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ARBITER 6-HALTS:スタチンを内服している患者においてナイアシンを用いてHDLを増加させることにより、エゼチミブでLDLを低下させるよりも頸動脈内中膜厚が減少することが示された [2009-11-24]
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ARBITER 6-HALTS: In patients on statins, raising HDL with niacin decreases carotid intima-media thickness more effectively than reducing LDL with ezetimibe |
スタチンに高密度リポ蛋白(HDL)コレステロール上昇作用のあるナイアシンを併用させることにより、低密度リポ蛋白(LDL)コレステロール低下作用のあるエゼチミブを併用するよりも動脈壁プラーク蓄積の減少および心疾患リスク低下には有効であることが、2009年American
Heart Association学会レイトブレイキング臨床試験のセッションで発表され、New England Journal of Medicineに掲載された。コレステロール低下の治療効果に関する研究の血管生物学:動脈硬化に対するHDLおよびLDL治療戦略(The
Arterial Biology for the Investigation of the Treatment Effects of Reducing Cholesterol
6: HDL and LDL Treatment Strategies in Atherosclerosis [ARBITER 6-HALTS] )スタディは、動脈硬化性心血管疾患のハイリスク患者363人を組み入れた。対象者は通常のスタチンに加えナイアシンまたはエゼチミブを内服する群に無作為に割り付けられた。一次エンドポイントは頸動脈内中膜厚(IMT)であった。一次エンドポイントが達成されたためスタディは6月に早期終了された。特に、208人の14週間の経過観察データの結果、ナイアシン群においては平均HDLコレステロールが42mg/dLから50mg/dLに上昇し、IMTの有意な減少が認められた。エゼチミブ群においては平均LDLコレステロールレベルが83mg/dLから66mg/dLに低下した。しかし、平均IMTの全般的な変化は認められなかった。
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POPULAR:検査により血管形成術とステント留置施行後の抗血栓療法に抵抗性の患者が予知できる [2009-11-24]
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POPULAR: Tests predict which patients are resistant to anti-clotting therapy during
angioplasty plus stenting |
血小板機能検査6つのうち3つは血管形成術(PCI)およびステント留置術を施行された患者の血栓関連の有害事象リスクを予測することができると2009年American
Heart Association学会で報告された。POPULARトライアルは抗血栓薬投与中患者における血小板機能検査をhead-to-headで比較した初めてのものである。研究者らはPCIおよびステント留置術を施行された1,069人の連続した患者を対象に、6つの血小板機能検査を比較した。一次エンドポイントは総死亡、心筋梗塞、緊急血行再建術施行、脳卒中またはステント血栓の合計であった。1年間の観察後に3つの検査(Light
Transmittance Aggregometry、VerifyNow-P2Y12Rカートリッジ、およびPlateletworksTMアッセイ)で血小板機能が高かった患者は総一次エンドポイント発現率が高かった(12.1%対6%)。他の3つの検査による評価の予後予知能は不良であった。研究者らは、待機的血管形成術およびステント留置術を施行する患者全てにおいて血小板機能検査を行い血栓関連合併症のハイリスク患者を検出するのは有用であると述べている。 |
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BtB Trial:共同ケアによりバイパス術後うつ病患者のQOLおよび気分が改善する [2009-11-24]
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BtB Trial: Collaborative care improves quality of life and mood of depressed patients after artery bypass graft surgery |
冠動脈バイパス術後の回復期にある患者は共同ケアチームの補助により回復が早まると2009年American
Heart Association学会レイトブレイキング臨床試験のセッションで発表され、同時にJAMAに掲載された。Bypassing the Blues(BtB)Trialにおいては、電話を基本とした共同ケア治療プログラムは通常のケアと比較し、CABG後8ヵ月の患者の精神および身体健康上の予後においてより有効であり術後再入院をも減少させる可能性もあることが示された。8ヵ月間の観察後、身体機能およびうつ病を評価する検査のスコアは、共同ケアを受けた患者において通常のケアを受けた患者と比較し有意に改善していた。うつ病患者はまた、気分障害の症状が50%以上軽減したと報告する率が高く(50%対29.6%、p<0.001)、特に男性において著明であった(60.5%対33.3%、
