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こびりつかない調理器具や防水生地を生産する過程で使用される化学物質が小児および10代の若者のコレステロールを上昇させる可能性がある [2010-09-28]
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Chemicals used to produce non-stick cookware and waterproof fabrics may raise cholesterol levels in children and teens |
こびりつかない調理器具や防水生地を生産する過程で使用される化学物質の血中濃度の高い小児や10代の若者は、総コレステロールおよびLDLコレステロールレベルが高い傾向がある、とArchives of Pediatrics & Adolescent Medicine 9月号に掲載された。この論文の背景情報によると、人々は飲料水、塵、食品の包装、母乳、臍帯血、電子レンジ用ポップコーン、大気および職業上の曝露を介して人工のパーフルオロアルキル酸―パーフルオロオクタン酸(PFOA)およびパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)―に曝露されている。パーフルオロアルキル酸は調理器具をこびりつかず耐熱にしたり生地や室内装飾品に通気性や防水性を与えたりするフルオロポリマーの製造過程で使用される。C8健康プロジェクトの対象となった12,476人の小児および青少年(平均年齢11歳)が登録後に血液検体を提出した。12〜19歳の参加者においてPFOA濃度は国内全体の調査の値よりも高かった(29.3ng/mL対3.9ng/mL)が、PFOS濃度は同等であった(19.1ng/mL対19.3ng/mL)。関連のある変動因子で補正した結果、PFOAレベルが高いと総コレステロールおよびLDLコレステロールが高く、PFOSレベルが高いと総コレステロール、LDLおよびHDLコレステロールが高かった。いずれの化合物も中性脂肪レベルとは関連がなかった。 |
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ART:片側および両側内胸動脈グラフトの主要な臨床上のイベントに差はない [2010-09-28] |
ART: Trial of single and bilateral mammary artery grafts shows no difference in major clinical events |
動脈血行再建術トライアル(Arterial Revascularization Trial:ART)の1年間の安全性データから、片側内胸動脈(SIMA)および両側内胸動脈(BIMA)はバイパス術を必要とする患者のほとんどにおいて施行可能であることが示された。これまでに行われた心臓手術トライアルでは最大規模のトライアルの1つであるARTは、BIMAグラフトとSIMAグラフトを比較した無作為化トライアルであり、一次アウトカムは10年生存率であった。二次エンドポイントには臨床イベント、QOLおよび費用対効果が含まれた。7ヵ国28施設の患者3,100人余りがSIMAまたはBIMAを受ける群に無作為に割り付けられた(両群ともに静脈グラフトで補足された)。その結果、両群ともに30日間の総死亡率は1.2%であり、1年間のそれは2.4%であった。従ってこの結果から、両側の内胸動脈を使用することはほとんどの患者において可能であり早期死亡率、脳卒中、心筋梗塞または入院期間を増加させないことが示された。しかし、両側内胸動脈バイパス術により胸骨創部再建手術のリスクは軽度(1.3%)増加した。このスタディの結果は2010年European Society of Cardiology学会のホットラインセッションで発表された。 |
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ATOLL:プライマリPCIにおいてエノキサパリン静脈内投与の虚血に関する予後は未分画ヘパリン投与よりも良好である [2010-09-21] |
ATOLL: Intravenous enoxaparin associated with better ischemic outcomes in primary PCI than unfractionated heparin |
ST上昇MIに対するプライマリPCIにおいて2種類の抗凝固療法を比較したATOLLトライアルの結果、低分子ヘパリンであるエノキサパリンはこのような症例において従来使用されている未分画ヘパリンよりも予後を改善する可能性があると2010年European Society of Cardiology学会で発表された。Phase III ATOLLトライアルは910人の患者(75歳以上18%、5%がショックまたは心停止)をエノキサパリン静脈内投与(抗血小板療法としてのGP IIb/IIIa受容体阻害薬併用の有無にかかわらず0.5mg/kg、および凝固能モニターなし)または未分画へパリン静脈内投与(GP IIb/IIIa受容体阻害薬併用時50〜70IU/kg、GP IIb/IIIa受容体阻害薬非併用時70〜100IU、抗凝固モニターにより用量調節)を冠動脈造影前に施行した。一次エンドポイント(30日間の死亡、MI合併症、PCI不成功またはCABG以外による重大な出血の合計)はエノキサパリンにより34%から28%に減少した(RR 17%)が、統計学的な有意差には到達しなかった(P=0.07)。主要な二次エンドポイント(死亡、MI/ACS再発または緊急血行再建術から成る虚血エンドポイントの合計)は11.3%から6.7%と、41%減少した(P=0.02)。死亡、再梗塞または緊急血行再建術の古典的な3つのエンドポイントは8.5%から5.1%に減少した(P=0.04)。エノキサパリンにより死亡またはMI合併症が12.4%から7.8%に減少した(RR 37%、P=0.02)。総死亡は6.3%から3.8%に減少し、死亡または蘇生された心停止は7%から4%に減少した(P=0.05)。 |
