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DEFINE:CETP阻害剤anacetrapibはLDLおよびHDLコレステロールに多大な効果を有する[2010-11-30]
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DEFINE:
CETP inhibitor anacetrapib has large effect on LDL and HDL cholesterol |
ある治験薬はこのクラスの他の薬剤で認められた血圧上昇がなく高密度リポ蛋白(HDL)コレステロールレベルを2倍以上に上昇させ低密度リポ蛋白(LDL)コレステロールを半分近く低下させたとのレイトブレイキング臨床試験結果が2010年AHA学会で発表され同時にNew
England Journal of Medicine 2010年11月17日号に掲載された。AnacetrapibによるCETP阻害の効果および忍容性の評価(Determining
the EFficacy and Tolerability of CETP INhibition with AnacEtrapib:DEFINE)は20ヵ国153施設において1,623人の患者(平均年齢62.5歳;女性23%;アジア人、黒人または多人種17%、ヒスパニック15%)にコレステロールエステル輸送蛋白(CETP)阻害剤anacetrapib
100mgまたはプラセボを18ヵ月間内服させた無作為化二重盲検試験である。患者は既にスタチンおよび/または他の脂質低下薬で治療されており、LDLコレステロールレベルの目標を達成していた。AnacetrapibはLDLを811mg/dLから49mg/dLへと40%低下させた。またHDLレベルは40mg/dLから101mg/dLに上昇した。参加者の血圧や電解質に変化はなかった。 |
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ASCOT:ASCOTの結果がCRPをスタチン処方の指標とすることに関する論争をあおり立てる [2010-11-30]
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ASCOT: Results from ASCOT fuels debate over using CRP as an indication for prescribing
statins |
高感度C反応性蛋白スクリーニングは伝統的な心血管疾患リスクファクターを有する中年患者のリスク評価をほんのわずかしか改善しない、とのレイトブレイキング臨床試験結果が2010年AHA学会で発表された。研究者らは、プラセボを対照としたアトロバスタチンのコレステロール低下効果を比較したAnglo-Scandinavian
Cardiac Outcomes Trial(ASCOT)に参加した英国およびアイルランドの患者4,853人を解析した。その結果、参加者のベースライン時の低密度リポ蛋白(LDL)コレステロールおよびC反応性蛋白(CRP)は両者ともに心血管イベント予測能を有することが示された。しかし、スタディ開始時点の患者の他のリスクファクターまたはトライアル中のLDLの変化を考慮した後では、CRPは心血管イベントとの相関を失った。筆者らは、JUPITERトライアルなどの近年のスタディを考慮すると、これらの患者においてCRP計測のさらなる価値が認められなかったことは驚きであると述べている。JUPITERにおいて研究者らは、元のコレステロールレベルが正常でCRP上昇以外に他のリスクファクターを有さない人々にコレステロール低下薬スタチンを投与することにより、初回の心血管イベントが37%減少したことを示した。JUPITERと異なりASCOTではCRPが心血管リスク予測を改善するまたはスタチンによるCRP低下効果により心血管イベントが減少するとの仮説を支持しなかった。 |
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心疾患を有する糖尿病患者において血行再建術を含む治療は血流改善に繋がる [2010-11-30]
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Treatment
that includes revascularization results in better blood flow in patients with
diabetes and heart disease |
