ピオグリタゾンと動脈硬化
  怒りと不整脈
  小児の動脈硬化
  オンポンプ対オフポンプバイパス手術
  頸動脈ステント術の成績

 11月21日・28日のDOL NewsはAHA特集のため、こちらをご覧下さい。


頸動脈壁厚計測の結果、ピオグリタゾンは糖尿病患者の動脈硬化伸展を抑制する可能性がある [2006-11-14]

Measurement of carotid artery wall thickness over time suggests that pioglitazone may slow progression of atherosclerosis in patients with diabetes
AHA Late Breaking Clinical Trialの発表によると、ピオグリタゾンはインスリン抵抗性を改善する上に動脈硬化の伸展を抑制する可能性がある。研究者らは米国の成人462人(平均年齢60歳)をピオグリタゾンと、別の作用機序をもつ糖尿病治療薬グリメピリドに無作為に割り付けた。登録時と24、48、72週目に頸動脈の内膜中膜壁厚が計測された。ベースライン時の平均壁厚は両群間で同等であった(0.771mm対0.779mm)。72週目に、グリメピリド群でベースライン時より平均で0.012mmの壁厚増加がみられたのに対し、ピオグリタゾンの壁厚は0.001mm減少した。この研究を通して、両群間に血圧の有意差はなかった。HbA1cのレベルは48週目までは両群で同じであったが、ピオグリタゾン群で有意に低下していった。HDLコレステロールのレベルは、24週までにピオグリタゾン群で増加を示し、研究の間、維持された。

植込み型除細動器から得られたデータによると、激しい怒りは心室性不整脈を起こしやすい人のリスクを上昇させる可能性のあることが示唆された [2006-11-14]

Data from implantable cardioverter-defibrillators suggest acute anger may increase risk in susceptible people for development of ventricular arrhythmias
激しい怒りは心室性不整脈を起こしやすい人に不整脈を誘発する可能性がある、とAmerican Heart Association 学会で発表された。研究者らは除細動器を植え込まれている米国成人1,188人を2年間のスタディに組み入れた。解析は、イベントに対する質問とデバイスが通電を施行する前の気分に対する質問への回答および心電図データの読影をもとに行われた。271のイベントのうち199が心室細動または心室性頻拍に対し通電されたものであった。研究者らは、患者が中等度以上の怒りを感じた時には怒りのない時と比較し心室性不整脈が3.2倍発生しやすいとの結果を得た。通電前に非常に怒りを感じたり猛烈に怒ったと報告した人々は心室性不整脈に対し通電されるリスクが約16.7倍高かった。

複数の国際スタディから、肥満や高血圧のような動脈硬化のリスクを有する小児は既にプラーク沈着の兆候を示していることが示された [2006-11-14]

Multiple international studies show that children with risk factors for atherosclerosis such as obesity and hypertension already show signs of plaque deposition
高血圧、肥満、糖尿病、高コレステロールレベルなどの心血管リスクファクターを有する小児は動脈のプラーク形成の兆候を有するようである、とAmerican Heart Association学会で発表された。研究者らは、米国、ヨーロッパ、およびオーストラリアで施行されたスタディで5〜18歳の子供計3,630人を評価した。彼らのうち一部は心血管リスクファクターを有し、その他は有していなかった。頸動脈壁厚を評価した15のスタディのうち12のスタディがリスクファクターを有する子供において壁厚が大であることを示した。Fflow-mediated arterial dilation検査(血管内皮機能検査)を施行した8つのスタディ全てにおいて、リスクファクターを有する子供の動脈内皮機能が低下していることが示された。その他の3つの超音波スタディでは、リスクファクターを有する子供は頸動脈壁スティフネスが高い傾向にあることが示された。筆者らは、循環器医は患者へのカウンセリングから家族へのカウンセリングへと進めていくよう提案している。

新しい解析の結果、オフポンプ冠動脈バイパス手術は心房細動および脳卒中の発症率を低下させる可能性のあることが示された [2006-11-07]

New analysis indicates that off-pump coronary artery bypass graft surgery may decrease incidence of atrial fibrillation and stroke
オフポンプ冠動脈バイパス手術はオンポンプバイパス術よりも心房細動、脳卒中、および周術期の感染症の発症率を低下させる可能性がある、とStroke 11月号に掲載された。1999年以降に施行されたこの41のトライアル(患者3,996人)の解析は、オフポンプ手術の有益性を初めて書面化したものである。リスク軽減率は脳卒中で50%、心房細動で30%、創部の感染で48%であった。オフポンプ手術は平均グラフト数が少なく、それによりオンポンプ手術と比較し再血行再建術施行のリスクが増加する。しかし、グラフト数に基づく成績の違いは手術数の多い病院においては小さかったことから、多くの手術を熟練した外科医が行なう場合にオフポンプバイパス手術の恩恵をより受けることができることが示唆される。

BEACHトライアルの結果、手術のリスクの高い患者は頸動脈ステント術を受けることが可能であり、この方法は脳卒中のリスクが低く長期にわたり有効なことが示唆された [2006-11-07]

BEACH Trial suggests that patients at high risk for surgery can receive carotid artery stents with low risk for stroke and with long-term efficacy
BEACHトライアルの2年間のデータから頸動脈内膜切除術のリスクの高い患者は頸動脈ステント術を受けることが可能であり、この方法は脳卒中のリスクが低く長期にわたり有効なことが示唆された、とTranscatheter Cardiovascular Therapeutics symposiumで発表された。この単独評価目的のトライアルでは、手術のリスクの高い患者480人に塞栓予防装置を用いてステントを留置した。その結果、頸動脈治療側の脳卒中発症率は30日までで3.1%、31日目から1年後までで2.3%、1年後から2年後(これまでのフォローアップ期間で最長)までで0.9%と安定して低下した。このBEACHスタディでは死亡率においても1年間で7.5%であったのを1年後から2年後は6.1%に低下させた。さらに、超音波による頸動脈血流速度モニタリングでは6ヵ月後から2年後までの間に再狭窄の発症は認めなかった。
 
 
 

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