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REACH:スタディの結果、アテローム血栓症患者の様々な心血管イベントのリスクファクターが同定された [2010-09-21]
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REACH: Study identifies a variety of risk factors for cardiovascular events in patients with atherothrombosis |
冠動脈疾患、末梢動脈疾患、脳血管疾患、または複数の既知のリスクファクターを有する外来患者45,000人以上のREACH(Reduction of Atherothrombosis for Continued Health:健康を維持するためのアテローム血栓症の軽減)レジストリのフォローアップデータから、将来の虚血性疾患のリスクが容易に見極められることが示された。この報告は2010年European Society of Cardiology学会で発表され、JAMA 9月22日号に掲載された。高血圧および高コレステロール血症は、それぞれ81.3%および70.4%の患者が有していた。Polyvascular diseaseは15.9%の患者において認められ、48.4%が虚血性イベントの既往を有していた(28.1%が過去1年以内)。経過観察期間中に5,481人に心血管イベントが発現した。アテローム血栓症を有する患者のうちその後に虚血性イベントを発現したのは、ベースライン時点で虚血イベントの既往を有していた患者21.890人において最も高率であった(18.3%)。安定した冠動脈、脳血管、または末梢動脈疾患を有する患者のリスクは低く(12.2%)、リスクファクターは有するが確立されたアテローム血栓症を有さない患者のリスクは9.1%であった(それぞれの比較においていずれもP<0.001)。地理的にみて、東欧および中東の人々はリスクが最も高く、日本人はリスクが平均より低かった。 |
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ANTIPAF:発作性心房細動を有する患者においてアンジオテンシンII受容体拮抗薬は単独では心房細動発作件数を減少させない [2010-09-21] |
ANTIPAF: Angiotensin II antagonists on their own do not reduce the number of atrial fibrillation episodes in patients with paroxysmal AF |
アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は発作性心房細動抑制目的では使用されるべきではないとの前向き研究の結果が2010年European Society of Cardiology学会で発表された。ANTIPAF(ANgiotensin II anTagonists In Paroxysmal Atrial Fibrillation:発作性心房細動におけるアンジオテンシンII受容体拮抗薬)トライアルは、β遮断薬療法の存在により分類し、プラセボまたはオルメサルタン(40mg/day)投与群に無作為に割り付けた。ARB治療の併用薬として、ACE阻害薬、および抗不整脈薬は禁止された。患者は毎日電話伝送心電図記録を用いて追跡された。確認された発作性心房細動のエピソードを有する患者425人(18歳以上)がドイツの37施設から組み入れられた。患者当り平均207の電話送信心電図が記録され、経過観察期間中1日当り平均1.12送信心電図が記録された。スタディの結果、両治療群間でAFによる負担(一次エンドポイント)の有意差はなかった。QOL、初回のAF再発までの時間、持続性AFまでの時間、および入院数などの二次予後指標もまた、両群間で同等であった。しかし、不整脈治療薬(アミオダロン)処方までの時間はプラセボ群よりもオルメサルタン群において長かった。 |
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中等度のコーヒー摂取は高齢高血圧患者の大動脈伸展性を改善する [2010-09-21] |
Moderate coffee consumption improves aortic distensibility in hypertensive elderly individuals |
