緩和ケアを受けた肺がん患者はQOLが改善し生存期間が延長した [2010-08-31]
Lung cancer patients receiving palliative care had improved quality of life and extended survival

進行肺がん患者の治療において緩和ケアを早期に取り入れることは、患者の気分やQOLを改善するだけでなく生存期間も延長したとNew England Journal of Medicine 8月19日号に掲載された。転移性非小細胞肺がんと最近診断された患者計151人が、標準治療(74人)または標準的治療と早期の緩和ケア(77人)を受ける群に無作為に割り付けられた。QOLに関する質問に対し、緩和ケア群では12週後に有意な改善を認めたが、標準治療群ではQOLが悪化した。新たに抗うつ薬を処方された率は両群で差がなかったが、うつ症状を訴えたのは緩和ケア群においては標準治療群の半分であった。スタディプロトコールの定義する積極的な終末期医療−死亡前14日以内の化学療法およびホスピスケアへの紹介なしまたは後期の紹介−は標準治療群では半数以上に認められたが緩和ケア群ではわずか3分の1であった。積極的な終末期医療がなくても緩和ケア群の平均生存期間は11.6ヵ月であったが、標準治療群では9ヵ月未満であった。

マウスにおいて漢方薬の併用により化学療法の消化管副作用が軽減した [2010-08-31]
Combination of Chinese herbs reduces gastrointestinal side effects of chemotherapy in mice
1,800年以上使用されている漢方薬との併用により、マウスにおける化学療法の消化器系副作用が軽減し治療効果は増強されたとのスタディ結果がScience Translational Medicine 8月18日号に掲載された。PHY906と呼ばれるこの製剤は4つの薬草から構成され、悪心、嘔吐および下痢の治療に古くから使用されてきたHuang Qin Tangと呼ばれる薬草の処方に基づくものである。研究者らはがんを有するマウスを化学療法で治療したがその結果、腫瘍は縮小したが消化管は多大な損傷を受けた。PHY906で数日間治療された後、損傷を受けたマウスの消化管壁は回復していた。研究者らは、漢方で治療されたマウスの消化管の幹細胞シグナリング分子(Wntsとして知られる)が通常より高値であることを見いだした。さらに、PHY906自体はWntシグナリングを刺激しないが、PHY906と消化管に一般的に認められる細菌の酵素と合わさるとWntシグナルが誘発され、それにより損傷を受けた消化管幹細胞が健常な幹細胞に置き換わることを発見した。健常な消化管細胞を補充することに加え、この漢方薬は炎症細胞の消化管への移動を阻害し炎症を軽減した−これはPHY906の複数の作用により引き起こされる効果のようである。
卵巣組織凍結保存および移植により妊孕能を維持することは若年女性白血病患者にとって安全ではない可能性がある [2010-08-24]
Ovarian tissue cryopreservation and transplantation to preserve fertility in young women may be unsafe for patients with leukemia

卵巣組織凍結保存および移植によりリンパ腫および固形がん患者において13の出産が成功したが、この妊孕能保存法は白血病患者においては安全ではない可能性があるとAmerican Society of Hematology学会誌Bloodオンライン版に掲載された。研究者らは、急性リンパ芽球性白血病(ALL、平均年齢14.5歳)患者12人および慢性骨髄性白血病(CML、平均年齢24.7歳)患者6人におけるこの技術の効果を調査した。初回の顕微鏡検査ではいずれの患者においても卵巣組織内にがん細胞は認めなかったが、リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と呼ばれる技術を用いたところ、ALL患者の70%およびCML患者の33%の卵巣組織内にがん細胞が認められた。さらに解析するために研究者らは卵巣組織検体を18の健康なマウスに移植し6ヵ月間観察した。CML患者から得られた移植片は正常に見え、移植されたマウスにがん細胞は認められないようであったが、ALL患者の卵巣組織を移植されたマウスは4匹にがんが発現した。

新薬によって、BRCA変異を認める進行卵巣がんおよび乳がんを有する女性の腫瘍サイズが縮小する [2010-08-24]
New drug reduces tumor size in women with advanced ovarian or breast cancer with BRCA mutations
Lancetに掲載された新たなスタディの結果、治験薬OlaparibがBRCA変異を認める卵巣がんおよび乳がんを有する女性の腫瘍サイズを縮小させることが示された。ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害薬Olaparibは、がん治療への標的治療を代表するものである。2つのphase IIトライアルの結果、この遺伝子学的標的薬のBRCA変異乳がんおよび卵巣がんに対する有効性は同等であった。例えば、全世界的な卵巣がんスタディに組み込まれた患者57人中33%において腫瘍サイズの有意な縮小が認められ、腫瘍が完全に消失した症例も認められた。乳がんトライアルでもこの薬剤に対して同レベルの有効性が認められた。毒性は比較的軽度で、悪心、倦怠感および貧血などであった。これまでがん治療はがんの起源となった体の部分を元に選択されていた。これら2つのスタディから、有効な治療選択において重要なことは起源となった臓器ではなく根底にあるがんの遺伝子的な弱点であることが示唆された。
経口避妊薬を使用している女性においてエストロゲン受容体陰性乳がんのリスクが高い [2010-08-10]
Risk of estrogen receptor negative breast cancer higher in women who use oral contraceptives
経口避妊薬を使用している女性は使用していない者と比較し乳がんを発症するリスクが高いとのスタディ結果がCancer Epidemiology Biomarkers and Preventionオンライン版に掲載された。研究者らはBlack Women's Health Study(BWHS)に参加したアフリカ系米国人女性53,848人を追跡した。スタディ期間の12年間に受容体の状態が確認されている乳がん789例が発症した。エストロゲン受容体陰性乳がんの発症率は経口避妊薬を一度でも使用したことのある女性において非使用者と比較し65%高かった。リスク上昇は経口避妊薬を過去5年以内に使用し、使用歴が10年以上の女性において最大であり、エストロゲン受容体陰性乳がん患者において陽性乳がん患者よりも大であった。経口避妊薬の製剤は時とともに変化しているため、最近の経口避妊薬の乳がんリスクに対する影響を評価するのが適切である、と筆者らは述べている。

