身体的疼痛および社会的機能障害は絶望的な感情と比較し抗うつ剤療法開始後はるかに速く緩和する可能性がある [2008-03-25]

Symptoms including physical pain and impaired social function may be relieved much faster after starting antidepressant therapy than feelings of hopelessness

うつ病のほとんどの症状は絶望的な感情と比較し抗うつ剤療法開始後はるかに速く改善し、異なる反応のタイミングに明確な期待をもつうつ病患者はより不満が多い、とGeneral Hospital Psychiatry 1-2月号に掲載された。研究者らはfluoxetine、パロキセチン、またはセルトラリンで治療を受けた患者573人を評価した。全ての患者は治療開始後1、3、6、および9ヵ月後に評価を受けた。全体で68%の患者が1ヵ月後までに、88%が3ヵ月終了までに有意な改善を認めた。改善事項には肯定的な感情および仕事や社会的機能の改善が含まれた。身体的疼痛のほとんどは1ヵ月以内に改善した。しかし、このスタディの対象の多くにおいて希望的な感情は、他のうつ症状改善後数週間、または数ヵ月たっても認められなかった。

 

ストレスに対する反応に関連する遺伝子の違いにより、小児期に虐待を受けた成人の外傷後ストレス障害のリスクを予測できるようである [2008-03-25]

Variations in a gene involved in response to stress appear to be predictive of risk for post-traumatic stress disorder symptoms in adults who were abused as children

ストレスに対する反応に関連する遺伝子の違いにより、小児期に虐待を受けた成人の外傷後ストレス障害のリスクを予測できるようである、とJournal of the American Medical Association 3月19日号に掲載された。研究者らは小児期に明らかな虐待または他の外傷を受けた患者900人を評価し遺伝子を解析した。小児期の虐待レベルおよび他の外傷からそれぞれ成人期の症状のレベルが予測できた。FKBP5遺伝子の変異は症状の直接的な予測因子ではなく、非虐待性の外傷から成人期の症状を予測するのに関与していなかったが、4つの特異的な変異は小児期の虐待から成人期の症状を予測するのに有意に影響していた。この遺伝子と環境の相互作用は、うつ病重症度スコア、年齢、性別、小児虐待以外の外傷のレベル、および家族の遺伝子で補正した後も依然として認められた。

 

パイロットトライアルの結果、タモキシフェンは双極性障害患者の躁病症状を軽減する可能性のあることが示唆された  [2008-03-18]

Pilot trial suggests that tamoxifen may decrease symptoms of mania in patients with bipolar disorder

乳がんの治療薬として使用されている抗エストロゲン薬タモキシフェンは双極性障害患者の躁病症状を軽減する可能性がある、とArchives of General Psychiatry 3月号に掲載された。タモキシフェンは、思考の混乱や判断障害などの躁病症状に関連するプロテインキナーゼCを阻害する。21日間のトライアルにおいて、研究者らは18〜60歳の患者66人(全ての患者が躁病または躁病を含む混合性エピソードを有していた)を1日40〜80mgのタモキシフェンまたはプラセボ群に無作為に割り付けた。計50人(タモキシフェン群29人、プラセボ群21人)がトライアルを完了した。その結果、タモキシフェン群の患者は、トライアル終了時の躁病重症度検査のスコアが有意に低下しており、一方プラセボ群の患者においてはやや上昇していた。タモキシフェン群患者の計48%において躁病スコアが半分以下になっていたのに対し、プラセボ群におけるその割合は5%であった。寛解に匹敵するスコアを達成したのはタモキシフェン群患者の28%であったのに対し、プラセボ群ではその割合はゼロであった。

標準的治療と音楽療法の併用はうつ病症状軽減に役立つ可能性があるが音楽療法単独による有効性は明らかでない [2008-03-18]

Music therapy may have a role in easing symptoms of depression in combination with standard treatments but its value as a sole intervention is even less clear

音楽療法はうつ病の症状を軽減する可能性があるとCochrane Database of Systematic Reviews Issue 1(2008)に掲載された。5つの小スタディのうち4つにおいて音楽を併用療法として用いることにより症状の軽減が認められることが示された。これらのスタディは、組織化した理論上の枠組み内での療法士と患者の音楽的な相互作用を主とし、その治療効果は音楽、音楽から引き起こされる会話、または治療上の結びつきの構築から得られた。5つ目のスタディは併用療法と標準的な治療で差を認めなかったが、音楽療法の理論上の基盤を有していなかった。筆者らは、標準療法と音楽療法の多様性のため解析用のデータを収集することが困難であったと記している。しかし、筆者らおよび編集局の論説者は、音楽をうつ病治療の一環としたさらなる研究を行うべきであると考えている。3つのスタディは60歳以上の成人、1つは21〜65歳、他の1つは14および15歳以上の成人を対象としていた。

