閉経後女性における7年間の研究から、アスピリンを内服することにより膵がんの発症率が減少する可能性がある、という報告が
Journal of the National Cancer Institute 8月7日号に掲載された。米国の研究チームは28,000人以上の閉経後女性を7年間追跡調査した。カルテからそのうち80人に膵がんが発症したことがわかった。アスピリンを常用している女性においてはしていない女性と比較し膵がんの発症率が低かった。さらなる研究により、アスピリンの常用とがんの発症の関係、および他の非ステイロイド系抗炎症薬が膵がんのリスクに影響するか否かが明らかになるであろう。
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成人急性骨髄性白血病に対するPhase
I 臨床試験段階にある薬剤は著効を示す[2002-08-27]
動物および人間を使用した研究によると、神経膠芽細胞腫の治療に際し、ボロノフェニルアラニン(ホウ素化合物)は放射線照射療法と併用することによりさらに有効性が増すという報告が、Radiation
Research 2002年6月号およびCancer Research 2001年11月号に掲載された(それぞれヒトとラットによる結果)。研究者らは、腫瘍を有するラットの脳および培養したヒト腫瘍細胞にボロノフェニルアラニン投与後に放射線を照射し質量分析法の一種を使用して、同薬の取り込みおよび破壊を計測した。その結果、薬物注入時間を6時間という長時間にしたことによって(一方、最近の標準的な注入時間は1〜2時間)、悪性腫瘍内の薬物濃度が高く、毒性が強くなった。実験データをもとに、薬物の注入時間を調節することにより将来的に治療の成功率が改善することであろう。
タモキシフェン誘発性の顔面紅潮を有する乳がん患者に一般的な抗てんかん薬であるガバペンチンが有効である可能性がある、とAmerican
Society of Clinical Oncology年次会議で発表された。16人の女性を対象としたパイロットスタディにおいて、ガバペンチンを1日3回内服したところ、そのうち14人において顔面紅潮の持続時間が70%、またその重症度が50%軽減したと報告した。3人は症状が完全に消失した。さらに倍用量のガスペンチンをプラセボと比較する大規模な無作為試験が現在進行中である。
上皮増殖因子受容体阻害薬
ZD 1839 (Iressa) は非小細胞肺がん患者の症状やQOLを改善する、 とAmerican Society
of Clinical Oncology年次会議で報告された。Ronald B. Natale博士らは2回以上の化学療法にもかかわらず再発のみられた非小細胞肺がん患者216人を、同薬1日250mgまたは500mg投与群に無作為に割り付け、疾患が進行するまで観察した。肺がんに伴う症状は投薬により約40%の患者で改善が認められ、生存期間も延長した。低用量投与群において43%の患者に改善が認められたのに対し高用量群では34%であったことから、博士らは1日250mg投与を薦めている。さらに、症状の改善が認められた患者においては症状の変化がみられなかった患者と比較し、約5ヵ月生存期間が長かった、と述べている。
がん治療そのものによる死亡を含めると、癌患者の死亡率は約1%上昇することになるが、そうすることにより将来的な死亡率や生存率の統計が、医学の進歩をよりよく反映する指標となる、という報告がJournal
of the National Cancer Institute 7月17日号に掲載された。手術や放射線療法、化学療法などの治療後、30日以内の死亡を原疾患ではなくその治療に関連付ける傾向は、早期発見により比較的限定した疾患を有する患者の多い、乳がんおよび前立腺がんにおいて顕著のようであった。治療に関連した死亡をがん死に含めることにより、すべての段階における患者においてさらにはっきりとした死亡率の情報が提供されるであろう。
血管新生阻害薬ベバシズマブは転移性腎細胞がん患者に有意に有効性を発揮する、という報告がAmerican
Society for Clinical Oncologyで発表された。116人の患者をプラセボ群、低用量群(3
mg/kg)、および高用量群(10 mg/kg)に無作為に割り付けた第II 相試験において、高用量投与群の計測上の腫瘍成長速度はプラセボ群と比較し2.5倍であった(約2ヵ月対5ヵ月)。その差は小さかったものの、統計学的には有意に大きな差であった。低用量投与群においても差は少ないが有意な効果を認めた。ベバシズマブに関しては他に、乳がんおよび大腸直腸がんに対する第
III 相試験、前立腺がん、大腸直腸がんおよび肺がんに対する第II相試験を含めた20以上の試験が進行中である。