昏睡状態の心停止蘇生後患者において徐脈は生存率および神経学的状態を予測する可能性がある [2014-10-28]
Bradycardia may forecast survival and neurologic status in comatose cardiac arrest survivors

院外心停止(OHCA)後24時間以内の患者が昏睡状態にある場合の予後予測を補助する方法を開発した、との研究結果がAcute Cardiovascular Care 2014年次集会で発表された。スタディでは、病院の標準的な24時間低体温療法プロトコールを施行されたOHCA後昏睡状態の生存者234人を対象とした。心調律は1時間ごとに計測され、洞性徐脈が患者の層別化に使用された。一次エンドポイントは180日間の死亡率であった。低体温療法中に洞性徐脈であった者の180日死亡率は17%であったのに対し、洞性徐脈でなかった者においては38%であった(p<0.001)。低体温療法中の徐脈は、性別、年齢、合併症、心停止時に周囲に人がおりバイスタンダーCPRを施行されたなどの既知の交絡因子で補正しても、180日死亡率が低いことの独立した予測因子であった。低体温療法中に徐脈であった患者は徐脈でない患者よりも180日死亡率が50〜60%低かった。洞性徐脈であることは、心停止から180日後の神経学的状態が良好であることと直接的な相関が認められた。これらの結果は、回復が見込めるため病院が集中治療資源を優先的に割り当てることのできる患者の早期のマーカーを提供している可能性がある。

ビタミンD欠乏は急性心筋梗塞後の神経学的予後不良および死亡率上昇と関連がある [2014-10-28]
Vitamin D deficiency associated with poor neurologic outcome and increased mortality after acute myocardial infarction

ビタミンD欠乏は心臓突然停止後の神経学的予後不良のリスクを7倍上昇させるとの研究結果がAcute Cardiovascular Care 2014年次集会で発表された。ビタミンD欠乏はまた、心臓突然停止後の死亡確率を上昇させることにも繋がった。研究者らは、韓国ソウルのSeverance心血管病院において、心疾患によると推定される心臓突然停止から蘇生された意識のない患者全ての臨床データを前向きに解析した。スタディには53人の患者が組み入れられた。バイスタンダーによる心肺蘇生(CPR)は41人(77%)の患者において行われた。最初にモニターされた時の心調律が電気ショック可能であったのは36人(68%)であり、不可能であったのは17人(32%)であった。平均のビタミンDレベルは10.3ng/mLであり、31人(59%)が欠乏していた。神経学的予後が不良であった患者は予後が良好であった患者と比較し、ビタミンDレベルが有意に低かった(7.9ng/mL対12.4ng/mL、p=0.002)。退院後6か月の神経学的予後が不良であったのはビタミンD欠乏患者の65%であったのに対し、ビタミンDが健康レベルである患者では23%であった。また、ビタミンD欠乏患者の29%が6か月以内に死亡したのに対し、ビタミンDレベルが良好であった患者においてはゼロであった(p=0.007)。

精神的ストレスが心臓血管系に与える影響には男女差がある [2014-10-21]
Mental stress affects the cardiovascular health of men and women differently

男性と女性とでは精神的ストレスに対する心血管系および精神的反応が異なるとの、既に心疾患に対し治療を受けている男女のスタディの結果が示された。Journal of the American College of Cardiologyに掲載されたこのスタディは、抗精神病薬エスシタロプラムの精神的ストレスによる心疾患に対する影響を調査した大規模REMITスタディに登録された心疾患と診断された女性56人および男性254人を調査した。ベースラインの検査施行後、参加者は3つの精神的にストレスフルな課題―暗算試験、鏡映描写試験、および怒りの呼び戻し試験―を行い、その後にトレッドミル運動試験を受けた。精神的ストレス課題遂行中および課題と課題の合間の休憩中に、研究者らは心エコー検査を施行し心臓の変化を調査し、採血をし、血圧および心拍数を計測した。男性は精神的ストレスに対し血圧や心拍数がより多く変化したが、女性においては心筋虚血を経験する者が多かった。女性においてはまた血小板凝集を男性よりも多く来した。女性は男性と比較し精神的ストレス試験中にネガティブな感情の増大がより大きく、ポジティブな感情の減少がより大きかった。

小児における肥満は心臓の構造および収縮機能に影響することが示された [2014-10-21]
Obesity in children found to affect cardiac geometry and systolic function

Journal of the American College of Cardiologyに掲載されたスタディの結果、肥満の小児において心臓の構造および収縮機能の変化が認められた。研究者らは2次元スペックルトラッキングエコー(2D-STE)を、9〜16歳の肥満小児61人および非肥満小児40人に対し施行した。対象者は年齢、性別、および身長でマッチさせたが、肥満小児はボディーマスインデックスが有意に大きく(BMI 31対19kg/m2)、腹囲が大きく、収縮期血圧が高く、脂質および糖代謝指標が不良であった。非肥満群と比較し、肥満の小児は左室(LV)壁が厚く、LV拡張末期容積が29%大きく、LV体積が40%大きかった。左房(LA)容積、LA容積指数、右房面積、および右室径もまた肥満小児において有意に大であった。この差は身体的発達および発育で補正しても依然として有意であったが、LV収縮期径および拡張期径指標はこれら2群で同等であった。さらに、肥満の小児は血圧が有意に高くLDLコレステロール値が高く、HDLコレステロール値は有意に低かった。さらにスタディを行いこれらの変化が減量により可逆的なものかを判断し、これらの早期の心血管系の予測因子を確定することが必要である。