高齢高血圧患者が中等度のコーヒーを摂取することにより大動脈伸展性が改善する可能性があるとのスタディ結果が2010年European Society of Cardiology学会で発表された。研究者らは65〜100歳の男性343人および女性330人からなる標的患者群(全員がエーゲ海のイカリア島に長期居住し、この島の人々の平均余命が長いためこの島が選択された)に対し、健康と栄養に関する調査を行った。スタディは235人の高血圧サブグループに焦点が当てられた。解析の結果、中等度のコーヒー摂取(1日1〜2杯)により、これよりコーヒー摂取が少ない高齢高血圧患者と比較し大動脈伸展性値が高くなることが示された。年齢、性別、身体活動度、クレアチニンレベル、BMIおよび糖尿病などの様々な因子で補正後、中等度のコーヒー摂取と心血管疾患減少、糖尿病および脂質異常症の有病率低下、ボディマスインデックス低値および良好な腎機能、クレアチニンクリアランスレベルが高いことと関連があるとのエビデンスも認められた。しかし、コーヒー摂取量を1日3〜5杯に増量することにより大動脈伸展性がより改善することは示されなかった。 |
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EUROPA:遺伝子プロファイリングモデルによりACE阻害薬の治療による有益性が予測され推奨される治療の効果が最大限になる [2010-09-21] |
EUROPA: Genetic profiling model predicts treatment benefits of ACE inhibitors and optimizes recommended therapy |
2010年European Society of Cardiology学会で発表された研究により、ACE阻害薬治療の有益性を予測し推奨された治療の効果を最大限にするある遺伝子プロファイリングが同定された。約9.000人の安定したCAD患者が選択され、EUROPAとして知られる無作為化プラセボコントロールトライアルに参加した。研究者らは、ACE阻害薬の薬力学的パスウェイ内に存在することが確認されている12の候補遺伝子を52のハプロタイプタギング一塩基多型(SNPs)を用いて解析した。主要アウトカムは4年間の追跡期間中の心血管死亡、非致死性心筋梗塞、蘇生された心停止の減少であった。交絡因子で多変量調節し複数の検査で修正した結果、アンジオテンシンIIタイプI受容体遺伝子およびブラジキニンタイプI受容体遺伝子に位置する3つのSNPsがペリンドプリル治療の有益性と有意に関連があった。薬理遺伝学的スコアとこれら3つのSNPsを組み合わせると、スコア上昇に伴いプラセボ群において段階的なリスクの低下が認められペリンドプリル群では段階的な治療有益性の低下が認められた。73.5%のサブグループの患者においては治療の有益性が著明に認められたが、残りの26.5%においては明らかな有益性は認められなかった。 |
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FUTURA/OASIS 8:フォンダパリヌクスで治療されているACS患者に低用量の未分画ヘパリンを用いても出血または血管合併症は減少しない [2010-09-21] |
FUTURA/OASIS 8: Low dose of unfractionated heparin in ACS patients treated with fondaparinux does not reduce bleeding or vascular complications |
2010年European Society of Cardiology学会で発表されたFUTURA/OASIS 8の結果から、抗血栓薬フォンダパリヌクスで治療されているPCI患者に低用量のヘパリンを使用しても出血または血管合併症の発現率は減少しないことが示された。FUTURA/OASIS 8は不安定狭心症または心筋梗塞(MI)で入院し72時間以内にPCIを施行された患者2,026人を対象としたphase IIIの多施設無作為化トライアルである。患者は病院到着後できるだけ早く1日2.5mgのファオンダパリヌクスを投与され、PCIが必要な患者は低用量の固定用量のヘパリン(50U/kg)または標準用量のヘパリン(85U/kgまたはGP IIb/IIIa受容体阻害薬と併用する場合は60U/kg)を投与される群に無作為に割り付けられた。PCIに伴う重大な出血は低用量ヘパリン群で1.4%であり、標準用量群では1.2%であった。一次エンドポイント(PCIに伴う重大な出血または重大な血管合併症の合計)は両群間で差がなかった。しかし、低用量ヘパリン療法で重大な出血のリスクは低下しなかったものの、重大でない出血率は60%減少した。低用量ヘパリンにより死亡、MIまたは標的血管再血行再建術(二次エンドポイント)のリスクは高くなる傾向にあった。 |
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EINSTEIN-DVT:経口rivaroxabanは有症状の深部静脈血栓症に対する通常の治療と比較し有効性は同等であるが管理しやすい [2010-09-14] |
EINSTEIN-DVT: Oral rivaroxaban similar efficacy to usual care for treatment of symptomatic deep vein thrombosis but easier to manage |
