AHA 2006特集


抗凝固療法の新たな選択
心筋梗塞後時間が経過してからの血行再建術の価値
関節炎に対する非ステロイド抗炎症薬の比較
高齢者の薬物コンプライアンスの改善
冠動脈疾患と睡眠時無呼吸
心臓弁に関する組織工学の画期的出来事

 
11月28日のAHA Late-breaking clinical trial特集はこちらをご覧ください。

新たな抗凝固薬REG1とそれに特異的な解毒剤の安全性が人に対する初めての試験で確認された [2006-11-21]

Novel anticoagulant REG1 and its specific antidote are found to be safe in first human trial
新たな抗凝固薬REG1とその解毒剤の安全性が人に対する初めての試験で確認された、とAmerican Heart Association meeting学会のSpecial Clinical Trialsセッションで発表された。一本鎖核酸であるこの凝固薬は、第IXa因子に結合し凝固を阻害する。解毒剤はその形状を変化させ阻害作用を停止させる。今回のスタディでは、解毒剤の安全性を確認するために、健康な米国人85人(平均年齢32歳、女性34%)にまず解毒剤またはプラセボが投与された。その後彼らは3つの用量の抗凝固薬のうちいずれかを内服する群に無作為に割り付けられ、内服3時間後に解毒剤を服用した。最後に彼らは実薬またはプラセボを内服した。その結果、群間で出血の差はなく、補体の活性に関連した副作用は認めず、自己抗体の出現もみられなかった。この抗凝固薬の効果は、用量依存性であり解毒剤注射後1〜5分で消失する。新たなトライアルでは、アスピリン、クロピドグレルまたはその両者を内服し、安定している冠動脈疾患患者を組み入れている。

OATトライアルの結果、心筋梗塞後3日以上経過してから施行したステント留置血行再建術は薬物療法のみと比較しもはや有効性は差がないことが示された [2006-11-21]

OAT Trial shows that angioplasty with stenting delayed by three days or more after a myocardial infarction is no more effective then medical therapy alone
心筋梗塞後安定している患者に対してステント留置血行再建術を時間が経過してから施行しても、もはや薬物療法のみと比較し有効性は変わらない、とAmerican Heart Association学会Late-Breaking Clinical Trialsセッションで発表された。この閉塞動脈トライアル(Occluded Artery Trial:OAT)では、2,166人の患者を通常のステント留置を行う血行再建術と薬物療法の併用、または薬物療法のみの群に無作為に割り付けた。血行再建術は心筋梗塞発症から3〜28日後に治療方針決定後1日以内に施行された。ほとんどの患者が1枝の閉塞を認めるのみであった。最初の5年のエンドポイントは総死亡、再梗塞、または重症心不全による入院の合計であった。その結果、平均3年最長5年間で両群間に差は認められなかった。研究者らは、国際的には一貫して4年後に血行再建術後のイベントがより多く発生する傾向にある(17.2%対15.6%)ことから、これらの集団における長期予後を示すにはさらに長期のフォローアップと今後のトライアルが必要であろうと述べている。

MEDALトライアルの結果、etoricoxibとジクロフェナクを関節炎の疼痛に使用した場合の血栓性心血管イベント発生率は同等であることが示された [2006-11-21]

MEDAL Trial finds comparable rates of thrombotic cardiovascular events for etoricoxib and diclofenac when used for arthritis-related pain
選択的COX-2阻害薬etoricoxibと非選択的薬剤ジクロフェナクの血栓イベント発生率は同等である、とAmerican Heart Association学会Late-Breaking Clinical Trialsセッションで発表された。この国際MEDALトライアルでは50歳以上の関節炎患者34,701人を、1日にetoricoxib 60 mgまたは90mg、あるいはジクロフェナク 150mgを内服する群に無作為に割り付けた。一次エンドポイント(全ての血栓性心血管イベント)はetoricoxibで患者100人当たり1.24でありジクロフェナクで患者100人当たり1.30であった(平均追跡期間18ヵ月)。うっ血性心不全はまれではあったがetoricoxib 90mg群においてより多く、浮腫による中止もこの群においてより多かった。 etoricoxib両用量群ともにジクロフェナクよりも高血圧による中止率が高かった。研究者らは、個々の治療において有効な最低用量を使用し可能な限り治療期間を短縮するよう呼びかけている。

FAMEトライアルの結果、特定のサポートにより複雑な薬物投与方法に対する高齢患者のコンプライアンスが改善することが示された [2006-11-21]

FAME Trial shows that specific supports can help elderly patients significantly improve compliance with complicated medication regimens
FAMEトライアルの結果、ブリスターパック包装や教育のための薬剤師を取り入れるなどの高齢者に対する特定のサポートにより、複雑な薬物投与方法に対する高齢患者のコンプライアンスが改善することが示された、とAmerican Heart Association学会Late-Breaking Clinical Trialsセッションで発表された。研究者らは、1日4剤以上(平均9剤)内服する米国患者200人(平均年齢78歳)をスタディに組み入れた。薬剤師のサポートにより内服時間ごとに薬剤を包装することにより6ヵ月後のコンプライアンス率は61%から97%にまで改善した。収縮期血圧やLDLコレステロールなどの値はコンプライアンスの改善に伴い改善した。Phase IIでは患者を通常の方法(それぞれの薬剤が各々の瓶に入れて供給される)またはサポート継続に割り付けた。サポートを継続した患者においてはさらに血圧が改善したが、通常の方法の患者は以前の血圧に戻り、コンプライアンスも69%とほぼ以前の状態になった。

冠動脈疾患と睡眠時無呼吸を合併している患者においては心室性期外収縮が有意に多い [2006-11-21]

Premature ventricular contractions are common in the significant proportion of patients with coronary heart disease who also have sleep apnea
冠動脈疾患と睡眠時無呼吸を合併している患者においては心室性期外収縮が有意に多い、とAmerican Heart Association学会で発表された。米国の研究者らは睡眠障害を診断されたことのない冠動脈疾患患者134人を評価した。心室性期外収縮を有する患者においては40%以上が睡眠時無呼吸を有することが明らかとなった。この不整脈は、脳が低灌流となる急速眼球運動(REM)睡眠中に最も多く認められた。この研究は、不整脈で突然死した睡眠時無呼吸の患者が睡眠中に死亡する傾向にあり、覚醒後数時間の間に最も突然死の多い心疾患患者と異なることに気付いたのがきっかけであった。睡眠時無呼吸は診断率が低いが、家庭で治療できる。

研究者らはウサギの生体内への自己心臓弁作成を始めて達成した [2006-11-21]

Researchers achieve a first with creation of an autologous heart valve in the living bodies of rabbits
今や動物の体内に弁の形をした組織の生育を促すことが可能である、とAmerican Heart Association学会にて発表された。ウサギの背部皮下組織内に埋め込んだ小さい穴のあいたプラスティックの鋳型10個中、3匹のウサギに埋め込まれた5個の鋳型において弁の形をした組織が生育した。この組織は鋳型から取り除くことができ、テストチューブフロー検査で首尾よく機能した。日本人のチームにより行われる次の研究では、この弁が自己弁による血流の圧力に変性せずに耐えられるかどうかを調査する予定である。生理的範囲内で機能する弁が開発できれば技術革新により動物に対する拒絶反応が取り除かれ、また成長過程にある小児用にサイズ別の弁が作成されるであろう。



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