血中リン脂質レベルは動脈硬化による冠動脈狭窄レベルを強力に反映する、とNew
England Journal of Medicine 7月7日号に掲載された。米国の研究者らはある1施設で冠動脈造影を施行された患者500人を調査した。その結果、血中コレステロールレベル異常、高血圧、喫煙、および性別などの他の因子で補正した後でも、酸化リン脂質レベルは冠動脈の有意狭窄の存在を示唆した。この粒子はリポプロテインに結合することが知られており、この二つの炎症前駆物質の相互作用が動脈硬化の主な原因である可能性がある。60歳未満の者における酸化リン脂質によるリスクはリポプロテインに非依存性であるため、若年者において酸化粒子はより重要であり、従ってこれらの者のリスク戦略には価値のあるものと考えられる。
米国の心不全患者の治療には有意な施設間の差がある、とArchives
of Internal Medicine 7月11日号に掲載された。研究者らは、223の病院の心不全治療における4つの標準的な項目(書面での退院後指示の提供、入院中の左室機能評価、適切なアンジオテンシン変換酵素阻害薬の処方、適切な禁煙のカウンセリング)を評価した。その結果、入院患者の86.2%が左室機能評価を受け、適応のある患者の72%がアンジオテンシン変換酵素阻害薬を処方されていたのに対し、喫煙者および過去の喫煙者に対する禁煙のカウンセリングは43.2%であり、十分な退院後指示を受けていた者は24%に過ぎなかった。病院間の死亡率の差は4倍であり、最良の病院の死亡率が1.4%のところ、最悪の病院のそれは6.1%にも上った。
15分間で結果の得られる簡便な血液検査により、うっ血性心不全で来院した患者が拘束型心筋症か収縮性心膜炎かを鑑別することが可能である、とJournal
of the American College of Cardiology 6月7日号に掲載された。米国の研究者らは収縮性心膜炎または拘束型心筋症の疑われる患者11人の血中脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を計測した。同日施行した血行動態評価の結果、11人中5人が拘束型心筋症、6人が収縮性心膜炎を有していた。全患者においてBNPレベルは健常人よりも上昇していたが、拘束型心筋症の平均BNPレベルは収縮性心膜炎患者のそれの4倍高かった(それぞれ825
pg/mL vs. 128 pg/mL)。筆者らは、この違いの大部分は、収縮性心膜炎では硬い心膜のために心筋が多くのホルモンを放出するほど伸展されないためであろうと推測している。彼らはさらに強固なデータベースを作成するため患者をさらに収集している。
糖尿病を有する高血圧患者に対して利尿剤はアンジオテンシン変換酵素阻害薬やカルシウム拮抗薬同様、心筋梗塞予防および生存率向上に有効である。さらに、利尿剤投与はうっ血性心不全から保護する作用も有する、とArchives
of Internal Medicine 7月27日号に掲載された。今回の解析はAntihypertensive
and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack
Trial (ALLHAT)の糖尿病患者13,101人、空腹時高血糖患者1,399人、および血糖レベルの正常な患者17,012人のデータをもとに行われた。予想外の結果は、耐糖能障害患者における心筋梗塞発症率がカルシウム拮抗薬を内服している者において利尿薬を内服している者より大であったことである。筆者らによると、この結果は他のトライアルの結果と一致しないため、たまたま生じた可能性があるとのことである。
安定狭心症を有する糖尿病患者でアトルバスタチンによりコレステロールレベルを推奨レベルよりさらに低下させた者は、コレステロールが推奨レベルの者と比較し心筋梗塞や脳卒中発症率が有意に低かった、とAmerican
Diabetes Association学会で発表された。この研究はLDLコレステロールが<130 mg/dLで5年間のTreating to New Targets
Trial (TNT)を終了した糖尿病患者を対象とした。研究終了後の解析の結果、1日80mgの内服で10mg内服と比較し、心血管イベントが25%減少した。また、80mg内服により筋肉関連の合併症のリスクが上昇することはなかった。研究終了時点でLDLコレステロールレベルは、80mg内服群において(~77mg/dL)10mg内服群(99mg/dL)より有意に低かった。TNTスタディは高用量のアトルバスタチンの有効性を評価したこれまでで最大の研究であり、糖尿病患者に対しスタチンとプラセボを比較するのではなく2種類の用量を比較する際の指標となる研究である。