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凝視、眠気、その他精神面での推移はアルツハイマー病患者に多く認められる [2010-01-26]
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Staring, sleepiness, other mental lapses more likely in patients with Alzheimer's |
認知機能の変動または思考の流れが一時的に失われるエピソードは、健常な高齢者に比べアルツハイマー病を発症している高齢者に多く認められる、とAmerican Academy of NeurologyのジャーナルNeurology 1月19日号に掲載された。先行研究では認知機能の変動とレビー小体型認知症は関連があるとされた。今回の新たな研究データは、記憶障害を有する高齢者511人(平均年齢78歳)のアルツハイマー病の評価から得られたものである。参加者は思考と記憶力に関する標準的な試験を受け、問診は参加者本人と家族に行われた。前日十分な睡眠をとっているにもかかわらず日中まで続く眠気や傾眠傾向、まとまりのないまたは非論理的な思考をする時間、または長時間の虚空凝視などがチェックされた。参加者の12%がこれらの症状のうち少なくとも3つ以上の症状を有し、認知機能の変動のクライテリアに合致した。思考の流れが一時的に失われる症状を有する者はアルツハイマー病と診断される確率が4.6倍高かった。非常に軽度または軽度の認知症と診断された216人中25人がこの症状を有していたが、認知症を有さない295人中この症状を有していたのはわずか2人であった。さらに、この症状を有する者は有さない者に比べ思考と記憶力に関する試験の結果が不良であった。
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中年期の中等度の運動は軽度認知機能障害を予防し改善する [2010-01-26]
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Moderate physical activity in midlife associated with preventing, improving mild cognitive impairment |
中高年の中等度の運動は軽度認知機能障害(MCI)のリスクを低下させ、6ヵ月の強度有酸素運動はすでに認知機能障害を有する人々の認知機能を改善させる可能性があるとの2つの研究結果がArchives
of Neurology 1月号に掲載された。MCIを有する成人33人(女性17人、平均年齢70歳)を対象としたスタディでは、23人は有酸素運動群に無作為に組み入れられ強度の運動を週4日間行った。コントロール群は同様のスケジュールで監視下のストレッチ運動を行った。強度運動群はコントロール群と比較し認知機能が改善した。体調に対する効果は男女間で差がなかったが認知機能に対する効果は男性よりも女性において顕著に認められた。もう1つのスタディでは、198人(年齢中央値83歳)がMCIを有し、1,126人(年齢中央値80歳)は認知機能が正常であった。中年期以降に中等度の運動をしたと報告した者はMCIを有する確率が低かった。中年期の中等度の運動によりMCIの発症率は39%低下し、高齢での運動では32%低下が、この結果は男女いずれにおいても一致した。
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主観的認知障害のある健常高齢者は軽度認知障害および認知症のリスクが増加する可能性がある
[2010-01-19]
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Healthy older adults with subjective cognitive impairment may be at increased risk for mild cognitive impairment and dementia |
主観的認知障害(SCI)のある健常高齢者は、SCIのない者と比較し、より進行した記憶障害の段階である軽度認知障害(MCI)または認知症に進行する確率が4.5倍高い、とAlzheimer's & Dementia 2010年1月11日号に掲載された。この長期スタディではSCIのある、またはない高齢者213人を平均7年間以上追跡し、20年近くを費やしデータ収集を行った。認知機能がさらに低下しMCIまたは認知症となったのはSCIのある者の54%であり、一方SCIのない者におけるその割合はわずか15%であった。この結果から、早期に主観的な症状のある者は有意な割合でさらなる認知機能の低下を経験し、これらの症状のない者では認知機能の低下を経験することは少ないことが示された。SCI症状のない者に認知機能低下が起こる場合にはSCI症状のある者と比較するとはるかに長い時間がかかった。筆者らによると、これらの結果を基に医師は認知症が明らかになる20年以上前に着目することで将来的にアルツハイマー病をSCIの段階で予防することが可能になるだろう、と述べている。
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生きている患者のPET画像によりアルツハイマー病の進行におけるアミロイドβプラークの役割が示される可能性がある [2010-01-19]
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PET imaging of living patients may demonstrate role of amyloid-beta plaques in development of Alzheimer's Disease |
Behavioural Neurologyに掲載されたスタディの結果、陽電子放射断層撮影(PET)は認知機能の正常な有意な割合の高齢者においてアミロイドβ(Aβ)蛋白プラークを検出することができ、認知障害症状がなくてもこれらの沈着物は脳委縮と関連があることが報告された。最近のアルツハイマー病(AD)研究の結果、Aβの蓄積がAD発症の中心をなしていることが示されている。残念なことにこれらのプラークの存在は通常死亡解剖でのみ確認される。今回のこの100以上の引用文献のレビューで、研究者らはAβトレーサーPittsburgh化合物-Bを用いた実験の結果をまとめている。この化合物はAβ蛋白に結合しAD患者およびADのないボランティアの脳のプラークのマッピングを可能とした。彼らは、患者が軽度認知機能障害を発症するまでに脳内のアミロイド量がプラトーに達しているようであることも明らかにした。認知症が発症する際の神経変性および認知機能低下は、さらなるアミロイド蓄積とは関係なく進行する。筆者らは今回の結果は、アミロイド蓄積がAD経過への早期の重要な役割を果たしており、症状出現の数年前から開始し最終的には認知機能低下および認知症につながる一連のイベントの引き金となっているとのモデルと一致していると解釈している。