有症状の急性深部静脈血栓(DVT)に対する治療として経口Xa阻害薬である経口抗凝固薬rivaroxabanの標準的な治療(エノキサパリン後にワルファリンまたはacenocoumarol投与)に対する非劣性が認められたとのphase III EINSTEIN-DVTスタディの結果が、2010年European Society of Cardiology学会のホットラインセッションで発表された。この多国籍無作為化オープンラベル非劣性EINSTEIN-DVTスタディでは、肺塞栓の症状はないが有症状の急性DVT患者3,400人以上を組み入れた。患者は経口rivaroxaban(15mg 1日2回を3週間の後20mg 1日1回)または体重で補正したエノキサパリン皮下投与の後にワルファリンまたはacenocoumarol(治療域を維持するため用量調節)をベースライン時の主治医の評価に基づき3、6、または12ヵ月間投与された。症候性の静脈血栓塞栓再発(DVT再発、非致死性または致死性肺塞栓の合計)はrivaroxaban投与群で2.1%に発現したのに対し、標準療法を受けた患者群では3.0%であった(P<0.0001で非劣性)。EINSTEIN-DVTスタディにより、主要な安全性に関する予後である重大なまたは臨床的に明らかな重大ではない出血の発現率がrivaroxabanにおいて標準治療と比較し同等であることも示された(それぞれ8.1%対8.1%)。 |
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LESSON I:新世代のエベロリムス溶出ステントのこれまでのゴールドスタンダードを超える治療上の有益性に関するエビデンス
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LESSON I: Evidence of the therapeutic benefit of the newer generation everolimus-eluting stent over the previous gold standard |
LESSON I(冠動脈血行再建術におけるエベロリムス溶出ステントとシロリムス溶出ステントの長期比較)トライアルの結果が2010年European Society of Cardiology学会のホットラインセッションで発表され、これまでのゴールドスタンダードである旧世代のシロリムス溶出ステントを超える新世代のエベロリムス溶出ステントの治療上の有益性に関するエビデンスが示された。スタディではエベロリムス溶出ステントを用いて治療された患者1,601人とシロリムス溶出ステントで治療された患者1,532人を、傾向スコアマッチング解析で比較した。その結果、施術後最長3年間の死亡数、心筋梗塞(MI)および再血行再建術施行の数はエベロリムス溶出ステントで治療された患者の方が少ない傾向にあり(エベロリムス溶出ステント群14.9%、シロリムス溶出ステント群18.0%;相対リスク低下率は17%、P=0.056であった)。エベロリムス溶出ステントに認められたこの差はMI減少において最も著明に認められ(エベロリムス溶出ステント群3.3%、シロリムス溶出ステント群5.0%)、相対リスク低下率は38%、P=0.02であった。 |
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RESPONSE:看護師により心疾患患者の合併症再発リスクを有意に軽減することができる [2010-09-14] |
RESPONSE: Nurses can significantly reduce the risk of recurrent complications in heart patients |
外来患者予防プログラムは、心筋梗塞(MI)または切迫MIで入院した患者において、高コレステロールや高血圧などの心血管リスクファクターのコントロールを有意に改善し維持することが示された。RESPONSE(外来専門看護師による二次予防の無作為評価:Randomized Evaluation of Secondary Prevention by Outpatient Nurse SpEcialists)トライアルは、オランダの11施設の急性冠動脈合併症により入院した患者754人に対する外来ナーシングプログラムを評価した。患者は通常治療単独または通常治療と6ヵ月間の看護ケア(さらに追加の4回の外来受診を含む)併用群に無作為に割り付けられた。スタディの一次測定は看護ケアでの最終受診の6ヵ月後である12ヵ月後に行われた。その結果、看護ケア群においてプログラム終了時にリスクファクター有病率の有意な改善が認められ、12ヵ月後にもその効果が失われていなかった。看護師によりリスクファクターのコントロールが良好な(9つのリスクファクターのうち7つ以上と定義)患者の割合が40%増加し、10年以内に死亡する計算上のリスクも約17%減少した。このスタディは2010年European Society of Cardiology学会のホットラインセッションで発表された。 |
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DANPACE:洞不全症候群患者に対しては心房単独ペーシングよりも二腔ペーシングの方が好ましい [2010-09-14] |
DANPACE: Dual-chamber pacing preferred over single-lead atrial pacing in treating sick sinus syndrome |
