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院外心停止に対する蘇生中止に関するガイドラインは生存の可能性の低い患者を見極めるのに役立つ [2008-09-30] |
Guidelines for termination-of-resuscitation of out-of-hospital cardiac arrest help identify patients with little chance of survival |
研究者らは、蘇生後生存の可能性の低いあるいはない院外心停止患者を見極めるのに用いられるクライテリアを承認した、とJAMA 9月24日号に掲載された。このスタディは、二つの院外蘇生の中止ルールに注目した。ひとつは一次救命処置(basic life support :BLS)のできる者に対するルールであり、もうひとつは二次救命処置(advanced life support :ALS)のできる者に対するものであった。BLSルールには、救急救命士による目撃証拠のないイベント;院外で自動体外式除細動器が使用されていないかmanual shockを行われたもの;および院外で自己脈が出なかったものが含まれる。ALSルールには、BLSルールに加え、目撃者のない心停止および目撃者による心肺蘇生の行われなかったものが含まれる。BLSの蘇生中止のクライテリアに当てはまった患者2,592人(47.1%)のうち生存して退院したのはわずか5人(0.2%)であった。ALSクライテリアに当てはまった患者1,192人(21.7%)のうち生存して退院した者はいなかった。両ルールの陽性的中率はBLSルールで0.998、ALSルールで1.000であった。 |
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ESCAPEトライアルの結果、うっ血性心不全の評価に対し理学所見は画像診断およびバイオマーカーの計測と同等に有用であることが示された [2008-09-30] |
ESCAPE trial shows physical exams as good as imaging and measuring biomarkers for assessing congestive heart failure |
病歴および理学所見は医療においては従来不可欠な診断ツールであるが、うっ血性心不全患者の評価において依然として最も正確であり費用対効果に優れた方法であり得る、とのスタディ結果がCirculation:
Heart Failureに掲載された。うっ血性心不全および肺動脈カテーテル法の評価スタディ(Evaluation Study of Congestive
Heart Failure and Pulmonary Artery Catheterization Effectiveness:ESCAPE)に組み込まれた患者388人に対し病歴聴取および理学所見の評価を行った。これらの患者の約半数が侵襲的な右心カテーテル検査も施行された。研究者らは、病歴および理学所見から推定された体液量は侵襲的な検査の結果に匹敵することを明らかにした。頸静脈から右房圧が<8mmHgと推定された患者の82%において計測した右房圧も<8mmHgであり、>12mmHgと推定された患者の70%が計測上の右房圧も>12mmHgであった。さらに、病歴および理学所見から余剰体液があると推定された患者は入院または6ヵ月以内に死亡するリスクが50%高かった。 |
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若年アスリートの心疾患検索に心臓超音波検査を含むプレ参加プログラムは有能な手段ではあるが12誘導心電図で十分な可能性がある [2008-09-22]
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Pre-participation program, including echocardiography, is an efficient way to identify young athletes with cardiac disease but 12-lead ECG may be sufficient |
イタリアで施行されたスタディの結果、若年アスリートの心疾患検索に心臓超音波検査を含むプレ参加プログラムは有能な手段ではあるが12誘導心電図で十分であると2008年European Society of Cardiology学会で発表された。突然死の原因となる心疾患を有する者をタイムリーに発見する最も有用な方法を探すために研究者らは、プレ参加の12誘導心電図の結果心疾患がなく競技に参加できるとされたアスリート4,450人に心臓超音波検査で器質的な心疾患の評価を行った。4,450人中、肥大型心筋症(HCM)と診断された者はいなかった。心筋炎(4人)、僧帽弁逸脱(3人)、マルファン症候群(2人)、大動脈弁逆流(2人)、および不整脈原性右室心筋症(1人)などの他の異常が発見されたのはわずか12人であった。さらに、4人のアスリートはHCMとアスリートハートの“グレイゾーン”に当たるボーダーラインの左室壁厚(13mm)が認められた。このうち2人は、引き続き行われれた遺伝子解析または平均8年間の臨床上の変化の結果HCMと診断された。 |
