2型糖尿病患者において血糖レベルが上昇すると認知機能が低下する [2009-02-24]

Cognitive function drops with rising blood sugar levels in people with type 2 diabetes

糖尿病における心血管リスクコントロール(ACCORD)トライアルのサブスタディである現在進行中の糖尿病患者における記憶力(MIND)スタディの結果、2型糖尿病患者において平均の血糖が上昇するほど認知機能が低下することが示された。ACCORDトライアルに参加した米国およびカナダの77施設中52の施設の研究者らは、55歳以上の3,000人近くに30分の認知機能検査を行った。その結果ヘモグロビンA1cが1%上昇すると精神運動スピード、全般的な認知機能、記憶力および様々な課題の遂行能力のスコアがやや低いことが示された。しかし、毎日の血糖値(空腹時血糖)と認知機能検査の結果に相関は認められなかった。過去のスタディでは2型糖尿病患者は糖尿病のない患者と比較し、認知機能低下および認知症の発症率が1.5倍であることが示された。ACCORD-MINDスタディの結果から、脳が慢性的に高い血糖レベルにさらされることがこの現象の原因の一部である可能性があるとの考えが支持されている。このスタディはDiabetes Care 2月号に掲載された。

 

初めての大規模スタディにより受動喫煙と認知機能障害の関連が示された [2009-02-24]

First large scale study demonstrates link between second-hand smoke and cognitive impairment

受動喫煙は認知症および他の神経学的問題につながりうるとのスタディ結果がBMJオンライン版2月13日号に掲載された。研究チームは50歳以上の非喫煙者約5,000人の唾液を検査した。彼らの唾液中のコチニン(ニコチンの副産物)レベルを測定し詳細な喫煙歴を聴取することにより、受動喫煙のレベルを評価した。記憶機能、基本的計算能力および言語の流暢性に焦点を当てた神経心理学的検査を用いて、脳機能および認知障害を評価した。その後この検査結果を合計し認知機能の全体的なスコアとした。その結果、高度の受動喫煙により認知機能障害が44%増加することが示された。彼らは、間接喫煙が認知症のオッズを上昇させる可能性がある理由として考えられるものとして、認知機能障害や認知症のリスクを誘発することで知られる心疾患や脳卒中などのリスクが上昇することなどをいくつか提示した。

 

地中海食は認知機能障害のリスクを低下させる  [2009-02-17]

Mediterranean diet associated with lower risk of cognitive impairment

地中海食を摂取することで軽度認知障害または軽度認知障害からアルツハイマー病への移行のリスクが低くなるようである、とArchives of Neurology 2月号に掲載された。研究者らは、認知機能の正常な1,393人および軽度認知機能障害患者482人の地中海食に対するアドヒアランススコアを計算した。経過観察期間中に認知障害のなかった275人に障害が発症した。地中海食に対するアドヒアランススコアの最も低かった3分の1と比較し、スコアが最も高かった3分の1では軽度認知障害を発症するリスクが28%低く、スコアが中間であった3分の1ではリスクが17%低かった。スタディ開始時点で軽度認知障害を有していた人々のうち106人が平均4.3年間の経過観察中にアルツハイマー病を発症した。地中海食を摂取することによりこのアルツハイマー病への移行のリスクも低下した。地中海食のアドヒアランススコアが最も高かった3分の1およびスコアが中間の3分の1では、スコアが最も低い3分の1と比較し、それぞれリスクが48%および45%低かった。

 

動物実験において神経成長因子がアルツハイマー様症状を回復させた [2009-02-17]

Growth factor reverses Alzheimer's-like signs in animals

様々な動物実験モデルにおいて、脳由来神経栄養因子(BDNF)と呼ばれる自然発生蛋白の投与により、記憶障害、認知機能障害、脳細胞変性および細胞死を予防または回復することができた。Nature Medicine 2月8日号に掲載されたこのスタディは、動物モデルにおいてBDNF治療がアルツハイマー病の進行を遅延または停止させることにより、長期にわたる保護作用を有する可能性があることを示した。研究者らはBDNF遺伝子または蛋白を一連の培養細胞および、アルツハイマー病モデルのトランスジェニックマウス、高齢ラット、嗅内皮質を損傷させたラット、高齢アカゲザル、および嗅内皮質を損傷させたアカゲザルに注射する実験を行った。各々の実験においてBDNFを投与しないコントロール群と比較し投与された動物は、様々な学習および記憶テストにおいて有意な改善を示した。注目すべきことに、注射を受けた動物の脳はまた、注射をされなかった動物と比較し、BDNF遺伝子発現が回復しており、細胞サイズが大きく、細胞のシグナリングが改善し、処置がなされなければ変性していたであろうニューロン機能の活性化が認められた。これらの効果はアルツハイマー病において最初にダメージを負う領域のひとつである海馬の変性にも認められた。

 

ティーンエイジャーのメディアへの暴露は若年成人期のうつ症状と関連がある [2009-02-10]

