乳がんの臨床病期決定におけるセンチネルリンパ節の生検は腋窩リンパ節郭清と同程度に正確でありかつ合併症が少ない、という報告がArchives
of Surgery 5月号に掲載された。米国のある大学病院で治療を受ける乳がん女性患者1,253人のうち、894人がセンチネルリンパ節生検(730人)またはセンチネルリンパ節生検および腋窩リンパ節郭清(164人)の結果、リンパ節転移がないとされた。平均2.4年間の追跡調査の後、776人の女性が質問表に回答した。センチネルリンパ節生検のみを施行された女性は、腕のリンパ節浮腫や疼痛、局所の腫脹、および感染の発症率が有意に低かった。また、センチネルリンパ節生検のみを施行され、質問表に回答した患者685人のうち腋窩リンパ節へのがんの転移が認められたのはたった1人であった。
マウスを使用した研究によるとoncolyticウイルスは悪性神経膠腫に対して有効な可能性がある、という報告がJournal
of the National Cancer Institute 5月7日号に掲載された。研究者らは感染、複製し、かつ健常細胞の抗ウイルス活性には弱いためがん細胞のみを破壊する変異アデノウイルスを作成した。彼らは脳腫瘍を有するマウスを三群に振り分け、いずれの群においても薬剤を腫瘍に直接注入した。コントロール群のマウスの平均生存日数は19日であった。治験薬を投与されたマウスの26匹中15%は完治したと考えられ(4ヵ月以上生存)、60%は無症状であり長期生存した。National
Cancer Instituteはこれらの結果を、2004年後半にも臨床治験を行える様、資金を投資して開発すべき有望な薬物レベルのウイルス研究であると考えている。
ラジオ波凝固療法は、従来の治療法が不可能な、あるいはそれを希望しない進行頭頚部がん患者の治療に有効である、とAmerican
Head and Neck Society学会で発表された。計11人の患者が治験を受けた。この技術は、腫瘍内に金属製のプローブを挿入し交流電流を流し、発生した熱によりプローブ周囲に球状の組織凝固を起こさせるものである。治療を受けた患者においては腫瘍容積の減少、腫瘍に伴う疼痛や口を閉じることができないなどの症状の軽減、その他多数の良好な結果が得られた。筆者らはこの治療の大規模研究の必要性を主張している。
2003 Annual
Meeting of the American Association for Cancer ResearchのProceedingによると、非ステロイド系抗炎症薬の大腸がん発症予防に働く経路が発見されたことにより、さらに有効な大腸がん予防および治療へとより一歩近づいた。米国の研究チームは大腸がん細胞が免疫系蛋白IL-6を上昇させることを発見した。この蛋白は、大腸表面の正常細胞の死を阻害するsecond
protein (STAT1) を活性化することにより発がん性を発揮する。イブプロフェン、アスピリン、およびスリンダクはIL-6によるSTAT1の活性化を阻害した。
近年の研究により前立腺がん細胞により引き起こされるアンドロゲン非依存性に対する新たな見解が得られた、という報告がAnnual
Meeting of the American Urological Associationで発表された。発表を行った研究グループは、アンドロゲン非依存性前立腺がん症例の約3分の2において変異のみられるp53遺伝子を調べ、アンドロゲン非依存性の発育を促す4つの特有の変異を発見した。彼らは標的siRNA分子を用いてそれらのうち1つの変異の活性を抑制することに成功した。他の研究グループはp53遺伝子の変異を有するアンドロゲン非依存性腫瘍細胞において高度に発現している遺伝子を探した。マイクロアレイ法を使用することにより、彼らは細胞の加齢を抑制し腫瘍の攻撃性を促す蛋白を暗号化するId-1と呼ばれる遺伝子を発見した。
日焼け止めを毎日塗ることにより、皮膚がんの強力な予測因子である日光角化症の発症を遅延させることが可能であるが、一方ベータカロチンは無効であるとのオーストラリアの研究結果がArchives
of Dermatology 4月号に掲載された。合計1,621人の成人を日焼け止めを毎日使用する群、任意に使用する群、ベータカロチンを1日30mg内服する群、およびプラセボを内服する群に無作為に割り付けた。二年後に、日焼け止めを毎日塗った群の人々は任意に使用した群と比較し日光角化症の数が24%、つまり1人につき1箇所の割合で減少した。一方ベータカロチンは有効性を認めなかった。