洞不全症候群患者に対する心房リードによる心房ペーシングと二腔ペーシングを比較したデンマーク多施設無作為化トライアルDANPACEは、二腔ペーシングにより心房細動および再手術の発現率が低下したことから、二腔ペーシングの方が望ましいと結論付けた。このトライアルは、二腔ペーシングにより、心室ペーシングを伴わない心房リード単独による心房ペーシングと比較し、実際に心房細動が減少し心不全発現率に影響しないことを初めて示した。初回のペースメーカー植え込みの適応とされた洞不全症候群患者計1,415人が、シングルリード心房ペーシングまたは二腔ペーシングを受ける群に等しく無作為化され、その後の経過を平均6.4年間追跡された。総死亡率は両群間で同様であり、シングルリード心房ペーシング群で29.6%、二腔ペーシング群で27.3%であった。しかし、発作性心房細動有病率はシングルリード群よりも二腔ペーシング群において低く(HR 0.79、P=0.024)、追跡期間中にペースメーカー再手術を必要とした患者も二腔ペーシング群において有意に少なかった(HR 0.50、P<0.001)。このスタディは2010年European Society of Cardiology学会のホットラインセッションで発表された。 |
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INNOVATE PCI:Elinogrelは急性および慢性疾患の治療においてクロピドグレルよりも優れた抗血小板作用を発揮する [2010-09-14] |
INNOVATE PCI: Elinogrel provides more potent antiplatelet effect than clopidogrel in acute and chronic phases of therapy |
急性および慢性疾患の治療において経口および静脈内elinogrelはクロピドグレルよりも迅速な抗血小板作用を有するとのトライアルの結果が2010年European Society of Cardiology学会のホットラインセッションで発表された。このINNOVATE PCIスタディは、非緊急PCIを施行される患者652人においてP2Y12阻害薬elinogrel(このIV型が迅速な可逆性の血小板阻害を有する)とクロピドグレルを比較した、無作為化用量設定トライアルである。患者は最初にPCI前にクロピドグレルを1日300または600mgの後に75mgを内服、またはelinogrel 80mgをボーラスで静脈内投与しその後50、100または150mgの経口elinogrelを1日2回内服する群に無作為に割り付けられた。データ&安全性モニタリング委員会は50mg経口投与群への組み入れを中止し静脈内投与の用量を120mgに増量することを推奨した;590人の患者は60日間追跡され、328人は120日間追跡された。スタディは有効性を評価する検出力に欠けていたが、elinogrelの静脈内投与および経口投与はクロピドグレルよりも有効である可能性があるようであり、阻害力は高用量で高いようであった。これらの結果は、さらに大規模なトライアルで臨床エンドポイントを評価しelinogrelをさらに研究するための基礎となりうる。 |
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AVERROES:Apixabanは出血のリスクなく脳卒中を有意に減少させる [2010-09-14] |
AVERROES: Apixaban associated with significant reductions in stroke with no bleeding risk |
Phase III AVERROES(脳卒中予防におけるapixaban 対アセチルサリチル酸[ASA]の比較:Apixaban Versus Acetylsalicylic acid [ASA] to Prevent Strokes)トライアルは、心房細動患者においてapixabanがアスピリンと比較し臨床的に重要な脳卒中および全身塞栓症を減少させ安全性が許容範囲内であることが明らかとなったため早期に中止された。AVERROESは、ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)治療に適さないことが示されたかまたは想定される患者5,600人(平均年齢70歳)を組み入れた二重盲検無作為化トライアルである。中間解析で脳卒中または全身塞栓症の年間発現率(一次エンドポイント)はアスピリン群で3.9%であり、apixaban群で1.7%であった(HR 0.45、P<0.001)。重大な出血の年間発現率はアスピリン群で1.4%、apixaban群で1.6%であった(HR 1.18、P=0.33)。出血性脳卒中は両群ともに年0.2%であり肝毒性または他の重大な有害事象は認められなかった。Apixabanの有益性は出血増加という代償を伴うものではなかった。このスタディ結果は、2010年European Society of Cardiology学会のホットラインセッションで発表された。 |
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SHIFT:Ivabradineを心不全治療薬に追加することにより死亡率および入院が減少する [2010-09-07] |
SHIFT: Adding ivabradine to heart failure medications reduces mortality and hospitalizations |