冠動脈バイパス術後の血糖コントロールは退院後の生存期間に影響しない [2014-10-14]
Survival after discharge is not affected by blood sugar control following coronary artery bypass graft surgery

冠動脈バイパス術(CABG)を施行される患者に対し術後に厳格な血糖コントロールを行う必要はない可能性がある、とのスタディ結果がAnnals of Thoracic Surgery 2014年10月号に掲載された。過去の研究ではCABGおよび他の心臓手術後の高血糖が合併症および死亡率を上昇させることが示された;しかし最近のスタディでは、糖尿病を有する患者でも有さない患者でも、CABG後の寛容な血糖コントロール(<180mg/dL)の方が安全でより有益な可能性があることが示された。今回のスタディでは初回単独CABG術後の血糖コントロールに基づく長期生存率および健康に関連したQOLに関して評価した。糖尿病を有するまたは有さない患者が厳格なまたは寛容な血糖コントロール群にランダムに割り付けられた。血糖値が180mg/dL未満に維持されている限り、退院後の生存期間は院内の血糖コントロールレベルには影響されなかった。さらに、ベースラインから6か月後までの健康に関連したQOLは、血糖コントロールが厳格であろうとなかろうと全ての患者において有意に改善した。CABG術後の緩やかな血糖コントロールは院内低血糖イベントのリスクや血糖低下による二次的な合併症を軽減できる、と筆者らは述べている。

閉経後女性の高血圧リスクは道路に近接すると上昇する [2014-10-14]
Risk of hypertension in post-menopausal women rises with proximity to the roadways

Journal of the American Heart Associationに掲載された新たなスタディの結果、幹線道路近くに居住することと高血圧リスクとに有意な関連が報告された。閉経後女性5,400人のデータ解析の結果、高速道路または幹線道路から100メートル以内に居住する女性は、1,000m以上離れた所に居住する女性よりも高血圧リスクが22%高いことが示された。その中間の距離の女性では、道路に近いほど高血圧リスクは上昇した。幹線道路に最も近くに居住する者の高血圧の比率は1.22対1であり、100〜200mの所に居住する者では1.13対1 であり、200〜1,000mの所に居住する者では1.05対1であった。これらの比率は、主要道路から1,000m以上離れた所に居住する者の有病率を1として指標化できる。疫学的表現をすると、主要道路近くに居住する58歳女性の高血圧リスクは道路から遠くに居住する60歳女性のリスクと同等であった。今回のスタディで報告されたリスク上昇は、年齢、対象者属性、健康、および生活習慣や地域のファストフードの利用可能状況までをも含む広範な交絡因子を統計学的に説明できた。

心臓手術後の降圧薬使用は急性腎障害患者の透析の必要性を減少させない [2014-10-07]
Antihypertensive drug after cardiac surgery does not reduce need for dialysis in patients with acute renal injury

心臓手術後の急性腎障害患者において降圧薬fenoldopamの点滴は、腎代替療法(透析)の必要性または30日間の死亡リスクを低下させず血圧低下率を上昇させる、との研究結果がEuropean Society of Intensive Care Medicine年次集会で発表され同時にJAMAオンライン版に掲載された。研究者らは心臓手術後の早期急性腎障害を伴い集中治療室に入室した患者667人を、fenoldopam点滴(338人)またはプラセボ(329人)を投与される群にランダムに割り付けた。Fenoldopam群患者338人中透析治療にまで急性腎障害が進行したのは69人であった。計画されていた中間解析後に安全委員会の勧告によりスタディは無益であるため中止された。透析を必要としたのはfenoldopam群の20%であったのに対し、プラセボ群では18%であった(p=0.47)。30日死亡率はfenoldopam群で23%であったのに対し、プラセボ群では22%であった(p=0.86)。血圧低下はfenoldopam群の方が高率で26%であり、それに対しプラセボ群では15%であった(p=0.001)。Fenoldopamのコスト、有効性の欠如、および血圧低下発現率が高いことなどから筆者らは、これらの患者における腎保護目的でのこの薬剤の使用は正当ではないと結論付けた。

男性において健康的な生活習慣の選択は心筋梗塞のリスクを劇的に減少させる可能性がある [2014-10-07]
Healthy lifestyle choices may dramatically reduce risk of myocardial infarction in men

男性において、健康的な体重および食事療法の維持、運動、喫煙をしないことさらに中等度の飲酒などの健康的な生活を実践することにより、冠動脈イベントの5分の4は予防可能であるとの新たなスタディ結果がJournal of the American College of Cardiologyに掲載された。研究者らは健康なスウェーデン人男性20,721人(45〜79歳)を調査し11年間追跡した。生活習慣の選択は、食事、飲酒量、喫煙の有無、運動および内臓脂肪レベルを調査する質問表により評価した。その結果、各々の個別の生活習慣因子を実践することにより心筋梗塞(MI)リスクが明確に低下することが明らかになった。例えば、低リスクの食事と中等度の飲酒をすることにより、低リスクファクターのいずれも実践していない高リスク群と比較し、MIリスクが35%低いと推定された。低リスク食と中等度飲酒を実践し、喫煙せず身体活動性が高く内臓脂肪の少ない男性は、リスクが86%低かった。高血圧および高コレステロールを有する男性においても同様の結果が認められた。これらの生活習慣は修正可能であり、高リスクな習慣から低リスクな習慣に変更することは心血管系の健康に対し大きな影響を来し得る、と筆者らは指摘している。