無症候性虚血により心筋梗塞を起こした患者の長期心臓リスクを軽減するには至適薬物療法よりも血管形成術の方が有効である [2007-05-22]

Angioplasty is more effective than optimal drug therapy in reducing long-term cardiac risk among survivors of myocardial infarction with silent ischemia
無症候性虚血により心筋梗塞を起こした患者の長期心臓リスクを軽減するには至適薬物療法よりも血管形成術の方が有効である、とJournal of the American Medical Association 5月9日号に掲載された。スイスの研究者らは、ストレス画像検査で無症候性虚血が確認され、1または2枝病変を有する患者201人を非盲検コントロールトライアルに組み入れた。96人の患者は血管形成術を施行され、105人は強力な薬物療法を受けた。全ての患者はアスピリンとスタチンを内服した。その結果、血管形成術群の患者においては平均10.2年の追跡期間中に、心臓に関する重大な有害事象が27件発生したのに対し、薬物療法患者においては67件発生し、血管形成術による実質的なイベント軽減率は年間6.3%であった。最終の追跡調査時の有虚血率は血管形成術施行群で11.6%、薬物療法群で28.9%であった。血管形成術による有益性は2年経過するまでは認められなかったが、リスクの差はその後追跡期間終了まで毎年増大し続けた。

スタチン療法開始後1ヵ月でコレステロールレベルが改善した患者は、虚血性脳卒中および心筋梗塞のリスクが軽減する [2007-05-22]

Patients whose cholesterol level improves after one month of statin therapy reduce their risk for both ischemic stroke and myocardial infarction
虚血性脳血管イベント発症後間もない患者で、スタチン療法開始後1ヵ月でコレステロールレベルが改善した患者は、脳卒中および心筋梗塞のリスクが軽減する、とAmerican Academy of Neurology学会で発表された。強力なコレステロール低下療法による脳卒中予防(Stroke Prevention by Aggressive Reduction in Cholesterol Levels :SPARCL)トライアルにおいて、発症後1〜6ヵ月以内の虚血性脳卒中または心疾患の既往のない一過性脳虚血発作のフランス人患者4,731人をアトロバスタチンまたはプラセボ投与群に無作為に割り付けた。その結果、低密度(LDL)コレステロールが10%低下するごとに、脳卒中のリスクは4%ずつ、心筋梗塞のリスクは7%ずつ低下した(平均追跡期間4.5年)。スタチン療法群における1ヵ月後の平均LDLコレステロール低下率は53%であった。ベースライン時点および1ヵ月後に高密度コレステロールレベルの高い者は、それが低い者よりも脳卒中のリスクは低かった。

入院時のBタイプナトリウム利尿ペプチドレベルは心不全患者の入院中死亡率と直接相関がある [2007-05-15]

Level of B-type natriuretic peptide at admission correlates directly with likelihood of in-hospital mortality for patients with heart failure
入院24時間以内に採血した心不全患者のBタイプナトリウム利尿ペプチド(BNP)血中レベルは入院中の死亡リスクと直接相関がある、とJournal of the American College of Cardiology 5月15日号に掲載された。研究者らは、米国急性非代償性心不全(Acute Decompensated Heart Failure :ADHERE)登録に組み込まれた患者77,467人中48,629人のデータを解析した。BNPレベルが430pg/mL未満の場合の死亡率は1.9%、430〜839pg/mlでは2.8%、840〜1,729pg/mLでは3.8%、1,730pg/mL以上では6%であった。この予測能力は、年齢、性別、収縮期血圧、脈拍およびクレアチニンなど他の生物学的指標で補正してもなお認められた。この相関関係はまた左室機能に関係なく認められた。筆者らは、BNPの結果を迅速に得られるという点も治療方針を決定する因子となったに違いない、と述べている。

高用量のスタチン療法は急性冠症候群患者に有益であるが、安定狭心症の患者においてはさらなる実質的な利益は得られない可能性がある [2007-05-15]

Although high-dose statin therapy is beneficial for patients with acute coronary syndrome there may not be added net benefit for patients with stable symptoms
急性冠症候群発症後間もない患者においては高用量のスタチン療法によりさらに効果が得られるが、安定狭心症患者においてはさらなる実質的な利益は得られない可能性がある、とCirculation 5月8日号に掲載された。既存のトライアルの解析において研究者らは、急性冠症候群患者の蓄積データと安定狭心症患者のデータを分別した。複合エンドポイントを個々のエンドポイントに分け、予後をスタチンの用量別に解析した結果、高用量スタチン療法は急性冠症候群患者においては死亡率を低下させたが安定狭心症においては低下させなかった。後者の患者群(安定狭心症)においては脳卒中および再発性心筋梗塞の減少が認められたのみであった。高用量スタチン療法は忍容性がよくないことから筆者らは、安定狭心症患者に対して方針を決定する際には、患者が高用量療法では耐え難い副作用があるのであれば通常量を希望したいのかどうかなど、より個別化した治療法を選択すべきであろうと述べている。