心疾患を有する糖尿病患者において早期の血行再建術は強力な薬物療法単独と比較し心臓への血流をより改善するとのスタディ結果が2010年AHA学会で発表された。以前、BARI 2D(2型糖尿病におけるバイパス/血管形成術による血行再建術に関する調査[Bypass Angioplasty Revascularization Investigation 2 Diabetes])において、薬物療法に加え血行再建術を施行された患者は血糖、血圧およびコレステロールコントロール(病状が悪化した場合にのみ後に手術を施行)の強化治療のみを受けた患者と比較し、死亡および心筋梗塞(MI)が少なくはなかったことが示された。今回のサブスタディでは、1,505人の対象者にストレス心筋潅流SPECTを施行し血流が十分な心筋領域を同定し計測した。試験開始後1年間に、薬物誘発性虚血が認められず異常なしとの結果であったのが血行再建術群患者の59%であり薬物療法群患者の49%であった。血流減少は血行再建術群患者の心筋組織の3%、薬物療法群患者の心筋の9%に認められた。虚血が多いほど死亡およびMIのリスクが高かった。この結果から、薬物療法および生活習慣介入で管理されている心疾患を有する糖尿病患者のスクリーニングの重要性が示唆された。 |
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Symplicity HTN-2:ラジオ波を用いた腎神経焼灼は難治性高血圧患者の血圧低下に役立つ [2010-11-30]
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Symplicity HTN-2: Blasting kidney nerves with radio waves helps lower blood pressure
for those with stubborn hypertension |
腎近傍の神経を沈静化する非薬物治療は、平均5種類の薬剤を内服しても血圧がコントロールできない患者の血圧を安全かつ有意に低下させたとのレイトブレイキング臨床試験の結果が2010年AHAで発表されLancetに掲載された。Symplicity
HTN-2トライアルは降圧療法を目的とした血管内選択的腎交感神経除神経術に関する国際多施設前向き無作為化コントロールトライアルであり、カテーテル治療と薬物療法の併用群52人と薬物療法のみを受けたコントロール54人を比較した。スタディ開始時に二群の平均血圧はほぼ同等であった(治療群178/98mmHg対コントロール群178/97mmHg)。参加者の平均年齢は58歳であり、35%が女性で97%が白人であった。6ヵ月後の治療群の収縮期血圧は平均33.4mmHg低下し、拡張期血圧は平均12.5mmHg低下した。一方、コントロール群の平均収縮期血圧はやや(0.9mmHg)上昇し、平均拡張期血圧はやや(0.3mmHg)低下した。血圧が140/90mmHg未満に低下したのは腎除神経術で治療された患者では39%であり、それに比べコントロール群では6%であった。 |
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心房細動を有する第一度近親者がいることで、この疾患の発症リスクは上昇する[2010-11-30] |
Having a first-degree relative with atrial fibrillation associated with increased
risk for this disorder |
Framingham Heart Studyの参加者4,000人余りの心房細動(AF)遺伝性に関する調査の結果、第一度近親者におけるAF発症は確立されたAFリスクファクターおよびAF関連遺伝子亜型で補正後のAFリスクであることが示された、と2010年AHA学会で発表されJAMA
11月24日号に掲載される。当初の参加者およびその子供は30歳以上であり、スタディ開始時にAFを有さず、親または兄弟の少なくとも一人がスタディに参加した。この解析の対象者4,421人(平均年齢54歳;女性54%)中、440人がAFを発症した。家族性AFは1,185人(26.8%)に発現し、早期家族性AF(発症年齢が65歳以下)は351人(7.9%)に発現した。ベースラインの調査時にAFの家族が存在する2,393人のうち、AFを有するのが父親であったのが1,163人、母親が1,068人、兄弟が404人であった。AF発症頻度はAF家族歴を有する者において家族歴のない者より高かった(それぞれ絶対イベント率が5.8%と3.1%であり、約40%リスク上昇)。 |
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TAMARIS:実験的遺伝子治療は末梢血管疾患患者の下肢切断または死亡を防止しなかった [2010-11-30]
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TAMARIS:
Experimental gene therapy did not prevent amputation or death in patients with
peripheral vascular disease |
遺伝子治療は重篤な末梢血管疾患(PAD)により足潰瘍を来した患者の下肢切断または死亡を防止しなかったとのレイトブレイキング臨床試験の結果が2010年AHA学会で発表された。過去のphase
2トライアルの勇気づけられる結果に反して、NV1FGF遺伝子治療の重篤下肢虚血における下肢切断回避率に関するトライアル(NV1FGF Gene Therapy