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Darapladib を用いたLp-PLA2阻害により、プラークの脆弱性のキーとなる壊死性コアの拡大が予防される [2008-09-22]
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Lp-PLA2 inhibition with darapladib prevented necrotic core expansion, a key determinant of plaque vulnerability |
Darapladibを用いたリポ蛋白関連ホスホリパーゼA2(Lp-PLA2)阻害により、プラークの脆弱性のキーとなる壊死性コアの拡大が予防される、と2008年European Society of Cardiology学会のfeatured presentationで発表された。Lp-PLA2は冠動脈病変の壊死性コア内で豊富に発現し、その酵素活性生成物は炎症および細胞死にかかわりプラークを破裂しやすくしている可能性がある。このスタディにおいては、血管造影により冠動脈疾患が認められた患者330人にdarapladib(経口、1日160mg)またはプラセボを12ヵ月間投与し、冠動脈アテロームの変形能および血漿hs-CRPに対する効果を比較した。その他の治療は両群間で同等であり、12ヵ月後のLDLコレステロールには差がなかった。一方、Lp-PLA2活性はdarapladibにより59%阻害された(p<0.001対placebo)。12ヵ月後、プラーク変形能または血漿hsCRPは両群間で差がなかった(それぞれp=0.22およびp=0.35)。しかし、プラセボ投与群においては壊死性コア量が有意に増加した(4.5±17.9mm3, p=0.009)のに対し、darapladibはこの増加を抑制し(-0.5±13.9mm3, p=0.71)、結果として-5.2mm3の有意差が認められた(p=0.012)。これらの結果から、Lp-PLA2阻害は新たな治療アプローチとなる可能性のあることが示唆された。 |
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SEASスタディ:シンバスタチン/エゼチミブの併用による強力な脂質低下療法は大動脈弁狭窄の進行を抑制しない [2008-09-16] |
SEAS: Intensive lipid-lowering therapy with simvastatin/ezetimibe combination does not affect the progression of aortic valve stenosis |
無症候性の軽度〜中等度大動脈弁狭窄患者においてシンバスタチンとエゼチミブの併用療法による強力なLDLコレステロール低下療法は大動脈弁狭窄の進行を抑制しないが心血管虚血性イベントのリスクは軽減しうる。SEAS:Simvastatin
and Ezetimibe in Aortic Stenosis(大動脈弁狭窄におけるシンバスタチンとエゼチミブ)スタディの結果が2008年European
Society of Cardiology学会で発表され、New England Journal of Medicineに掲載された。軽度〜中等度の大動脈弁狭窄を有し脂質低下療法の適応のない患者1,873人(平均年齢67歳)を、シンバスタチン(1日40mg)とエゼチミブ(1日10mg)の併用にて強力にコレステロールを低下させる群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。複合一次エンドポイントである主要な心血管イベント(LDL低下療法333人対プラセボ355人;ハザード比[HR]0.96;95%信頼区間[CI]0.83〜1.12)または二次エンドポイントである大動脈弁疾患イベント単独(308人対326人;
HR=0.97;95% CI=0.83〜1.14)は二群間で有意差がなかった。この併用療法により動脈硬化イベント単独は軽減した(15.7%対20.1%、p=0.02)。治療群では癌発症率が高かった(11.1%対7.5%、p=0.01)が、これは患者数が少なかったため偶然認められたと考えられる。 |
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FIREトライアル:フィブリン由来のペプチドは炎症を阻害することにより心筋損傷を軽減しSTEMI後の血管機能を保護する可能性がある [2008-09-16] |
FIRE: A fibrin-derived peptide may reduce damage to the heart muscle by inhibiting inflammation and protecting vascular function following STEMI |
フィブリン由来のペプチドFX06は再潅流に成功した急性ST上昇心筋梗塞(STEMI)の心筋壊死を軽減する可能性があるとのFIRE:FX06