p<0.001)。治療は男性においてより有効であったが、女性においても有効性は認められた。さらに、共同ケアを受けたうつ病男性は通常の治療を受けた男性と比較し術後8ヵ月間の心血管疾患による再入院率が低かった(13%対23%、p=0.07、うつ病のないCABG後患者における13%と同等)。 |
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PLATO STEMI:可逆的な新規経口抗血小板薬はSTEMI後のプライマリPCIを受けた患者において心イベントを抑制する [2009-11-24]
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PLATO STEMI: New reversible oral anti-platelet drug reduces cardiac events in
primary PCI patients following STEMI |
可逆的経口抗血小板薬ticagrelor によりクロピドグレルによる標準的な治療と比較し、ST上昇心筋梗塞(STEMI)患者における心イベントが少なかったと、2009年American
Heart Association学会レイトブレイキング臨床試験のセッションで発表された。血小板抑制と患者の予後(PLATelet Inhibition and
Patient Outcomes:PLATO)トライアルは、ステントを用いたプライマリ冠動脈形成術(PCI)を予定されたSTEMI患者8,430人を、アスピリンに加え治験薬ticagrelorまたはクロピドグレルを内服する群に無作為に割り付けた。この無作為化二重盲検試験において、被験者は2006〜2008年の間に43ヵ国862施設から組み入れられた。1年間の経過観察期間中にticagrelor群患者の9.3%が一次エンドポイント(心臓発作、脳卒中または血管死の合計)に合致したのに対し、クロピドグレル群においては11%であった;つまり、治験薬において相対リスクが15%低かった。総死亡率もticagrelorにより、6.0%から4.9%に低下し、相対リスクは18%低下した。同様に、新たな心筋梗塞およびステント血栓のリスクも軽減した。重大な出血の発現率上昇は認められなかった。 |
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CHAMPION PLATFORM:PCI時に使用する新たな抗血小板薬は一次エンドポイントにおいては優れていなかったが死亡およびステント血栓を減少させた [2009-11-24]
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CHAMPION PLATFORM: New antiplatelet agent for PCI not superior for primary endpoint,
but did reduce death and stent thrombosis |
新たな静注薬P2Y12血小板阻害薬は、複合一次エンドポイント(心筋梗塞、総死亡率および血行再建術の必要性)においては明確な有益性を示さなかったが死亡率およびステント血栓は減少させた、と2009年American
Heart Association学会レイトブレイキング臨床試験のセッションで発表され、New England Journal of Medicineに掲載された。CHAMPION
PLATFORMの第III相試験では、血管形成術およびステント挿入を施行された患者5,362人をプラセボまたは治験薬cangrelorをPCI中に投与する群に無作為に割り付けた。施術後に全ての患者が、通常投与される非可逆的抗血栓薬クロピドグレル600mgを経口投与された。中間解析レビュー委員会がcangrelorはクロピドグレルに対し一次エンドポイント(総死亡率、心筋梗塞および血行再建術の必要性)において上位性を示さないであろうと結論付けたため、トライアルは終了となった。しかし、いくつかの二次エンドポイントは興味深くまた情報の多い結果であった。例えば、総死亡率単独のエンドポイントはcangrelor群において0.7%から0.2%に有意に低下した(67%低下)。さらに、急性ステント血栓は治験薬群において有意に低下した。 |
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乳児における重症の中隔欠損に対する新たなシャント術は1年生存率を改善するが合併症が多い [2009-11-24]
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New shunt procedure for correcting severe heart defect in infants improves survival
to one year, but has more complications |
心臓が重度に未発達な状態で生まれた小児は新たなシャント術を施行されることにより1歳まで生存する確率が上昇するが、この方法は長期において最も安全な方法ではない可能性があると2009年American
Heart Association学会で発表された。この初めての手技の新たな方法は、機能している右室を肺動脈へつなぐ右室から肺動脈(RV-to-PA)へのシャントを用いる。従来の方法はBlalock-Taussigシャント(MBTS)変法を用い、大動脈を肺動脈につなぐ。ある15施設のトライアルで555人の小児(男児61%、白人73%)をRV-PAシャントまたはMBTS術を施行する群に無作為に割り付けた。12ヵ月後に心臓手術を必要とせずに生存している乳児は、RV-PAシャント群においてMBTS群と比較し、有意に多かった(74%対64%、p=0.01)。RVからPAへのシャントは合併症が多く、240のインターベンションを必要とした(乳児100人当たり87.6)。MBTS群においては心血管系のインターベンションを必要とする例がはるかに少なかった(183人、乳児100人当たり66.5、p=0.006)。平均2年後には、MBTSと比較したRV-PAシャント術の移植を必要としない生存率の有益性は消失し、その差は有意ではなくなった(68%対62%、p=0.14)。 |