Trial on Amputation-Free Survival in Critical Limb Ischemia )-phase 3無作為化二重盲検プラセボコントロールトライアルにおいて、NV1FGFとして知られる細胞増殖因子による実験的遺伝子治療を受けた患者はプラセボを投与された患者と比較して結果が良好ではなかった。この12ヵ月間のスタディにおいて、研究者らは重症PAD患者259人(男性70%、平均年齢70歳)をプラセボ治療群に無作為に割り付け、一方266人の患者は遺伝子治療細胞増殖因子を投与された。プラセボを投与された患者のうちトライアル中に下肢切断に至ったのは21%であったのに対し、遺伝子治療を施行された患者におけるその割合は26%であった。プラセボ群の15%が死亡し、一方遺伝子治療群では18%が死亡した。これらの結果に有意差はなかった。 |
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EMPHASIS-HF:エプレレノンは軽度症状を有する収縮期心不全患者の生存率を有意に改善する [2010-11-24]
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EMPHASIS-HF:
Eplerenone significantly improves survival in systolic heart failure patients
with mild symptoms |
収縮期心不全及び軽度症状を有する患者にアルドステロン拮抗薬エプレレノンを投与したところ、プラセボを投与された患者と比較し死亡および入院のリスクが37%低下したとのレイトブレイキング臨床試験の結果が2010年AHA学会で発表され、New
England Journal of Medicineオンライン版 に掲載された。軽症心不全患者にエプレレノンを投与した際の入院および生存率に関するスタディ(Eplerenone
in Mild Patients Hospitalization And SurvIval Study in Heart Failure:EMPHASIS-HF)において、軽症心不全患者2,737人(平均年齢69歳、男性78%、白人82%)を、標準的な心不全治療法に加えエプレレノン(25〜50mg)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。対象となった患者のほとんどが心不全を数年間(平均5年間近く)患っていた。平均追跡期間は21ヵ月であった。3分の2の患者が動脈硬化歴を有していた。エプレレノンを投与された患者のうち死亡または入院したのは249人であったのに対しプラセボ群では356人であった―統計学的に有意な差であった。エプレレノンはまた、プラセボと比較し、総死亡率と入院を3分の1以上減少させた。心不全死および入院減少におけるエプレレノンの有益性が圧倒的であったため、被検者の組み入れは予定された2010年5月よりも前に終了された。 |
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高用量オメガ3は心房細動再発を軽減しないようである [2010-11-24]
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High-dose omega-3 does not appear to reduce recurrence of atrial fibrillation
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魚油など由来のオメガ3脂肪酸のサプリメントにより心房細動(AF)治療が改善する可能性があるとのいくつかのデータが示されていたが、600人以上の患者を対象とした無作為化トライアルにおいて高用量の処方オメガ3は6ヵ月間のAF再発を減少させなかったことが示されたとのレイトブレイキング臨床試験の結果が2010年AHA学会で発表され、JAMA 12月1日号に掲載される。このスタディでは、実質的な器質的心疾患を有さない確認された有症状の発作性または持続性AF外来患者(それぞれ542人および121人)計663人を対象とした。対象者は処方薬オメガ-3(1日8mg)またはプラセボを最初の7日間、次いで処方薬オメガ-3(1日4mg)またはプラセボを第24週まで投与された。その後6ヵ月間に発作性心房細動患者群に認められた有症状のAFまたは心房粗動イベントはプラセボ群で129件(48%)であり実薬群で135件(52%)であった。持続性AF患者群では有症状のAFまたは心房粗動がプラセボ群で18件(33%)、実薬群で32件(50%)認められ、発作性、持続性群を合計するとプラセボ群で147イベント(46%)であり実薬群で167件(52%)であった。 |
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ADVANCE:新たな定常流ポンプは心臓移植を待機している心不全患者に対し承認されているデバイスと同等の効果を有する [2010-11-24] |
ADVANCE: New continuous-flow pump works as well as approved devices in heart failure
patients waiting for transplant |