In ischemia and Reperfusion(虚血および再潅流に対するFX06)トライアルの結果が、2008年European Society of
Cardiology学会で発表された。FX06を再潅流療法中に患者に静脈内投与し、心筋保護効果が心臓核磁気共鳴画像で評価された。FX06は総梗塞サイズを21%減少させたが、FX06とプラセボの差は統計学的に有意ではなかった(21.68g対27.34g、p=0.21)。しかし、FX06はプラセボと比較しnecrotic
core zoneを58%減少させた(1.77g対4.2g、p=0.019)。4ヵ月後にはFX06とプラセボとで総梗塞サイズ(15.37g対19.32g、p=0.36)およびscar
mass(1.79g対2.84、p=0.16)の有意差はもはや認められなかった。主要な心有害事象もまたFX06群において少なかった。研究者らは、今回の成績はより大規模なトライアルで確認する必要があり、心臓死および心不全の新規発症に関する今後のトライアルの必要性を示唆した。 |
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TIME-CHF:心不全の高齢患者に対する集中治療は有益でない [2008-09-16] |
TIME-CHF: Elderly patients with heart failure do not benefit from intensive medical therapy |
TIME-CHF:Trial of Intensified (BNP-guided)
versus standard(symptom-guided)Medical therapy in Elderly patients with Congestive
Heart Failure(うっ血性心不全の高齢患者に対する集中治療[BNPを指標にする]対標準[症状を指標にする])スタディにおいて、心不全の管理に症状のみでなくナトリウム利尿ペプチドレベルを使用しても死亡およびあらゆる原因による入院を減少させることができなかった、と2008年European
Society of Cardiology学会で発表された。しかし、結果は年代により有意に異なった。収縮能低下による心不全(駆出率<45%)の患者499人をN末端脳型ナトリウム利尿ペプチド(NT-BNP)を指標にする群または症状を指標にする群に無作為に割り付け、75歳以上対60〜74歳の群に層別化した。標準的な治療と比較しNT-BNPを指標とした集中治療は、一次エンドポイントである無入院生存期間を改善しなかった(ハザード比[HR]0.92、p=0.46)が、より疾患特異的なエンドポイントである心不全による入院のない生存期間は改善した(HR=0.66、p=0.008)。若年群においてNT-BNPを指標とした集中治療により全死亡率は低下し(HR=0.38、p=0.01)心不全による入院のない生存期間は改善した(HR=0.41、p=0.002)が、75歳以上の群においてはこれらの変化は認められなかった。これらの結果から、若年患者の結果に基づいた一般的な勧告は後期高齢患者には必ずしも直接当てはめることはできない可能性のあることが示唆された。 |
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EUROPAトライアル:すでにカルシウム拮抗薬を投与されている安定した冠動脈疾患患者にペリンドプリルを追加することは有益である可能性がある [2008-09-16] |
EUROPA: Patients with stable coronary artery disease already receiving a calcium channel blocker may benefit from adding perindopril |
EUROPAトライアルの新たな解析により、安定した冠動脈疾患患者におけるカルシウム拮抗薬(CCB)とペリンドプリルの”相乗効果”が示された。EUROPA:EUropean
trial on Reduction Of cardiac events with Perindopril in stable coronary Artery
disease(安定冠動脈疾患患者におけるペリンドプリルの心イベント減少効果に関するヨーロッパのトライアル)においては17%の患者がスタディ期間中を通してCCBを投与された。1,022人はペリンドプリル群に1,110人はプラセボ群に割り付けられた。つまり、3,095人はプラセボを投与されCCBは投与されず、3,326人はペリンドプリルを投与されCCBは投与されなかった。トライアルの一次エンドポイントを再度見直してみると、心血管死、心筋梗塞、または蘇生された心停止はペリンドプリルとCCBを併用された患者において少なかった。(併用群4.89%対ペリンドプリル単独投与群
6.58%;プラセボとCCB併用群7.45%;プラセボ単独投与群7.98%;全ての比較においてp<0.05)。ペリンドプリルとCCBの併用によりまた、全死亡率が46%(p<0.01)、心血管死亡率が41%(p=0.09)、致死性および非致死性心筋梗塞が28%(p=0.01)、心不全による入院が54%(p=0.25%)減少した。 |