最新のガイドラインに基づき治療された急性冠疾患患者は、ほんの2、3年前に治療された患者よりも予後が良好である[2007-05-08]

Patients with acute coronary events whose care is based on current guidelines have better outcomes than patients treated as recently as a few years ago
最新のガイドラインに基づき治療された急性冠疾患患者は、ほんの2、3年前に治療された患者よりも生存率が高く心不全発症率が低い、とJournal of the American Medical Association 5月3日号に掲載された。Global Registry of Acute Coronary Events (GRACE)は14ヵ国の患者44,372人のデータを収集した。患者は全てST上昇心筋梗塞または急性冠症候群患者であった。冠動脈造影および冠動脈形成術施行とともに心保護薬の使用が増加したため、入院中および退院後6ヵ月以内の死亡率は有意に低下し、また入院後6ヵ月以内の心不全、肺水腫、および卒中のリスクも有意に低下した。筆者らはまた、患者の生活習慣(喫煙、不十分な食生活、過剰体重および肥満、そして定期的な運動の不足)の修正を積極的に援助するよう医師らに呼びかけている。

偏頭痛を有する男性は心筋梗塞を含む重大な心血管疾患イベントのリスクが高い可能性がある [2007-05-08]

Men who have migraine headaches may be at increased risk for major cardiovascular disease events including myocardial infarction
偏頭痛を有する男性は重大な心血管疾患イベントのリスクが高い可能性がある、とArchives of Internal Medicine 4月23日号に掲載された。研究者らはベースライン時40〜84歳の心疾患歴のない男性20,084人のデータを解析した。追跡開始後5年以内に1回以上の偏頭痛発作があった男性は偏頭痛陽性と分類された:1,449人(7.2%)が偏頭痛陽性であり、そのうち434人はこの期間内に4回以上の発作を経験した。平均15.7年間の追跡期間中に虚血性脳卒中750件、心筋梗塞1,046件および虚血性心血管疾患死866件を含む2,236件の重大な心血管疾患イベントが発症し、それに加え、血行再建術2,257件および狭心症2,625件が認められた。重大な心血管疾患の年間発症率は、偏頭痛のない男性においては10,000人当り8.5件であったのに対し、偏頭痛のある男性においては10.4件であった。このリスク上昇は主な心血管リスクファクターで補正してもなお認められた。

イブプロフェンは心血管疾患の高リスク患者において低用量アスピリンの有益性を妨げるようである [2007-05-01]

Ibuprofen appears to interfere with the beneficial effects of low-dose aspirin in patients at high risk for cardiovascular disease
非ステロイド抗炎症薬であるイブプロフェンは低用量アスピリンの有益性を妨げるようであり、変形性関節症を合併する心血管疾患の高リスク患者において心筋梗塞のリスクを有意に上昇させる、とAnnals of the Rheumatic Diseasesオンライン版 4月5日号に掲載された。TARGET-HRトライアルは、高用量のCox-2阻害薬lumiracoxibまたは非選択的Cox阻害薬であるイブプロフェンまたはナプロキセンのいずれかを内服している50歳以上の変形性関節症患者18,523人を組み入れた。心血管疾患の高リスクで低用量アスピリンを内服していない患者における心筋梗塞発症率はlumiracoxib群においてナプロキセン群よりも高かったが、イブプロフェン群とはおおよそ同等であった。しかし、低用量アスピリンを内服していた高リスク患者においては、イブプロフェン内服によりlumiracoxibまたはナプロキセンよりも心血管イベント発症率が9倍上昇した。

新たなガイドラインによると、ほとんどの心疾患患者において歯科治療実施前に感染性心内膜炎の予防的抗生物質投与は必要ないことが示唆された [2007-05-01]

New guidelines suggest that most patients with heart disease do not need antibiotic prophylaxis for infective endocarditis before undergoing dental procedures
Circulation 4月19日号に掲載されたAmerican Heart Associationのガイドラインによると、ほとんどの心疾患患者は歯科治療実施前の予防的抗生物質投与は必要ないとのことである。感染性心内膜炎予防ガイドラインでは、心内膜炎のリスク、発症した場合の不良な予後、および抗生物質治療に伴うリスクについて評価している。今回のガイドラインでは、予防的投与は人工弁または一部の先天性心疾患、弁膜症を有する被移植者、先天性中隔欠損症修復のための人工パッチ術を過去6ヵ月以内に受けた者、および感染性心内膜炎の既往のある者を含む心内膜炎の予後が最も不良な患者のみに推奨されている。僧帽弁逸脱、リウマチ性心疾患、二尖弁、石灰化大動脈弁狭窄症、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、および肥大型心筋症には、もはや予防的投与は必要ないことになっている。
 
 
 

DOLについて - 利用規約 -  会員規約 - 著作権 - サイトポリシー - 免責条項 - お問い合わせ
Copyright 2000-2025 by HESCO International, Ltd.