冠動脈疾患や左室機能低下に対する効果が既に研究されている選択的If阻害薬であるivabradineは心不全のリスクを有意に低下させるとのSHIFT(Systolic Heart failure treatment with the If inhibitor ivabradine Trial:If阻害薬ivabradineによる収縮不全治療トライアル)スタディの結果が、2010年European Society of Cardiology学会のホットラインセッションで発表され同時にLancetに掲載された。このスタディはivabradineの洞房結節If電流阻害が心拍数70/分以上の患者に有益であるか否かを調査するようにデザインされた。心不全患者6,500人以上がivabradineまたはプラセボ群に無作為に割り付けられた。心不全はNYHAクラスII〜IV、左室駆出率35%以下、および過去12ヵ月以内に心不全悪化による入院歴があること、と定義された。患者は全員が現在推奨されている薬物療法を受けており、心拍数70bpm以上であった。Ivabradineは心血管死数または心不全による入院数(一次エンドポイント)を18%と有意に減少させた(P<0.0001)。また、入院または死亡を引き起こす心不全イベントも26%減少した。平均追跡期間は23ヵ月であった。 |
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HEBE III:急性心筋梗塞後のボーラスでのエリスロポエチン単回投与は心機能を改善させない [2010-09-07] |
HEBE III: A single bolus of erythropoietin does not improve cardiac function after an acute myocardial infarction |
HEBE IIIスタディの結果、過去の小規模のスタディで認められたエリスロポエチン(EPO)の初回ST上昇心筋梗塞(STEMI)患者に対する臨床上の予後改善に関する有望な効果は確認されなかったと、2010年European Society of Cardiology学会のホットラインセッションで発表され同時にEuropean Heart Journalに掲載された。HEBE IIIトライアルは、エポエチンα60,000IUボーラス単回投与の左室駆出率(LVEF)に対する効果を調査した。EPOは初回STEMIに対するPCI成功後、3時間以内に経静脈的に投与された。計529人の患者がスタディに組み入れられ、うち263人はEPO群、266人はコントロール群に割り付けられた。6週後、EPO群のLVEFは53%でありコントロール群は52%であったが、この1%の差は小さく、統計学的または臨床的に有意ではなかった。さらに、血中蛋白で計測した梗塞サイズも2群間で有意差はなかった。しかし、主要な心有害事象が発現したのはEPO群ではわずか8人であったのに対し、コントロール群では19人に認められた。 |
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PEARL-HF:新たな経口カリウム結合薬は心不全患者および慢性腎臓病を有する心不全患者における高カリウム血症を軽減させる [2010-09-07] |
PEARL-HF: New oral potassium-binding agent reduces hyperkalemia in patients with heart failure and heart failure with chronic kidney disease |
Phase 2b臨床試験の結果から、心不全患者および慢性腎臓病を有する心不全患者における高カリウム血症を管理する新たな治療法が得られる可能性がある、と2010年European Society of Cardiology学会のホットラインセッションで発表された。PEARL-HF(Parallel Evaluation of RLY5016 in Heart Failure:心不全におけるRLY5016のパラレル評価)スタディにより、新たに開発されたカリウム結合薬RLY5016が、アルドステロン拮抗薬を投与されている場合であっても、心不全患者や慢性腎臓病を有する心不全患者において高カリウム血症を調整するのに役立つことが示された。この多施設無作為化二重盲検プラセボコントロールトライアルは、104人の患者に治療用量のRLY5016(55人)またはプラセボ(49人)を投与し評価した。血清カリウムが4.3〜5.1mEq/Lで慢性腎臓病を有し現在心不全治療薬を1種類以上内服している患者、または高カリウム血症により心不全治療を中断したことのある患者は、25〜50mg/dayのアルドステロン拮抗薬スピロノラクトンも投与された。その結果、RLY5016はプラセボと比較し高カリウム血症の発現を有意に減少させた(7%対25%、P=0.015)。スピロノラクトンの用量を増加させることのできた患者の割合も多かった(91%対74%)。RLY5016の忍容性は良好で薬剤誘発性の重篤な有害事象は認められなかった。 |
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J-LANCELOT:新たなプロテアーゼ活性化受容体1阻害薬はACSおよびCAD患者の重篤な心有害事象を減少させる
[2010-09-07] |
J-LANCELOT: New protease-activated receptor 1 inhibitor reduces major adverse cardiac events in ACS and CAD patients |