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TRITON-TIMI 38トライアル:急性冠症候群を有する糖尿病患者はprasugrelを投与されることにより心筋梗塞発症が抑制される [2008-09-16] |
TRITON-TIMI 38: Diabetics with acute coronary syndromes are less likely to suffer a myocardial infarction if treated with prasugrel |
TRITON-TIMI 38トライアルのサブグループ解析の結果、急性冠症候群と診断された糖尿病患者は、prasugrelを投与されることにより心筋梗塞を発症する確率がクロピドグレルを投与されたのに対し40%低下した(8.2%対13.2%、p<0.001)ことが示された。さらに、一次エンドポイントである心血管死、非致死性心筋梗塞および非致死性脳卒中はprasugrelで治療された患者においてクロピドグレルで治療された患者よりも30%少なかった(12.2%対17.0%、p<0.001)。この心血管イベントの減少は、糖尿病治療の種類にかかわらず全ての糖尿病患者において同様に認められた(インスリン治療対非インスリン治療、p=0.001)。Prasugrelで治療された糖尿病患者においてはクロピドグレルで治療された患者と比較し、ステント血栓症発現率が有意に低く、相対リスクは48%減少した(3.6%対2.0%、p=0.007)。この結果はミュンヘンで開催された2008年European
Society of Cardiology学会のHot Lineセッションで発表され、同時にCirculation誌に掲載された。 |
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ATHENAスタディ:ATHENAスタディのpost-hoc解析において、dronedaroneは心房細動患者の脳卒中リスクを軽減することが示された [2008-09-16] |
ATHENA: Dronedarone reduced the risk of stroke in patients with atrial fibrillation in post-hoc analysis of ATHENA study |
ATHENA:A Trial with dronedarone to prevent
Hospitalization or dEath in patieNts with Atrial fibrillation/flutter(dronedaroneを用いて心房細動/粗動患者の入院または死亡を予防するスタディ)の新たな解析の結果、dronedaroneは抗血栓薬を含む標準治療で適切に治療されている心房細動または粗動患者において脳卒中のリスクを低下させることが示された、と2008年European
Society of Cardiology学会で発表された。過去のスタディではdronedaroneを標準治療に追加することにより、プラセボを追加するのと比較し、複合一次エンドポイントである心血管疾患による入院またはあらゆる原因による死亡が統計学的に有意に24%減少した(p=0.00000002)ことが示された。今回のスタディでは、75歳以上の患者(心血管リスクファクターの有無にかかわらず)、または心房細動/粗動に加え心血管リスクファクター(高血圧、糖尿病、脳血管イベントの既往、左房サイズ>50mmまたは左室駆出率
<40%)をひとつ以上有する70歳超の患者4,628人をdronedarone 400mgを1日2回またはプラセボ内服群に無作為に割り付けた。このnon-prespecified二次エンドポイントに関する脳卒中post-hoc解析の結果、dronedaroneは脳卒中(虚血性または出血)のリスクをプラセボと比較し34%低下させた(脳卒中イベントそれぞれ46件対70件、p=0.027)。この効果はスタディの早期に認められ、経過観察期間中維持された(12〜30ヵ月)。 |
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BEAUTIFULトライアル:Ivabradineは安定冠動脈疾患および左室機能低下を有する患者の心筋梗塞および血行再建術施行率を減少させる初めての抗狭心症治療薬である [2008-09-09] |
BEAUTIFUL: Ivabradine is first antianginal treatment to reduce myocardial infarction and revascularization in patients with stable coronary disease and left ventricular dysfunction |
