30,000人以上を対象とした10年間の研究において、スタチン系薬剤のようなコレステロール降下剤の長期服用は進行前立腺がんのリスクを低下させる、とAmerican
Association for Cancer Research学会で発表された。米国の研究者らは、前立腺がんが進行がん(局所がんおよび転移性がん)に進展する確率は、スタチン系薬剤を内服していると半分に低下し、内服期間が長いほど進行がんのリスク軽減が大であることを発見した。コレステロール降下療法中の男性の90%がスタチン系薬剤を内服しているため、スタチン系薬剤以外のコレステロール降下療法の効果を確認することはできなかった。さらなる研究により、薬剤と進行がんリスク低下の関連を確認したり薬剤のがん進行抑制のメカニズムを解明することができるであろう。
進行前立腺がんに対する集学的治療の一つである前立腺全摘除術の長期生存率は、限局性腫瘍に対する同手術の成績と同様の可能性がある、とBritish
Journal of Urology International 4月号に掲載された。メイヨークリニックで前立腺全摘除術を受けた男性5,652人に対するレトロスペクティブ研究の結果によると、5年後および15年後の無病率は85%および67%であり、がんのみに限った生存率はそれぞれ95%および79%であった。病理学的進行度、摘出臓器周囲組織への腫瘍浸潤、non-diploidクロマチンの存在などは再発の予測因子ではあったが、術前の前立腺特異抗原の値は関連がなかった。興味深いことに、一部の症例では術前の病期診断に誤りがあり、実際は限局性病変であった。アジュバント療法までの期間は進行がんと限局性がんとで差はなかった。失禁などの合併症についても両群間で差は認められなかった。
骨転移に対する、骨形成術、高周波凝固療法、および凍結療法の3種類の非外科的治療は疼痛を74〜89%も軽減することができる、とSociety
of Interventional Radiology 学会で発表された。椎骨領域の病変に対して骨形成術を施行された患者8人全員において、有意な疼痛の軽減が認められた。これは、造影ガイド下に医療用骨セメントを腫瘍内に挿入し、熱で悪性細胞を死滅させ、強化セメントにより施術後の骨を強化する方法である。経皮的高周波凝固療法のトライアルでは患者11人すべてが1週間以内に目に見える程度の有意な疼痛軽減を認め、局所の再発を来した者はいなかった(平均追跡期間5ヵ月)。経皮的凍結療法のトライアルでは10人中8人において24週間の追跡調査を完了し、最も強い疼痛が平均74%軽減した。さらに大規模の研究が現在行われている。
機能的核磁気共鳴画像(fMRI)は脳内の水分子の流量を計測することができ、悪性脳腫瘍が化学療法や放射線療法に反応するか否かを早期に予測することができる、とProceedings
of the National Academy of Sciences (USA)オンライン版3月28日号に掲載された。20人の患者を対象にした研究で、米国の研究者らは、脳内の水分の散布パターン(および治療開始3週間後のパターンの変化)を示したMRIマップを作成した。その結果、散布パターンから、従来の判定法より10週早く治療の有効性を100%正確に予測することが可能であることがわかった。研究者らはこの方法を乳がんや頭頚部がんでも試みる予定である。
Organization for Research
and Treatment of CancerとNational Cancer Institute of
Canadaが共同で指揮した大規模研究のデータによると、神経膠芽腫患者に対する放射線療法後の新薬temozolomide投与により生存率が増大することが示された、とNew
England Journal of Medicine 3月10日号に掲載された。約600人の患者が放射線療法単独または併用療法に無作為に振り分けられた。2年後、放射線療法単独群は10%しか生存していなかったのに対し併用療法群では26%が生存していた。DNA修復関連遺伝子MGMTのジェノタイプを考慮するとこの併用療法の効果はさらに増強した。併用療法を受けたMGMT遺伝子の不活性化コピーを有する患者の約半数が2年後も生存していた。