第三世代の定常流ポンプHeartWare®左心室補助装置(HVAD)は承認されているデバイスと同等に有効であるとのレイトブレイキング臨床試験の結果が2010年AHA学会で発表された。研究者らは、重度心不全治療としてのHVADの非無作為化評価(non-randomized
Evaluation of the HVAD for the Treatment of Advanced Heart Failure:ADVANCE)スタディに140人の患者を組み入れた。ほとんどの患者(82%)が心不全を1年以上患っていた。コントロール群は市販されている左心室補助ポンプを同じ期間に使用した比較患者499人であった。HVAD患者のうち92%がこのポンプを装着した状態で180日間生存し、心臓移植を受けたかまたはデバイスから離脱できるまで回復した―全てが治療に成功したと考えられた。同様に、承認済みのポンプを装着した心臓移植を待機しているコントロール群患者の90%の治療が成功した。心臓移植からほぼ1年(360日)後に、HVAD群患者の91%およびコントロール群患者の86%が生存しておりこの差は統計学的に有意ではなかった。ポンプ埋め込み3ヵ月後の心機能分類およびQOLは、承認されたポンプ同様改善した。この新たなデバイスの1つの長所は心嚢内に埋め込めるほどサイズが小さいことである、と研究者らは述べている。 |
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RAFT:軽度−中等度の症状を有する心不全患者において心臓再同期療法を追加することにより死亡および心不全による入院が減少する [2010-11-24]
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RAFT: Adding cardiac-resynchronization therapy reduces deaths, heart failure hospitalizations
in patients with mild-to-moderate symptoms |
薬物療法および埋め込み型除細動器で治療されている軽度−中等度の症状を有する心不全患者に心臓再同期療法(ICD)を追加することにより死亡および心不全による入院が有意に減少する、とのレイトブレイキング臨床試験の結果が2010年AHA学会で発表され、New
England Journal of Medicineオンライン版に掲載された。外来心不全患者に対する再同期/除細動 トライアル(Resynchronization/defibrillation
for Ambulatory heart-Failure Trial:RAFT)において研究者らは、軽度から中等度の心不全および左室機能低下を有する患者1,798人(平均年齢66歳、男性82%)をICDまたはCRT機能も備えたICDを受ける群に無作為に割り付けた。両群ともに薬物療法も受けた。平均追跡期間は40ヵ月であり、この種のスタディでは最長のスタディの1つであった。統計学的に有意な結果として、ICD/CRT併用群はCRTを受けない群と比較し死亡または心不全による入院率が25%低いことが示された。ICD/CRT併用群患者はまたCRTを受けない患者と比較し総死亡率も25%低かった。これらの結果から、ICD/CRTは軽度から中等度の心不全患者において価値のある治療であることが示されたと研究者らは述べている。 |
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ASCEND-HF:重症心不全患者を対象とした大規模スタディの結果、nesiritideは安全であるが症状または死亡率に対する有意な有益性はないことが示された [2010-11-24]
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ASCEND-HF:
Large study of patients with severe heart failure confirms nesiritide safe, but
shows no significant benefit on symptoms or mortality |
大規模臨床試験において、急性非代償性心不全患者に対し薬剤nesiritideは安全であることが証明されたが、呼吸困難に対しては有効性がわずかであり、再入院または死亡率に対する有意な効果はないことが示されたとのレイトブレイキング臨床試験の結果が2010年AHA学会で発表された。急性非代償性心不全におけるnesiritideの臨床上の有効性に関する試験(Acute