BEAUTIFULトライアル:morBidity-mortality EvAlUaTion of the If inhibitor ivabradine in patients with CAD and left ventricULar dysfunction(冠動脈疾患および左室機能不全を有する患者に対するIf電流阻害薬ivabradineの有病率と死亡率に対する効果の評価)の結果、ivabradineを用いて心拍数を低下させることにより、洞調律患者の心筋梗塞、心筋梗塞による左室収縮不全および血行再建術施行率を減少させる、とミュンヘンで開催された2008年European Society of Cardiology学会で発表された。左室駆出率40%未満の安定した患者10,917人を、5mgのivabradine(目標用量の7.5mgを1日2回投与まで増量)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。患者らは心血管系治療薬による至適治療を継続して受けた。スタディの対象全体で一次複合エンドポイント(心血管死、心筋梗塞による入院、心不全の新規発症または増悪による入院の合計)においてivabradineの有効性は認められなかった(p=0.94)。しかし、事前に定義されたサブグループの患者(心拍数70bpm以上)において、ivabradineは致死性および非致死性心筋梗塞による入院を36%(p=0.001)、冠動脈血行再建術施行を30%(p=0.016)減少させた。またこの試験の結果、ivabradineは安全で忍容性が高く、ルーチンに処方される全ての心血管治療薬と併用可能であることも確認された。 |
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SYNTAXトライアル:最も困難な病変の患者に対する薬剤溶出ステントとバイパス手術を比較したトライアルの結果、安全性は同等であったがPCIの有効性に関しては複雑な結果が得られた [2008-09-09] |
SYNTAX: Trial comparing PCI with drug-eluting stent and bypass surgery in the most complex patients reports comparable safety outcomes but mixed efficacy for PCI group |
最も困難な病変の患者に対するパクリタキセル溶出ステントを用いた経皮的冠動脈形成術(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)を比較したSYNTAX(TAXusを用いた経皮的冠動脈形成術とバイパス手術の相乗作用)トライアルの1年間のデータから複雑なメッセージが得られた:安全性は同等であり、PCIに割り付けられた患者の方が脳卒中の合併症発現率が低いが再血行再建術施行率はこれらの患者において高かった。PCIとCABGの直接比較において研究者らは、死亡(4.3%対3.5%、p=0.37)または心筋梗塞(4.8%対3.2%、p=0.11)のリスクに統計学的な有意差がないことを明らかにした。脳卒中のリスクはバイパス手術群で有意に高かった(4.8%対3.2%,、p=0.11)。総合すると、これら3つ(死亡、心筋梗塞、脳卒中)のデータポイントから、左主幹動脈病変および多枝病変を有する患者に対するPCIとバイパス手術の安全性は同等であることが示された。この結果はミュンヘンで開催された2008年European
Society of Cardiology学会のHot Lineセッションで発表され、Lancetオンライン版に掲載された。 |
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GISSI-HFトライアル:ロスバスタチンは原因に関係なく慢性心不全患者の臨床転帰に影響しなかったが魚油単独のサプリメントは有益であった [2008-09-09] |
GISSI-HF: Rosuvastatin did not affect clinical outcomes in patients with chronic heart failure of any cause but a simple fish oil supplement showed benefit |
ロスバスタチンは原因に関係なく慢性心不全患者の臨床転帰に影響しなかった(ロスバスタチンは安全な様であった)が魚油単独のサプリメントは有益であったとのGISSI-HFトライアルの結果が、2008年European
Society of Cardiology学会で発表されLancetオンライン版に掲載された。New York Heart AssociationクラスII〜IVの慢性心不全患者4,574人(平均年齢68±11歳)を、心不全の原因または左室駆出率を問わず、ロスバスタチン1日10mg(2,285人)とプラセボ(2,289人)を比較する二重盲検無作為化トライアルに組み入れた。患者らは中央値で3.9年間追跡調査された。一次エンドポイント(死亡までの期間、または死亡および心血管疾患による入院までの期間の合計)は両群間で差がなかった。同じトライアルの別の群における結果では、魚油単独のサプリメントは心不全患者に有益である可能性が示唆された。n-3多価不飽和脂肪酸(n-3
