健常な閉経後女性においてエストロゲン療法は心筋梗塞や冠動脈疾患死のリスクは軽減しないようであるが、比較的若年の女性においては冠動脈疾患のリスクを軽減する可能性がある、とArchives
of Internal Medicine 2月13日号に掲載された。Women’s Health Initiativeは50〜79歳の女性10,739人に対しエストロゲンとプラセボの効果を調査した。このトライアルは、エストロゲンが脳卒中のリスクを増大すると思われたため、途中で終了となった。対象のうち最も若年群(ベースラインで50〜59歳)1,396人のデータを用いた今回の解析によると、エストロゲン投与により心筋梗塞または冠動脈疾患死の有意な軽減効果は認められなかった。しかし、血行再建術施行頻度はエストロゲン投与群において有意に低く、また心筋梗塞、冠動脈疾患死、および血行再建術を含めた複合エンドポイント到達率もエストロゲン投与群において低かった。この結果は、医師や閉経後若年女性が考慮すべき新たな情報となる。
心血管疾患を有する男性は血糖レベルが正常範囲内であっても死亡のリスクが有意に高い可能性がある、とAmerican
Journal of Epidemiology 2月15日号に掲載された。研究者らは、フラミンガム研究における心血管疾患を有し血糖レベルの正常な(100mg/dL以下)男性のデータを解析した。他の因子で補正した結果、血糖レベルと死亡率に相関が認められた。血糖レベルが70mg/dLの者の追跡期間中の死亡率は2年間で4%であったのに対し、血糖が正常範囲内の最上値レベルである100mg/dLの者のそれは12%であった。血糖レベルが100mg/dLより高い群においてリスクはさらに上昇することはなかった。正常範囲内の血糖を下げることにより死亡率が低下するかどうかを調査した臨床研究は今までにない。この研究チームは現在、心血管疾患のない男性において血糖レベルと死亡率に相関があるか否かを解析中である。
Rimonabantによる減量および心臓代謝危険因子の改善は内服開始後少なくとも2年間は持続する、とJournal
of the American Medical Association 2月15日号に掲載された。米国の二重盲検試験では、高血圧または高脂血症を有する過剰体重または肥満の成人3,045人を対象とした。患者はプラセボまたは5mgか20mgのrimonabantを1年間内服する群に無作為に割付けられた。Rimonabant群の患者は2年目にはプラセボまたは同量のrimonabantを内服する群に無作為に割り付けられた。プラセボ群の患者は2年目もプラセボを内服した。1年目の体重減少度はrimonabant群においてプラセボ群よりも有意に大であり、5%以上の体重減少は実薬5mg内服群の26.1%、20mg内服群の48.6%に認められた(プラセボ群のその割合は20%)。Rimonabantのより高用量の内服でより大きな改善が認められ、20mgのrimonabantを内服した群の効果は2年目にも引き続き持続した。一方、プラセボ内服に変更した患者の体重は増加した。対象者は全員食餌療法および運動療法を受けていた。
女性の虚血症候群の評価(Women’s Ischemia
Syndrome Evaluation :WISE)スタディのデータから、女性の虚血性疾患はしばしば重篤な状態になるまで診断がつかないことが示唆された、
とAmerican College of Cardiology 2月7日号のサプリメントに掲載された。筆者らは女性に特徴的な微慢性の動脈硬化はしばしばカテーテル検査では明らかとならないことを指摘した。むしろ、動脈内皮細胞の機能障害や冠動脈微小循環は、核医学技術により診断率がより良好のようである。リスクの高い女性を検出するには、閉経に関連したホルモン変化やメタボリックシンドロームのような因子が特に重要な可能性がある。性差を考慮した診断法および予測法(高感度CRPモニターなどが含まれる可能性がある)が引き続き評価されるであろう。
トライアルの早期結果によると、パクリタキセル溶出血管形成バルーンは下肢動脈疾患の再狭窄率を低下させることが示された、と第18回
Annual International Symposium on Endovascular Therapyにおいて発表された。このドイツのスタディでは150人の患者を薬物溶出バルーン血管形成術、従来の(薬物を塗布しない)バルーン血管形成術、および造影剤にパクリタキセルを混入させた従来の血管形成術の3群のいずれかに無作為に割り付けた。薬物溶出バルーン群の20人と従来のバルーン血管形成術群の25人の6ヵ月後のフォローアップデータを得ることができた。その結果、6ヵ月後の時点では薬物溶出バルーンは従来のバルーンと比較し再狭窄予防効果が高かった。全ての患者の追跡期間終了(2年間)時点で薬物溶出バルーンの有効性が確認されれば、冠動脈よりもはるかに再狭窄率の高い末梢動脈疾患の血管形成術において大きな進歩となることであろう。
冠動脈バイパス術中の大動脈の損傷を最小にすることで術後の認知機能障害の問題を有意に軽減できる、とJournal
of Thoracic and Cardiovascular Surgery 1月号に掲載された。237人の患者を対象としたある米国のスタディにおいて、通常の技術を用いた心肺装置(クロスクランプ)を使用した手術、大動脈の位置移動とかかる力を最小限にする装置(シングルクランプ)を使用した手術、および心肺装置を用いない手術、の3つの方法を比較した。ベースライン、手術から3〜5日後、3〜6週後、および6ヵ月後に評価を行なった。術後1週間には少なくとも60%の患者が神経学的障害を有していた。6ヵ月後には心肺装置不使用患者の32%および大動脈操作を最小にした患者群の30%しか障害を有していなかったのに対し、従来の手術を受けた患者の57%が障害を有していた。術中モニターから、従来の心肺装置を用いた手術においては、塞栓や気泡がより多く患者の脳に入っていることが示唆された。
心筋梗塞後患者で勃起不全に対しシルデナフィルまたはtadalafilを使用している者は非動脈性前部虚血性視神経症による失明のリスクが高い可能性がある、とBritish
Journal of Ophthalmology 2月号に掲載された。ある大学病院の眼科で視神経症と診断された米国人男性38人と視神経症を有さないコントロール38人を対象とした、レトロスペクティブなケースコントロール試験の比較結果である。全体的に、視神経症の男性は同年代のコントロール群と比較し、どちらの薬剤も使用していると報告する傾向になかった。しかし、心筋梗塞の既往のある男性においては、薬物の使用と視神経症の発症に統計学的に有意な相関が認められた。高血圧の男性においては有意ではないが相関が認められ、このことから筆者らは、心疾患を有する男性はこれらの薬剤を使用する前に、片眼または両眼に視神経症が発症する可能性のあることについて説明を受けるべきであると述べている。