Study of Clinical Effectiveness of Nesiritide in Decompensated Heart Failure Trial:ASCEND-HF)において研究者らは急性重症心不全患者7,141人(平均年齢67歳、女性34%)を静脈内nesiritide持続投与またはプラセボ投与のいずれかを標準的な治療法に加えて投与する群に無作為に割り付けた。半数以上(60%)が冠動脈疾患を有していた。治療6時間後にnesiritideはプラセボと比較し息切れをやや改善させ、有意な改善はnesiritide群患者の947人(15.0%)に、プラセボ群では874人(13.4%)に認められた。同様に、治療24時間後に呼吸機能が著明に改善した患者はプラセボよりもnesiritide群において多かった−nesiritide群患者のうち1,063人(30.4%)であったのに対しプラセボ群患者では966人(27.5%)であった。しかし、呼吸困難に関する事前に特定していたエンドポイントに関しての有意差はなかった。この薬剤は30日間の再入院または死亡(nesiritide群9.4%対プラセボ10.1%)に関しても有意差は示さなかった。 |
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バイオマーカーである心臓トロポニンTは心不全および心血管死のリスク予測に役立つ [2010-11-24]
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Cardiac troponin T biomarker may help predict risk of heart failure, and cardiovascular
death |
血液バイオマーカーの1つである心臓トロポニンT(cTnT)は高齢者において心不全(HF)発症または心血管死と関連があると2010年AHA学会で発表され、JAMA 12月8日号に掲載される。研究者らは心不全の既往のない65歳以上の4,221人を対象にスタディ開始時、および2〜3年後(2,918人)にcTnTを計測した。CTnT濃度は2,794人(66.2%)の患者において検出限度以上であった。追跡期間中央値11.8年の間に1,279人が新規のHFを発症し、1,103件の心血管死が発現したが、いずれのエンドポイントもcTnT高濃度と関連があった。HFおよび心血管死のリスクはcTnTのベースライン時点でのレベルに関係なく、フォローアップ時点での値が検出可能な者において検出不可の者よりも高かった。ベースライン時点でのcTnTが検出可能であった者はHFおよびリスクファクターで補正後の心血管死のリスクが50%高かった。一方、cTnTが50%以上低いとリスクファクターで補正後のHFリスクおよび心血管死リスクが低かった。 |
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職務ストレスが高い女性は心血管疾患リスクが40%高い [2010-11-16] |
Women
with high job strain have 40 percent increased risk of cardiovascular disease |
職務ストレスが高いと訴える女性は、職務ストレスの少ない女性と比較し、心筋梗塞(MI)や血行再建術を受けるなどの心血管疾患リスクが40%高い、と2010年American
Heart Association学会で発表された。さらに、仕事の不安定さ―仕事を失う怖れ―は高血圧、高脂血症や過剰体重などの心血管疾患リスクファクターと関連があったが、MI、脳卒中、侵襲的な循環器系の処置または心血管死とは直接的な関連はなかった。ランドマーク研究であるWomen's
Health Studyに参加した健常女性17,415人の職務ストレスを解析した。この女性たちは平均年齢57歳で主に白人の医療従事者であり、心疾患リスクファクター、職務ストレスおよび仕事の不安定さに関する情報を提供した。彼女らは10年間以上、心血管疾患の発症に関して追跡調査された。職務ストレスが高いと報告した女性はMI、虚血性脳卒中、冠動脈バイパス術またはカテーテルによる血管形成術および死亡リスクが40%高かった。MIリスクは約88%高く、一方バイパス術または侵襲的な処置を受けるリスクは43%高かった。過去に男性に対し行った職務ストレスに関する調査でも同様の結果が得られている。 |
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バイパス術を受けた男性患者において少量から中等量の飲酒と心血管系合併症が少ないことには関連がある
[2010-11-16]
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Light to moderate drinking linked to fewer cardiovascular complications in male
bypass patients |
冠動脈バイパス術を受けた男性患者のうち少量から中等量(1日2〜3杯)の飲酒をする者は非飲酒者と比較し、その後の心臓血管手術、心筋梗塞(MI)、脳卒中および死亡が25%低かった、と2010年American
Heart Association学会で発表された。しかし、中等量から大量(1日6杯以上)の飲酒をする左室機能低下を伴うバイパス患者は非飲酒者と比較し、その後の心血管死の確率が倍であった。研究者らは冠動脈バイパス術を施行された患者1,021人に標準的なアンケートを行い、その後3.5年間のバイパス術施行、MI、脳卒中および心血管死に関して調査した。毎日約2杯飲酒する患者は禁酒家と比較し心血管イベントが少なかった。一方、中等量から大量(1日約4杯)の飲酒をする左室機能に問題のある男女は、術後に追加処置を必要としたりMIまたは脳卒中を発現する確率が高かった。少量から中等量のアルコール消費は1日5〜30gのアルコールで定義され、中等量から大量は1日60g以上で定義された。 |