PUFA、1日1g)の投与を受けた患者においては、死亡および心血管系が原因の入院の相対リスクが8%低下した(p=0.009)。 |
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LEADERSスタディ:生分解性biolimusステントは‘real world’のスタディで冠動脈形成術を施行される患者に対し安全で有効なようである [2008-09-09] |
LEADERS: Biodegradable biolimus stent appears safe and effective in patients undergoing percutaneous coronary intervention in 'real world' study |
この種のスタディでは初めてであるが、外側の表面のみに生分解性ポリマーを適用した薬剤溶出ステント(DES)は、日常臨床と同じ状況下において、最も広く用いられているDESと同様に安全で有効であることが示された、と2008年European
Society of Cardiology学会で発表されLancetオンライン版に掲載された。LEADERS(Limus Eluted from A Durable
versus ERodable Stent coating)スタディでは、1,707人の患者(2,472病変)を生分解性ポリマーを用いたbiolimus溶出ステントまたは耐久性ポリマーを用いたシロリムス溶出ステントを埋め込む群に無作為に割り付けた。9ヵ月後に、biolimus溶出ステント群とシロリムス溶出ステント群の患者のうち一次エンドポイントに到達したのは同じ割合であった(9.2%対10.5%;RR=0.88;95%
信頼区間0.64〜1.19;非劣性p=0.003)。Biolimusおよびシロリムス溶出ステント群の死亡率(2.6%対2.8%;p=0.74)、心臓死(1.6%対2.5%;p=0.22)、心筋梗塞(5.7%対4.6%;p=0.30)、または臨床上適応とされた標的血管血行再建術(4.4%対5.5%;p=0.29[p値は優性に対する値])は同等であった。Biolimus溶出ステントはまた、このスタディの主要な血管造影上のエンドポイントであるステント内内径狭窄率においても非劣性を示した(20.9%対23.3%;p=0.001)。 |
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TRANSCENDトライアル:テルミサルタンはACE阻害薬に忍容性のない患者において軽度の心保護作用を有する [2008-09-09] |
TRANSCEND: Telmisartan has modest cardioprotective effect for patients unable to tolerate ACE inhibitors |
アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)テルミサルタンは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬に忍容性のない心血管疾患のハイリスク患者における心血管死、心筋梗塞(MI)または脳卒中の発現を減少させるが、その効果は軽度であったと報告された。TRANSCENDトライアル:Telmisartan
Randomized Assessment Study in ACE-Intolerant Subjects With Cardiovascular Disease(ACE阻害薬に忍容性のない心血管疾患患者におけるテルミサルタンの無作為化評価スタディ)トライアルが2008年European
Society of Cardiology学会で発表され、Lancetオンライン版に掲載された。一次エンドポイントである心血管死、MI、脳卒中、または心不全による入院は、ARB群とプラセボ群とで同等であった(15.7%対17.0%;p=0.22)。しかし、エンドポイントを心血管死、MIまたは脳卒中(さらに心不全による入院は含まない)とすると、有害事象発現率はテルミサルタン群で低かった(13.0%対14.8%;p=0.048)。この複合エンドポイントの軽減は、主にテルミサルタン群でMI発現率が低いことによりもたらされた(3.9%対5.0%;p=0.06)。このトライアルによりまた、テルミサルタンの糖尿病新規発症(11.0%対12.8%,
p=0.08)、左室肥大(5.0%対7.9%;p<0.001)、およびあらゆる心血管系疾患による入院(30.3%対33%;p=0.025)に対する軽度の有益性も示された。 |
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DECREASE IIIスタディ:フルバスタチンは待機的大血管手術の周術期の循環器系予後を改善する [2008-09-09] |
DECREASE III: Fluvasatatin improves perioperative cardiac outcomes after elective major vascular surgery |