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PRINCE:心停止後の患者に速やかに低体温療法を施行することで脳損傷を伴わない生存の確率が増大する [2009-11-17]
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PRINCE: Chance of survival without brain damage greater when person in cardiac arrest is cooled quickly |
心停止後、迅速に低体温療法を施行することにより脳損傷を伴わない生存の確率が改善するとのPRINCE(Pre-Resuscitation
Intra-Nasal Cooling Effectiveness:蘇生前鼻腔内冷却療法の有効性)研究の結果が2009年American Heart Association学会で発表された。ヨーロッパの研究者らは、心肺蘇生(CPR)施行中に脳を冷却するRhinoChillという新たな方法を用いた。彼らは、目撃者のいる心停止成人患者200人を、標準的蘇生法群または心停止直後に低体温療法を開始する蘇生法群に無作為に割り付けた。生存して入院した患者全てがさらに標準的なクライテリアによる低体温療法を施行された。報告された患者182人(平均年齢66歳、男性71%)中、低体温療法群の46.7%が生存して退院したのに対し、標準的蘇生法群におけるその割合は31%であった。さらに、低体温療法群のうち退院時に神経学的状態が良好であったのは36.7%であり、標準的蘇生法群におけるその割合は21.4%であった。心停止後10分以内に蘇生を開始された患者137人中、低体温療法患者の59.1%が生存して退院したのに対し標準的蘇生法患者では29.4%であった。また、これらの患者のうち神経学的に問題がなかったのは低体温療法患者では45.5%であり、標準的蘇生法患者では17.6%であった(p=0.01)。 |
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突然死患者の遺伝子を死後に検査し患者の血縁者のリスクを同定することは費用対効果に優れる [2009-11-17] |
Postmortem genetic tests after sudden death may provide less expensive way to identify risk to surviving relatives |
原因不明の突然死(SUD)に関連する遺伝子変異を同定する死後標的検査は、第一度近親者に包括的な循環器系検査を施行するよりも経費が少なく有効な方法であるとの研究結果が2009年American
Heart Association学会で発表された。研究者らは146のSUD症例において、心臓突然死(SCD)に関連する2つの遺伝性の心調律異常について死後検査の費用を比較した。突然死した患者の26.7%においてQT延長症候群(LQTS)またはカテコールアミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)に関連した疾患を引き起こす可能性のある変異が認められた。その後、突然死した人の中で変異の認められた者の近親者160人における疾患を標的とした評価の経費およびgenotype-negativeの第一度近親者(424人)の全般的な臨床評価の経費を推算した。死亡した人々の遺伝子検査、およびその検査で変異が陽性であった者の近親者160人の疾患を標的とした循環器的評価、および変異陰性の突然死した者の第一度近親者424人の全般的な臨床評価全てにかかる経費は678万ドルと推定された。一方、現在推奨されているSUD患者の近親者584人全員に対する一次循環器的評価の後に疾患を標的とした遺伝子検査を行う方法では700万ドルを超えるであろうと考えられた。 |
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LorcaserinのBLOSSOMトライアルの結果、患者の身体組成、心血管リスクファクターおよびQOLが改善したことが示された [2009-11-10]
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BLOSSOM trial of lorcaserin demonstrates improvements in patients' body composition, cardiovascular risk factors and quality of life |
BLOSSOM(Behavioral modification and LOrcaserin Second Study for Obesity Management:肥満管理に対する習慣改善およびlorcaserinの第二調査)phase 3トライアルのデータから、患者の身体組成、心血管リスクファクターおよびQOLが改善されたことが示されたと、第27回肥満学会で発表された。BLOSSOMでは、平均BMI35.9およびベースライン時体重220ポンドの患者4,008人を評価した。Lorcaserinを1日2回、1日1回、またはプラセボを内服した患者のBMI(kg/m2)(-2.1、-1.7、-1.0)、ウエスト周囲径(cm)(-6.2、-5.6、-4.2)および臀部周囲径(cm)(-5.3、-5.0、-3.3)の変化は全て、プラセボと比較し有意であった(p<0.0001)。さらに、lorcaserinを内服した患者はプラセボを内服した患者と比較し体脂肪が有意に減少した。Lorcaserin 10mgを1日1回または2回内服した患者は、52週後のHDLコレステロールおよび中性脂肪のパーセント変化がプラセボと比較し統計学的に有意(p<0.05)であり、LDLに関しても好ましい傾向が認められた。Lorcaserinは血圧または心拍数を上昇させることはなかった。これらの結果は、4,008人の患者に1年間のlorcaserin治療により高度に有意な体重減少を示したことを公表した以前のBLOSSOMのデータにさらに追加された。 |