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眼瞼へのコレステロール沈着は心筋梗塞、冠動脈疾患および死亡リスクが高いことを予測する [2010-11-16]
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Cholesterol
deposits on eyelids predict higher risk of myocardial infarction, coronary artery
disease and death |
キサントーマと呼ばれる眼瞼へのコレステロール沈着は心筋梗塞(MI)、虚血性心疾患および早期死亡を予測するとのポスタープレゼンテーションがデンマークの研究者により2010年American
Heart Association学会で発表された。研究者らは12,939人のベースライン時におけるキサントーマの有無を調査した。これらの人々のうち1,903人がMIを発症、3,761人が虚血性心疾患を発症し、8,663人が最長33年の追跡期間中に死亡した。年代別の虚血性心疾患およびMIの累積発生率はキサントーマを有する者において高く、生存率は低かった。キサントーマはMIリスクの51%上昇および虚血性心疾患リスクの40%上昇を予測した。キサントーマを有する者は、血中コレステロールレベルなどのよく知られた心血管リスクファクターで補正した後の死亡リスクも17%高かった。このコレステロール沈着を有する人々の半分で血中コレステロールレベルが正常であることから、研究者らはこの病変が潜在的な動脈性疾患の独立したマーカーである可能性があると述べている。 |
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コンピュータモデル解析により10代での食塩摂取量を減少させることによる長期の心血管系の有益性が推定された [2010-11-16]
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Computer modeling analysis projects long-term cardiovascular benefits of reducing
dietary salt intake as teenagers |
10代で日々の食塩摂取量を減少させることにより成人期の高血圧、心疾患および脳卒中を軽減する可能性がある、と2010年American
Heart Association学会で発表された。最新のコンピュータモデル解析を行うことにより、米国の研究者らは青少年期の加工品からの食事性食塩摂取量を3g減少させることによる健康への影響を国内レベルで予想した。研究者らはモデルから、10代で日々の食塩摂食量を3g減らすことにより10代の高血圧患者数が44%〜63%(380,000〜550,000人)減少すると予想した。また、35〜50歳時の高血圧患者数が30〜43%(270〜390万人)減少すると推定した。10代から50歳になった時の健康上の有益性で予測できたのは、冠動脈疾患の7〜12%の減少、心筋梗塞の8〜14%の減少、脳卒中の5〜8%の減少および総死亡の5〜9%減少などであった。摂取食塩の約80%が加工食品または調理済み食品由来であった。 |
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スタディの結果、心不全や心房細動の治療選択の際に不安症状に対する感受性が重要であることが示唆された [2010-11-09] |
Study suggests sensitivity to symptoms of anxiety is important when choosing treatment
for heart failure and atrial fibrillation |
心不全や心房細動(AF)患者の治療法を選択する際に不安感受性レベルが重要である可能性があるとの研究結果が2010年Canadian
Cardiovascular Congressで発表された。これらの結果は、リズムコントロールとレートコントロールによる治療戦略を比較した無作為化トライアルである、心房細動とうっ血性心不全(Atrial
Fibrillation and Congestive Heart Failure Trial:AF-CHF)を基礎としたものである。無作為化の前に、AF-CHFスタディの参加者933人は不安感受性に関する書面での評価に回答した。その後、2つの治療群(抗不整脈薬および除細動による治療を受ける「リズム群」および抗不整脈薬治療を受ける「レート群」)のうちの1つに無作為に割り付けられた。参加者は平均37ヵ月間追跡された。その結果、AF-CHFトライアル全体で、大多数のレートコントロール患者とリズムコントロール患者とで予後は同様に良好であった。一方、不安感受性の高い患者では、より複雑なリズムコントロール治療を受けている方が予後が有意に良好であった。 |