DECREASE IIIスタディ:Dutch Echographic Cardiac Risk Evaluation Applying Stress Echo III(オランダにおけるストレスエコーを用いた心臓リスク評価 III)スタディの結果、フルバスタチン徐放製剤をベータ遮断薬に併用することにより、待機的大血管手術を施行されスタチンを初回投与されたハイリスク患者の周術期の循環器系予後が有意に改善する、と2008年European Society of Cardiology学会で報告された。患者(年齢中央値65.7歳、男性75%、冠動脈疾患の既往39%、脳卒中の既往29%、糖尿病20%)は、徐放性フルバスタチン(1日80mg;250人)またはマッチさせたプラセボ(247人)を術前30日より開始し術後30日以上継続する群に無作為に割り付けられた。フルバスタチン投与によりベースラインの総コレステロールおよびLDLコレステロールがそれぞれ20%と21%減少したのに対し、プラセボではそれぞれ4%および3%の減少であった(両方ともp<0.001)。同様にフルバスタチンは炎症マーカーである高感度C反応性蛋白およびインターロイキン-6をそれぞれ21%および33%減少させたのに対し、プラセボ群では+3%および -4%の変化であった(両方ともp<0.001)。一次エンドポイントである初回血管手術後30日以内の心筋虚血性イベントに達したのは、フルバスタチンを投与された患者において有意に少なかった(心筋虚血と診断されたのはフルバスタチン群で10.9%であったのに対し、プラセボ群では18.9%であった;p=0.016)。 |
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TRITON-TIMI 38スタディの結果、prasugrelはクロピドグレルよりも心血管イベントの再発を減少させる点で有意に優れていることが示された [2008-09-02] |
TRITON-TIMI 38 study showed prasugrel statistically superior to clopidogrel in reducing recurrent cardiovascular events |
TRITON-TIMI 38スタディの新たなpre-specified解析の結果、prasugrelを内服している患者はクロピドグレルを内服している患者と比較し、初回イベント後の再発性心筋梗塞、脳卒中、または心血管死を発現する確率が35%低い(10.8%対15.4%;P=0.016)ことが示された、とEuropean Heart Journalのspecial advance accessオンライン版に掲載された。Prasugrelを内服している患者においてはイベント再発が58件であったのに対し、クロピドグレル群では115件であった。心筋梗塞後治療中の患者の心血管死リスクは、クロピドグレルと比較しprasugrelで有意に減少した(それぞれ7.1%対3.7%)。Prasugrelの投与を受けている糖尿病患者においてはイベント続発のリスクが60%減少した(P=0.003)。年齢、性別、喫煙および他の健康状態などの可変因子で補正した後もprasugrelを内服している患者はイベントの再発が34%減少し、統計学的に有意であった(P=0.024)。Prasugrel内服患者におけるイベント再発減少はトライアル期間中(15ヵ月)持続した。 |
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トレッドミル運動療法は脳卒中既往者の脳神経回路を配線し直し再構成し、平衡感覚および運動技術を改善する [2008-09-02] |
Treadmill exercise therapy rewires brain, improving balance and motor skills for stroke survivors |
トレッドミル運動は、脳卒中既往者のバランスや運動技術を調整する脳神経回路を配線し直し再構成し、卒中による損傷を代償することにより歩行能力を回復させる可能性があるとAmerican Heart Association rapid access journal reportで報告された。研究者らは、「運動量を徐々に増加させる反復トレッドミル療法」を行った患者37人とストレッチを行った患者34人を、慢性部分片麻痺を有する脳卒中既往者に対してどちらの方法が歩行能力を改善できるかを判定するために比較した。トレッドミル群はピークのトレッドミル歩行速度が51%増加したのに対しストレッチ群では11%であり、6分間グラウンド歩行速度の平均がトレッドミル群では19%増加したのに対しストレッチ群では8%であった。対象者らの脳の機能的磁気共鳴画像検査の結果、トレッドミル群の脳幹および小脳の血液酸素化および血流は72%増加していたが、ストレッチ群の脳ではこれらの変化が認められなかった。研究者らは、小脳および脳幹が脳卒中により損傷を受けた脳皮質の歩行機能の一部に取って代わるために「新たに取り込まれた」のであろうと考えている。 |
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