Teen media exposure associated with depression symptoms in young adulthood

ティーンエイジャーがテレビや他の電子メディアに暴露されすぎると、特に男性において若年成人期にうつ症状を発症しやすいようであるとArchives of General Psychiatry 2月号に報告された。研究者らはNational Longitudinal Survey of Adolescent Health(青少年の健康に関する全国長期的調査)のデータを用いて、スタディを開始した1995年にうつ症状を有さなかった青少年4,142人の電子メディアへの暴露を調査した。ティーンエイジャーは前の週にテレビやビデオを何時間見たか、コンピュータゲームを何時間したか、またはラジオを何時間聴いたかについて質問した(調査はDVDやインターネットが普及する前に行われた)。その結果、彼らのメディアへの暴露時間は平均5.68時間であり、テレビおよびビデオにそれぞれ2.3時間および0.62時間、コンピュータゲームに0.41時間、ラジオに2.34時間を費やしていた。7年後(平均年齢21.8歳)、308人(7.4%)がうつ病に一致した症状を発症した。1日のテレビ視聴時間が長いほどうつ病を発症するオッズが有意に大であった。合計のメディア暴露時間が長い場合も同様に、うつ病を発症するオッズが大であった。若年女性は若年男性よりもうつ症状を発症しにくかった。

 

妊娠中のホルモンレベルにより産後うつ病のリスクが見極められる可能性がある [2009-02-10]

Hormone level during pregnancy may identify women at risk for postpartum depression

妊娠中期の胎盤由来コルチコトロピン放出ホルモン(pCRH)レベルの高い女性は産後うつ病(PPD)を発症する確率が高い、とArchives of General Psychiatry 2月号に掲載された。研究者らは南カリフォルニアの二つのメディカルセンターを受診した妊婦100人のpCRHホルモンを計測した。血液は妊娠15、19、25、31および37週に採取し、うつ病症状は妊娠中の最後の4回の受診時および産後平均8.7週に再度評価した。計16人に産後の受診の際にPPD症状が認められた。妊娠25週時のpCRHレベルはPPD発症の強力な予測因子であった。血中pCRHのカットオフ値を56.86pg/mLとした時のPPDに対する感度と特異度はそれぞれ0.75および0.74であり、つまり、後にPPDを発症するであろう妊婦の4分の3はこのマーカーを用いることにより検出できることになる。このホルモンレベルの予測能は妊娠中期のうつ症状も評価することによりさらに向上した。pCRHレベルによりPPD症状が予測できる狭い時間枠(妊娠23〜26週)はこのホルモンレベルのサージにほぼ一致する。

 

抗コリン薬は高齢者の認知機能を低下させる  [2009-02-03]

Use of anticholinergic medications associated with cognitive decline in elderly

Journal of the American Geriatrics Societyに掲載されたスタディにより、高齢者に抗コリン薬を使用することにより認知機能を低下させる可能性のあることが示唆された。研究者らは65歳以上の高血圧を有する比較的健康な男性544人以上を調査した。結果は、短期間の記憶に関してはホプキンス単語想起テスト(HVRT)を、実行機能に関しては手段的日常生活動作(IADL)スケールを用いて評価した。抗コリン薬の使用状況は参加者らのプライマリケア受診記録を用いて確認した。過去12ヵ月間の抗コリン薬の累積使用量と記憶力および日常機能低下に関連が認められた。抗コリン薬の使用量が平均3ヵ月に1単位増えることにより、年齢、教育、認知および身体機能、合併症、および高血圧重症度などの可能性のあるリスクファクターと関係なく、HVRTおよびIADLがそれぞれ0.32ポイント(95%信頼区間[CI]=0.05〜0.58)および0.10ポイント(95%CI=0.04〜0.17)低下した。この相関は抗コリン薬以外の他の併用薬で補正した結果減少したが、統計学的には依然として有意であった。

 

65歳未満に糖尿病を発症するとアルツハイマー病および他の認知症を発症する確率が倍以上になる [2009-02-03]

Getting diabetes before 65 more than doubles risk for Alzheimer's disease and other dementia

糖尿病はアルツハイマー病および他の認知症の有意なリスクファクターであるとの新たなデータが、Diabetes 1月号に掲載される現在進行中の双子のスタディから明らかになった。スタディの対象は、認知症の追跡を開始した1998年に65歳以上であったスウェーデン人の双子13,693人である。糖尿病の情報は過去の双子の調査および1960年代に開始された退院登録との連携により得られた。全ての参加者のうち467人が認知症と診断され、うち292人がアルツハイマー病および105人が血管性認知症と診断された。残りの170人は認知症疑いとされた。糖尿病は1,396人が有し、補正後の認知症、アルツハイマー病および血管性認知症のオッズ比(95%CI)はそれぞれ1.89(1.51〜2.38)、1.69(1.16〜2.36)、2.17((1.36〜3.47)であった。糖尿病を65歳未満に発症するとアルツハイマー病のリスクは125%であった。中年期に発症した糖尿病は65歳以降に発症した糖尿病に対して、遺伝子や小児期の貧困などの家族因子で補正した後もなお、アルツハイマー病または他の認知症の有意なリスクファクターであった。

 


 

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