進行の速い前立腺がんの男性は年齢の割に骨密度が高く保たれている [2010-08-10]

Men with aggressive prostate cancer retain denser bones as they age
前立腺がん、特に進行が速く転移する危険なタイプを発症する男性は、前立腺がんを発症していない男性と比較し、骨密度が年齢の割には高く保たれている傾向にあることが新たな研究結果から示唆されたとBritish Journal of Urology International 7月号に掲載された。研究者らは、Baltimore Longitudinal Study of Agingの一部として過去に骨密度計測を受けた男性519人の骨密度データを用いた。彼らは同じデータを用いてその後前立腺がんと診断された男性を観察した。典型的には骨密度は男女とも加齢とともに低下する。しかし、前立腺がんを発症した76人の男性の骨密度は前立腺がんを発症しなかった男性と比較し、年齢の割には有意に高く保たれていた。この結果は、喫煙、ボディマスインデクス、食事性カルシウムやビタミンD摂取などの骨密度に影響を与える可能性のある生活習慣因子で補正しても維持された。さらに調査をしたところ、高リスクタイプの前立腺がんを発症した18人の男性の骨密度が最も高かったことが示された。研究者らは、骨折と転移性がんに関する最終結論を下すには今回のスタディの患者数は少なすぎると注意を呼びかけている。
小児がん既往者の心機能は長期にわたり異常である可能性がある [2010-08-03]
Survivors of childhood cancer may have abnormal long-term cardiac function

小児がん既往者は長期にわたり心機能異常のリスクが高いとの報告が、Archives of Internal Medicine 7月26日号に掲載された。研究者らは5年以上生存した小児がん既往者601人を過去の診断および治療に焦点を当てて調査し、左室機能不全の有病率と決定因子について評価した。長期経過観察期間中(平均15.4年)に小児がん既往者の27%において心機能異常が認められた。心機能異常が最も多く認められたのは併用療法を受けた患者であり、性別、高用量のシクロホスファミドまたはイホスファミドが心機能不全のリスクファクターであるとのエビデンスは認められなかった。小児がん既往者における心機能不全率は憂慮すべき高さであり、これらの患者は将来心不全を発症するリスクが高いと考えられる、と筆者らは述べている。さらに、心毒性の可能性のある治療を受けた小児がん既往者全員に対して継続的にモニターし、さらなる心機能低下を予防するための早期治療により恩恵を被る患者を見極めることを推奨している。

乳がんリスクに関連した遺伝子リスクスコアはエストロゲン受容体陽性乳がんの予測因子でもある [2010-08-03]
Genetic risk score associated with breast cancer risk is also predictive of estrogen receptor-positive disease
乳がんと最も強力な関連を有するある遺伝子亜型を有していることからリスクスコアの高い女性は乳がんリスクが高く、これらのスコアはまたエストロゲン受容体陽性乳がんを高い精度で予測するとのスタディ結果がJAMA 7月28日号に掲載された。このスタディは乳がんを有する女性10,306人(診断時平均年齢58歳)および乳がんを有さない女性10,393人を対象とした。乳がんに対するオッズ比は一塩基多型(SNP)FGFR2-rs2981582およびTNRC9-rs3803662において最も高く、これら2つのSNPはエストロゲン受容体(ER)陰性乳がんよりも陽性乳がんの方でオッズ比が高かった。次に強い相関が認められたのは2q-rs13387042であり、アレルごとのオッズ比は片側性よりも両側性において、また乳管がんよりも小葉がんにおいて有意に高かった。全体的な乳がんリスクと最も強い相関のある7つのSNPの影響を組み合わせると、上位5位の女性の70歳までの乳がん累積リスクは下位5位の女性と比較し2倍であった(それぞれ8.8%と4.4%)。相対的および絶対的な差は、ER陽性乳がん(7.4%対3.4%)においてER陰性乳がん(1.4%対1.0%)よりも遥かに大きかった。


 

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