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高血圧および血液中の炎症マーカーはアルツハイマー病の親を有する者においてより多く認められる [2009-11-10]
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High blood pressure and markers of inflammation in blood more common in offspring of parents with Alzheimer's disease |
中年期の動脈疾患のエビデンスである高血圧および血液中の炎症マーカーは、アルツハイマー病の親を有する者において、アルツハイマー病の親を有さない者と比較し、より多く認められるとArchives of General Psychiatry 11月号に掲載された。研究者らは、アルツハイマー病の家族歴を有する92家族の子供206人と家族歴のない97家族の子供200人における高血圧や血液中のサイトカインなどこれらの血管および炎症因子を比較した。アルツハイマー病の親を有する者においては家族歴を有さない者と比較し、この疾患への関連が知られているAPOE ε4遺伝子を有する者が多かった(47%対21%)。さらに、家族歴を有する者においては、収縮期血圧および拡張期血圧が高く、足関節上腕血圧比が低く、いくつかの異なる炎症惹起性サイトカインのレベルが高かった。血中コレステロール上昇および高血糖などの他の心血管リスクはアルツハイマー病の親を有することと関連はなかった。これらの他の因子は認知機能低下と密接な関連はないのであろうと筆者らは述べている。 |
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バイパス術後の合併症予知には術前のBNPレベルの方が術後のBNPレベルよりもよいようである [2009-11-02]
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Preoperative BNP levels may be better predictor of complications after bypass surgery than postoperative levels |
2009年American Society of Anesthesiologists学会で発表された臨床スタディの結果によると、術前のBタイプナトリウム利尿ペプチド(BNP)は術後のBNPレベルの計測よりも初回の冠動脈バイパス術(CABG)後の入院期間および死亡率を予測するにはよいようである。このスタディは心臓手術を受ける患者における術後BNPレベルの予後予測能を評価するために計画された。CABG施行患者1,183人が術前および術後のBNP上昇レベルを調査された。死亡率は術後5年以内の全ての死亡と定義された。最短で術後2年、平均4年間追跡された。追跡期間中に115人(9.7%)が死亡した。統計学的解析の結果、臨床上のリスクファクターおよび術後BNPを統計学的に処理した後も術前のBNPが入院期間の独立した予測因子であることが明らかにされた。重要な臨床上のリスクファクターとともに術前および術後のBNPを別々に考えると、いずれもが調査された二つのアウトカムの独立した予測因子であった。 |
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女性において心筋梗塞発症率はより多くなってきているが致死率は低い [2009-11-02]
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Myocardial infarction becomes more common but less often fatal in women |
過去20年間における中年女性の心筋梗塞(MI)はより一般的になってきているが、女性全体、特に55歳未満の心筋梗塞後の生存率は男性よりも遥かに高いとArchives of Internal Medicine 10月26日号に掲載された。1988〜1994年および1999〜2004年にNational Health and Nutrition Examination Surveysに参加した35〜54歳の成人(それぞれ4,326人および4,075人)のデータを解析した。いずれのスタディ期間においても35〜54歳の男性は同年代の女性と比較しMIの発症率が高かった。しかし、近年、男性のMI率が低下し女性において増加したためその差は狭まっている(1988〜1994年のMI率は男性2.5%、女性0.7%に対し、1999〜2004年ではそれぞれ2.2%および1%)。2つの期間中、平均フラミンガム冠動脈リスクスコアは男性で改善傾向にあったが女性では増悪傾向にあった。同号の他の報告によると、院内死亡率は1994〜2006年では患者全体で低下しているが、特に男性よりも女性において顕著であることが示されている。 |
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