的技能のクラスを受講することにより薬物療法に加えさらに利益がもたらされる可能性がある、という報告がJournal
of Developmental and Behavioral Pediatrics 2月号に掲載された。米国の研究者らは内服を開始する注意欠陥多動性障害の5〜12歳の小児100人およびその両親を薬物療法のみまたは薬物療法に8週間のクラスを受講する群の2群に割り付けた。クラスを受講した両親はその子供の症状の改善をより多く報告した。筆者らは、クラスを受講することにより小児の症状自体が改善したというよりむしろそれにより両親が助けられた可能性があると述べているが、一方それらのクラスは両親や教師が同障害に基づく行動をより理解するのに役立つものとして支持している。
不飽和脂肪酸を豊富に含む食事はアルツハイマー病の発症を予防する可能性があるが、飽和脂肪酸を多く含む食事は逆にそのリスクを上昇させる可能性がある、という報告がArchives
of Neurology 2月号に掲載された。研究者らは65歳以上の地域住民815人を無作為に抽出し評価した。ベースラインではアルツハイマー病を有する者はなく、全員が過去の食事に対する質問表に回答した。平均追跡期間3.9年の後、131人において同疾患が発症した。飽和脂肪酸を最も多く摂取していた群の人々は飽和脂肪酸を最も少なく摂取していた群の人々と比較し、アルツハイマー病の発症リスクが2.3倍であった。この結果から将来的に、脂肪摂取、脳の脂質組成と、アルツハイマー病または他の痴呆の発症に対する新たな理解が導かれる可能性がある。