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スタディの結果、安定した心疾患患者において安静時心拍数と死亡リスクとに関連が認められた [2010-11-09]
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Study finds a direct link between heart rate at rest and risk of death in people
with stable heart disease |
安定した心血管疾患患者において安静時心拍数は心血管疾患による死亡のみならず他の全ての原因による死亡リスクの予測因子となる、と2010年Canadian
Cardiovascular Congressで発表された。この結果は、55歳以上の心疾患を確定診断されたが 安定している患者または臓器障害を有する糖尿病患者における心筋梗塞、脳卒中、および心不全イベントを薬物療法により減少させることが可能か否かを観察するために施行された2つのトライアル−ONTARGETおよびTRANSCEND−で蓄積されたデータから得られた。Population
Health Research Instituteに指揮されたこのトライアルは世界中の患者31,531人を対象とし、4年以上追跡された。心拍数が最も低い心疾患患者(58/分以下)と比較し、心拍数が78を超える患者は主要な血管イベントを発現するリスクは39%高く、心血管死のリスクは77%高く、総死亡リスクは65%高かった。彼らはまた心拍数が最も低い患者と比較し、心不全で入院する確率が2倍であった。 |
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遺伝子多型により心臓の施術に対する一般的な抗血小板薬使用に関する予後が悪化する [2010-11-02] |
Genetic variations associated with worse outcomes with use of common antiplatelet
drug for cardiac procedures |
最近公表されたスタディのデータから、ある遺伝子の一般的な遺伝子学的多型を有し冠動脈ステント植込みなどの施術を施行される患者に対する抗血小板薬クロピドグレルは、主要な心血管イベント、特にステント血栓症と関連があるとJAMA
10月27日号に掲載された。研究者らは9つのスタディの9,685人の患者(うち91.3%はPCIを施行され54.5%は急性冠症候群を有していた)データのメタ解析を行った。CYP2C19機能低下アレルを有さない患者は6,923人(71.5%)で、2,544人(26.3%)は1つ有し、218人(2.2%)は2つ有していた。CYP2C19機能低下アレルを有さない患者と比較し、1個または2個有する患者は心血管死、心筋梗塞、または脳卒中のリスクが有意に高かった。CYP2C19機能低下アレルを1または2個有する患者はステント血栓症のリスクもまた高かった。CYP2C19遺伝子における一般的な変異により3人に1人がPCIに対するクロピドグレルの標準用量では虚血に対する理想的な保護を受けていないことになる、と筆者らは結論付けている。 |
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冠動脈バイパス術を施行される患者に対する術前スタチン療法と1年間のアウトカムに明らかな相関関係が認められた [2010-11-02]
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Positive correlation between preoperative statin therapy and one-year outcome
in patients undergoing coronary artery bypass grafting |
American Society of Anesthesiologists年次学会で発表されたスタディの結果、冠動脈バイパス術(CABG)前に術前スタチン療法を施行された患者の生存率が優れていることが示された。CABG術後の患者は特に術後グラフト血栓のリスクが高く、スタチンは虚血性心疾患および狭窄を有する患者に役立つことから筆者らは、術前スタチン療法がこれらの患者の回復および生存率に好ましい影響を及ぼすか否かを証明することは重要であると考えた。この前向き観察研究において、ある大学病院で選択的バイパス術を施行された患者1,034人を観察した。計703人の患者が術前スタチン療法を受け、残りの331人は術前スタチン療法を受けなかった。術前からスタチンを内服していた患者の1年死亡率は3.98%であったのに対し、術前スタチン療法を受けなかった患者のそれは有意に高く10.9%であった。これらの結果から冠動脈バイパス術患者の1年後の予後と術前スタチン療法のプラスの関連性が示された。 |
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