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解析の結果抗うつ薬の有益性はうつ症状の重症度により様々であることが示唆された [2010-01-12]
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Analysis suggests that benefit of antidepressant medications varies with severity of depression symptoms |
ある無作為化トライアルの解析の結果、プラセボと比較した抗うつ薬(ADM)の有益性の度合いはうつ症状の重症度により様々であり、軽度または中等度のうつ病患者における有益性は低いが、重症度の高いうつ病患者には実質的な有益性がもたらされるようであるとJAMA 1月6日号に掲載された。研究者らはメタ解析を行い、うつ病と診断された患者の広範にわたる初期症状に対しプラセボとADMを比較して有益性を評価した。彼らは6つの大規模プラセボコントロール無作為化トライアルに組み込まれた成人外来患者718人のデータを集めた。うつ病に対するADM治療の有効性は症状の重症度によりかなり異なっていた:ベースラインの症状が軽度、中等度、および重度の患者でも、実薬効果はないかごくわずかであったが、非常に重症の患者では効果は大であった。筆者らは、実薬対プラセボの臨床的に意味のある差が明らかであると思われるうつ症状の重症度レベルは高く、特に臨床の現場でADMを投与されている患者の大多数がこの重症度レベルより低いスコアであるという事実に驚いている。
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勤務中の心理的ストレスはうつ状態の労働者の生産性低下につながる [2010-01-12]
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On-the-job psychological stress linked to reduced productivity for depressed workers |
職場、またはどこであっても所得を得る場所での心理的ストレスはうつ状態の労働者が仕事をするのを困難にさせる、とAmerican Journal of Health Promotion 1/2月号に掲載された。研究者らは成人労働者14,268人をスクリーニングし、最終的にうつ状態の286人とうつ状態ではない193人を比較した。対象者は2001〜2003年に診療所を受診した者である。その結果、労働者の生産性と仕事のコントロール能力とに関連が認められることが示唆された。例えば、多くの場合うつ状態の労働者には仕事上で倦怠感や動機付けなどの問題がある。彼らはまた仕事のペース配分や日常業務の管理、肉体労働、および通常の標準仕事量をこなすことも困難な場合がある。筆者らは、このスタディ結果は、うつ病は長期欠勤と仕事の遂行の両方に業務上重大な悪影響を及ぼすことへの増加する一連のエビデンスと一致していると述べている。また、うつ病は筋骨格系の問題と不眠以外のどの健康状態よりも勤務と生産性の点で影響が大きいことも指摘している。
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イチョウ葉エキスは全体的な認知機能低下または特異的な認知機能領域に対し効果を及ぼさないことが示された [2010-01-05]
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No evidence found for effect of Ginkgo biloba on global cognitive change or specific cognitive domains |
ハーブ系サプリメントであるイチョウ葉エキスを数年間内服した高齢者はプラセボを内服した者と比較し認知機能低下速度が緩徐にはならなかったとJAMA 12月23/30日号に掲載された。研究者らは、イチョウ葉エキス記憶力評価(Ginkgo Evaluation of Memory:GEM)スタディの結果を解析し、スタディ開始時に認知機能を認めないまたは軽度認知機能低下(MCI)を有する高齢者においてイチョウ葉エキスが認知機能低下を遅延させるかを評価した。GEMスタディでは、イチョウ葉エキスはアルツハイマー型認知症または全ての認知症の発症軽減には効果がないことを既に示した。この無作為化二重盲検プラセボコントロール試験では72〜96歳の地域住民3,069人をイチョウ葉エキス120mgを1日2回(1,545人)またはプラセボ(1,524人)を内服する群に無作為に割り付けた。観察期間中央値は6.1年であった。このスタディにおいて、イチョウ葉エキスは認知機能全体の変化に対し効果を示さず記憶、言語、注意力、視空間能および高次機能などの特異的な領域の認知機能に対する効果も示さなかった。また、年齢、性別、人種、教育およびベースライン時の認知機能の状態(MCI対正常認知機能)による治療効果の差が認められないことも示された。
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アルツハイマー病とがん発症リスク低下との関連が示された [2010-01-05]
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Link found between Alzheimer's disease and reduced risk of developing cancer |
アルツハイマー病を有する人々はがんを発症しにくく、がんを有する人々はアルツハイマー病を発症しにくい可能性があるとのスタディ結果がNeurologyオンライン版2009年12月23日号に掲載された。研究者らは、65歳以上の3,020人を平均5年間追跡し彼らが認知症を発症するかどうか、また平均8年間にがんを発症するかどうかを観察した。スタディ開始時に164人(5.4%)が既にアルツハイマー病を有しており、522人(17.3%)が既にがんを有していた。スタディ期間中に478人が認知症を発症し376人が浸潤性がんを発症した。スタディ開始時にアルツハイマー病を有していた人々の将来的にがんで入院するリスクはスタディ開始時にアルツハイマー病を有さない人々よりも69%低かった。スタディ開始時にがんを有していた白人のアルツハイマー発症リスクは、スタディ開始時にがんを有していなかった人々よりも43%低かったが、この傾向は少数民族の人々においては認められなかった。
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