 

選択的セロトニン再取込み阻害薬はプラセボと比較し強迫性障害の症状軽減をもたらす確率が倍である [2008-03-11]

Selective serotonin reuptake inhibitors are twice as likely to produce relief of symptoms of obsessive compulsive disorder compared with placebo

選択的セロトニン再取込み阻害薬はプラセボと比較し強迫性障害の症状軽減をもたらす確率が倍である、とCochrane Database of Systematic Reviews Issue 1(2008年)に掲載された。17のスタディ(患者計3,097人)のレビューの結果、この薬剤はプラセボと比較し、治療開始6〜13週後の症状をより軽減することが確認された。しかし、その効果はあまり大きくはなかった。嘔気や頭痛などの副作用は抗うつ薬においてプラセボよりも著しく多く認められた。この薬剤は強迫性行動に耐えたり軽減したりするための行動療法を拒絶する約25%の患者において最も有効なようである。

 

ストレスや不安の感覚の基盤となる脳の経路を理解することによりアルコール依存に対する新たな治療法が開発される可能性がある [2008-03-11]

Understanding of brain pathway underlying feelings of stress and anxiety may guide development of new therapies for alcohol dependence

ストレスや不安の感覚の基盤となる脳の経路を理解することによりアルコール依存に対する新たな治療法が開発される可能性がある、とScience 2月26日号に掲載された。ニューロキニン1受容体を欠失させたマウスは通常のマウスよりもアルコール摂取量が少なかった。小規模な臨床試験において研究者らは、ニューロキニン1受容体を阻害する治験薬により、最近アルコール中毒治療を行ったアルコール依存の成人のアルコール渇望症状が軽減し健康状態の感覚が改善したことを明らかにした。機能性脳画像によりこれらの患者における負の刺激に対する過剰な感受性がこの治験薬により改善し、一方で楽しい刺激に対する反応は温存されたことが示された。この受容体は通常、ストレスにより放出され不安症状を引き起こすサブスタンスPに結合する。サブスタンスPおよびこの受容体はストレス反応や薬物による快効果に関連する脳領域において多く発現している。

 

初回の抗うつ薬治療に反応しなかったうつ病のティーンエイジャーには新たな薬剤への変更と心理療法の追加が有効な可能性がある  [2008-03-04]

Changing to a new drug and adding psychotherapy may help teenagers with depression that does not respond to initial treatment with an antidepressant

選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)による初回治療に反応しなかった中等度で慢性うつ病のティーンエイジャーには新たな薬剤への変更と心理療法の追加が有効な可能性がある、とJournal of the American Medical Association 2月27日号に掲載された。研究者らはSSRIによる2ヵ月間の初回治療に反応しなかった12〜18歳のうつ病患者334人を、パロキセチン、citalopram またはfluoxetineのうちの1剤と認知行動療法の併用、またはvenlafaxineと認知行動療法の併用、のいずれかの治療を受ける群に無作為に割り分けた。反応率は薬物療法では40.5%であったのに対し、併用療法に切り替えることにより54.8%になった。Venlafaxineに変更するのと他のSSRIに変更するのとでは、有効率に差はなかった(それぞれ48.2%と47.0%)。自己申告によるうつ病の症状や自殺念慮などの有害事象は群間で差がなかった。

 

レビューの結果、心理療法が高齢うつ病患者に対し有効であるかどうかを結論付けるエビデンスは不十分であることが示された [2008-03-04]

Review shows there is insufficient evidence to conclude whether psychotherapy helps older patients with depression

現在あるデータでは心理療法が高齢うつ病患者に対し有効であるかどうかを結論付ける十分なエビデンスが得られていない、とCochrane Database of Systematic Reviews Issue 1(2008)に掲載された。研究者らは9つのトライアル(患者計700人以上)をレビューした。その中には認知行動療法を評価したスタディや、力動的精神療法を評価したスタディが含まれた。トライアル間の治療法の標準化はなされなかった。研究者らは、ほとんどのスタディは小規模で比較的男性患者が少なく、フォローアップ終了前の中止率が高かったことに言及している。5つのスタディにおいて、認知行動療法を受けた患者は治療プログラムに入るのを待機している患者よりも、うつ病の症状が有意に少なかった。治療を標準化した、より大規模なトライアルを行うことで有効性に関するよりよい情報が得られる可能性がある。

 


 

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