倦怠感や疲労は医療ミスにつながる
  小児期のいじめは将来的な精神医学上の問題の予測因子となる
  うつ病患者における歓喜受容能力
  アルツハイマー病治療薬となりうる新しいクラスの化合物

 9月8日、15日、24日のDOL NewsはESC特集のため、Psychiatryニュースは
 お休みさせていただきました。



レジデント医師における高度の倦怠感や疲労は医療ミスの自覚と関連がある [2009-09-29]

Among resident physicians, higher levels of fatigue and distress are associated with self-perceived medical errors

高度の倦怠感や疲労を訴える内科レジデントは医療ミスを報告する確率が高いとの、医学教育上の主要な課題に関するスタディ結果がJAMA 9月23/30日号に掲載され、倦怠感、睡眠不足、消耗、うつ、およびQOLの低下が将来的な主要な医療ミスの自覚に独立して関連があることが示された。研究者らは、医療ミスの自己申告が倦怠感や疲労と同時に発生したと考えられた場合の倦怠感や疲労の影響を調査した。スタディでは2003〜2008年にトレーニングを開始し2009年2月まで年4回の調査に回答した内科系レジデント380人から得られたデータを解析した。ミスのデータを報告した356人(93.7%)のうち、39%がスタディ期間中に少なくとも1回の医療ミスを報告した。倦怠感または睡眠不足のポイントが1点増加するごとに医療ミスの報告率がそれぞれ14%および10%増加した。さらに消耗、うつ病スクリーニング陽性、およびQOL全体とも関連があった。JAMAの同号に掲載された他のスタディにおいても、注意深いコミュニケーションの推奨を含む教育プログラムに参加したプライマリケアの医師らは、個人的な幸福、感情面の疲労、患者中心の治療に対する共感および態度が改善したと報告した。

 

小児期のいじめと後の精神医学上の問題による入院および治療は関連がある [2009-09-29]

Association between childhood bullying and later psychiatric hospitalization and treatment

小児期のいじめ行為およびいじめの被害者にされることは、男女とも後の精神医学上の問題の予測因子となるが、女性の方が既存の精神医学上の問題の有無に関わらず影響を受けやすいようである、とArchives of General Psychiatry 9月号に掲載された。研究者らは、フィンランド国内の1981生誕コホートスタディに参加したフィンランドの小児5,038人における、8歳時のいじめ行為およびいじめの被害者になることと後の精神医学上の問題による入院および抗精神病薬による治療(13〜24歳)の関連を調査した。女児においては8歳の時点で頻回に被害者になることは、ベースラインの時点での精神医学上の問題の有無に関わらず入院による精神疾患の治療および抗精神病薬、抗うつ薬および抗不安薬使用の独立した予測因子であった。男児においても、頻回にいじめの対象となったりいじめ行為を行うことは抗うつ薬および抗不安薬使用の予測因子となった。また男児において頻回にいじめの対象となることは入院治療および抗精神病薬の使用の予測因子ともなった。しかし、8歳の時点での精神病理学的スコア合計で補正すると、頻回にいじめること、いじめの対象となること、またはいじめる/いじめられることは、男児においては将来的な精神的予後と関連がなかった。筆者らは、いじめ行為は、関連した者および社会全体に重大な問題をもたらす可能性のある精神疾患のリスクを指し示すものであると考えるべきであることを特筆している。

 

臨床的なうつは脳の快楽中核の早期機能不全を引き起こす [2009-09-01]

Clinical depression causes early malfunctions in the brain's pleasure center

臨床的にうつの患者は過去に楽しんだ活動における喜びを発見する能力が低いとの研究結果がNeuroReport 8月26日号に掲載された。このスタディでは、健常者と比較しうつ病患者において脳の報酬中核の機能が低下していることが示された。うつ病の脳活性に対する影響を調査するために研究チームは、健常人15人および最近うつ状態であった16人に好きな音楽か好きでも嫌いでもない音楽(ニュートラルな音楽)のリストを提出させた。その後彼らは彼らの選んだ音楽を聴きながら、機能的磁気共鳴画像検査(fMRI)で脳の神経活性の測定を受けた。その結果、健常者らは報酬過程と関連のある脳領域において有意な反応が認められたのに対し、うつ状態の者においてはこれらの神経生理学的反応が有意に低下していた。この結果から、うつ状態の者においては最も基本的な歓喜受容能力でさえも報酬処理に関連する脳領域の機能不全が認められるようであることが示唆された。両群間において画像検査中に音楽を聴いて楽しんだ程度に差はなかったがこのような結果であった。

 

アルツハイマー病に対してタウ蛋白凝集阻害薬が治療薬となる可能性のあることが発見された [2009-09-01]

Inhibitors of Alzheimer's disease tau protein clumping discovered as potential drug for this disease

アルツハイマー病(AD)の病因となると考えられているタウ蛋白凝集阻害能を有する新しいクラスの分子が発見されたとBiochemistryに掲載された。National Institutes of Health Chemical Genomics Centerの収容貯蔵庫内の300,000近い化合物をアッセイすることにより、研究者らは薬物様ADタウ蛋白凝集阻害物を発見した。それぞれの化合物の精製タウ蛋白サンプルの線維化阻害能を観察するためにテストチューブベースのアッセイがデザインされた。完全に線維化する途中の中間蛋白構造およびタウ蛋白シグナル線維化において蛍光タグが埋め込まれた。また、正常のタウには結合せずタウ線維にのみ結合する染料を用いて線維化をモニターした。その結果、285の化合物が有望な可能性があり、そのうち線維化を有効に阻害するATPZと呼ばれる特異的な一連の化学物質に焦点を当てた。中心部の構造は同じであるが側鎖の異なる21のATPZ類似化合物を用いて、各々のタウ線維化阻害能を計測した。これらの化合物はADモデルのトランスジェニックマウスにおけるタウ線維化阻害の過程を検討するのに有用である可能性がある。

 


 

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