新たなプロテアーゼ活性化受容体1阻害薬(E5555)は、急性冠症候群(ACS)および冠動脈疾患(CAD)において重大な出血事故を増加させることなく重篤な心有害事象(MACE)を減少させる可能性があることを、2つのJ-LANCELOT(トロンビンの細胞効果拮抗から日本が学んだこと:Japanese Lessons from Antagonizing the Cellular Effect of Thrombin)トライアルがそれぞれ示した。このプラセボコントロールトライアルはACS患者(不安定狭心症または非ST上昇MI、241人)および高リスクCADを有する患者(263人)を調査した。治験薬(E5555として知られる)の用量を増大させるにつれ出血件数が増加する傾向が認められたが、統計学的に有意ではなかった。CADトライアルおよびACSトライアルにおいて、実薬群ではプラセボ群よりもMACE(主に心筋梗塞および再発性心筋虚血)の発現数が少なかった(それぞれ1.0%対4.5%、P=0.066;5.0%対6.6%、P=0.73)。E5555はPAR-1遮断により血小板凝集を強力に阻害した。両スタディ群において、100mgおよび200mgの用量ではトラフレベルでの平均血小板凝集が90%以上であり、50mgでは20〜60%であった。このトライアルの結果はESC2010ホットラインセッションで発表された。 |
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ALPHA OMEGA:低用量のn-3脂肪酸の有益性は心筋梗塞後患者のうちサブグループにおいてのみ認められた [2010-09-07] |
ALPHA OMEGA: Beneficial effect of low doses of n-3 fatty acids only found in sub-groups of post-MI patients |
心筋梗塞(MI)後患者を対象とした多施設プラセボコントロールトライアル(Alpha Omega Trial)の結果、低用量n-3脂肪酸を添加マーガリンの形で投与しても主要な心血管イベントは減少させなかったことが示された。計4,837人(60〜80歳)の患者が4種類のマーガリン:EPA+DHA(400mg/day)、ALA(2g/day)、EPA+DHAとALA、またはプラセボのいずれかを添加)のうちの1つを40ヵ月間毎日摂取する群に無作為に割り付けられた。参加者らは98%が抗血栓薬を、90%が降圧薬を、86%が脂質低下薬で十分治療されていた。おそらく患者に対する治療が優れていたため、心血管死亡率は予測のわずか半分であった。そのために主要な心血管イベントが脂肪酸群とプラセボ群とで同等であった可能性がある。ALAを摂取した女性においては一次エンドポイントが27%低下し、ボーダーラインの有意差であった。糖尿病患者ではEPA+DHAを摂取した者において心血管死亡率が50%と有意に低下した。EPA+DHAとALAを摂取した糖尿病患者においても不整脈関連イベントが同様に50%低下した。このトライアルは2010年European Society of Cardiology学会のホットラインセッションで発表され、New England Journal of Medicineオンライン版に掲載された。 |
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The ISAR-REACT 3A trial:待機的PCI中のヘパリン用量を低下させることにより出血および血栓性の合併症が減少する [2010-09-07] |
The ISAR-REACT 3A trial: Low heparin dose during elective PCI reduces bleeding and thrombotic complications |
低用量ヘパリンはPCI後の虚血の合併症を増加させることなく出血リスクを低下させる簡便で安全な方法であると2010年European
Society of Cardiology学会のホットラインセッションで発表され、European Heart Journalオンライン版に掲載された。この前向き多施設シングルアームオープンラベルのhistorical
control ISAR-REACT 3A(冠動脈内ステントおよび抗血栓療法:冠動脈治療に対する迅速早期処置:Intracoronary Stenting
and Antithrombotic Regimen: Rapid Early Action for Coronary Treatment)トライアルは、ヘパリン用量を140U/kgから100に減量することの影響を評価した。トライアルには2,505人の患者が組み入れられ、全員がPCI中に低用量の100U/kgのボーラスのヘパリンを投与された。30日後の正味の一次臨床予後エンドポイント(虚血イベント[死亡、MIおよび緊急の標的血管血行再建術施行]の累計および出血)発現率は、ISAR-REACT
3の従来用量ヘパリン群と比較し、低用量ヘパリン群において有意に低かった(7.3%対8.7%、P=0.045)。この結果は、一次エンドポイントの虚血および出血の要素が有意ではないが減少したことにより達成された。このトライアルのもう1つの目的は、低用量ヘパリン群とISAR-REACT
3の従来のbivalirudin群を比較することであった。低用量ヘパリンはbivalirudinと比較し非劣性のクライテリアに合致した。 |
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