前立腺生検の際の疼痛は前立腺内の生検部位と関連している、とNorth Central Section of the American Urological
Association年次総会で発表された。米国の研究者らは大規模なメディカルセンターで前立腺生検を施行された243人の男性について評価検討を行った。患者は前立腺基部と精嚢の間に局所麻酔を注入された群、前立腺基部から尖部に向けて注入された群、前立腺尖部とその周辺の直腸壁組織に注入された群に無作為割り付けされた。およそ16%の患者は中等度以上の疼痛を感じ、また経直腸的に超音波プローブを挿入されるよりもリドカインの注入が疼痛の原因になっていることが多かった。前立腺尖部での生検は前立腺基部での生検と比較してより痛みを伴うものであった。年齢、BMI(body
mass index)、家族歴、悪性腫瘍の存在、炎症、触知可能な腫瘤の存在、および前立腺の大きさによる疼痛の予測は不可能であった。発表者らは、より大規模なスタディが行なわれるまでは前立腺生検時の疼痛対策の一部として前立腺尖部とその周辺の直腸壁組織へ麻酔剤を直接注入することを推奨している。
消化管間質腫瘍において、ある特定の遺伝子変異の下ではイマチニブに対する反応性が低く、一方、同じ遺伝子に別の変異があった場合には反応性の高いことが予測できる、とAmerican
Association for Cancer Researchでの Molecular Diagnostics in Cancer Therapeutic
Developmentに関する最初のミーティングで発表された。全体の80%以上の患者はチロシンキナーゼ受容体をエンコードするc-kit遺伝子に変異をもっている。このうちおよそ3分の2の患者はエクソン11に変異があり、イマチニブに対して最も長期的に反応する。しかし全体の10〜15%を占めるエクソン9に変異をもつ腫瘍はイマチニブに対して同様な反応は示さず、全く変異のない腫瘍ではイマチニブに対する反応性が最も低い。後者2つのグループに属する患者ではsunitinib投与によってより長期の生存が認められる。米国で行われたこのスタディでは、74人の患者から得られた腫瘍の1次変異および2次変異についても検討されている。将来的にはc-kit遺伝子に対する遺伝子アッセイの結果が投与薬決定の指標となる可能性がある。
セレコキシブ400mgの連日投与は大腸腺腫切除後3年の再発リスクを有意に減少する、とNew England Journal of Medicine 8月31日号に掲載された。Prevention
of Spontaneous Adenomatous Polyps (PreSAP)スタディは32ヵ国、1,550人以上の患者を対象とした。大腸内視鏡検査は腺腫切除後1年および3年の時点で施行された。ポリープは全て切除され、病理医によって組織検査が行われた。腺腫の累積発生率はセレコキシブ群で33.6%、プラセボ群で49.3%であった(36%減少)。セレコキシブ投与は、大きいサイズの腺腫発生を50%減少させることに関連していた。セレコキシブによる心血管リスクの有意な増加は認められなかった。一方、3年間にわたるAdenoma
Prevention with Celecoxib スタディでは、セレコキシブの200mgまたは400mg1日2回投与が調査され、セレコキシブ使用による心血管リスクの有意な増加が認められた。
MRI検査は乳がんの乳管浸潤の有無、程度の決定に関して多列検出器型CT検査より優れており、乳房温存療法の前に施行されるべきである、とAmerican
Journal of Roentgenology 8月号に掲載された。日本の研究者らは、既に乳管内浸潤が判明している44腫瘍を含む69人の浸潤がん患者について評価検討を行った。MRI検査では、44例中33例の腫瘍(75%)で正しく乳管内浸潤を同定したのに対し、CT検査では44例中27例(61%)で乳管内浸潤を同定した。どちらの検査も腫瘍細胞の外側への進展や比較的小さな乳管内浸潤に関しては過小評価する傾向にあったが、MRI検査ではより小さな乳管内浸潤を検出することが可能であった。この施設では切除範囲を画像診断上の腫瘍縁より20mm離しており、MRI検査を施行することで切除断端における腫瘍細胞陰性率の改善が認められた。
小児がんの成人生存者のうち8人に1人以上が、治療後数年あるいは数十年のうちに自殺のリスクがある、とJournal of Clinical Oncology
8月20日号に掲載された。研究者らは診断後平均18年経過している226人の成人(男性100人、女性126人、平均年齢28歳)を調査した。原発性の脳腫瘍の患者は除外された。自殺徴候があると報告された29人のうち19人は自殺を考えただけであるが、1人は過去に自殺企図があり、残りの9人は過去に自殺企図がありさらに現在も引き続いて自殺を考えていた。この29人の中で評価スケールによって有意な抑うつ状態が考慮されたのはわずか11人であり、このことから、自殺のリスクのある患者を同定するためには抑うつについてもっと質問する必要のあることが示唆される。さらに自殺徴候を示しやすい因子には、より若年時での発症/より長期にわたる治療、頭部への放射線療法、抑うつ感情、疼痛、身体活動の制限、外見上の心配事が含まれていた。
待機療法のよい候補あるいは治療なしの監視下にある低リスク前立腺がん患者の半数以上は、外科的手術や放射線療法を受けている、とJournal of the
National Cancer Institute 8月16日号に掲載された。早期前立腺がんの米国人男性64,112例のデータを解析した結果、24,835例が低リスクの腫瘍であった。これらのうち55%の患者が初期に外科的手術あるいは放射線療法を受けていた。55歳未満の患者は待機療法よりも外科的手術を施行される傾向にあり、一方、70〜74歳の患者では待機療法よりも放射線治療を受ける傾向にあった。2000〜2002年の間に13,000人以上の低リスク患者が診断後最初の数ヵ月以内に治療を受けていた。このうち70歳超で中等度の患者に、最初の診断後1年以内に初期治療を受けている傾向が最もみられるが、治療のリスクと有益性について個別によく検討されていれば、これらの初期治療は選択されなかった可能性がある。
アンドロゲン抑制療法終了時のPSA値は進行前立腺がん患者の生存率を予測する、とJournal of Clinical Oncology 8月20日号に掲載された。米国で行われたこの研究では、新規の転移性腫瘍を有する1,345人の患者を対象に7ヵ月間のアンドロゲン抑制療法による初期治療を行った。PSA値は、治療期間を通して測定された。治療終了時点で69%の患者のPSA値が4.0ng/mL未満であり、そのうち43%は測定感度以下の値であった。治療終了時点でPSA値が4.0ng/mLより高値を呈した患者の平均生存期間は13ヵ月であったのに対し、0.2〜4.0ng/mLの患者では44ヵ月、0.2ng/mL未満の患者では75ヵ月であった。この研究では、ベースラインでのPSA値が少なくとも5.0ng/mL以上の患者を対象とした。