乳がんにおけるセンチネルリンパ節の生検は腋窩リンパ節郭清と同程度に正確でありかつ合併症が少ない [2003-05-27]
Sentinel lymph node biopsy in breast cancer is as accurate as axillary dissection and has fewer complications
乳がんの臨床病期決定におけるセンチネルリンパ節の生検は腋窩リンパ節郭清と同程度に正確でありかつ合併症が少ない、という報告がArchives of Surgery 5月号に掲載された。米国のある大学病院で治療を受ける乳がん女性患者1,253人のうち、894人がセンチネルリンパ節生検(730人)またはセンチネルリンパ節生検および腋窩リンパ節郭清(164人)の結果、リンパ節転移がないとされた。平均2.4年間の追跡調査の後、776人の女性が質問表に回答した。センチネルリンパ節生検のみを施行された女性は、腕のリンパ節浮腫や疼痛、局所の腫脹、および感染の発症率が有意に低かった。また、センチネルリンパ節生検のみを施行され、質問表に回答した患者685人のうち腋窩リンパ節へのがんの転移が認められたのはたった1人であった。
 

アルコールによって直腸がんのリスクは上昇するが、赤ワインの常飲者においてはリスクは少ない [2003-05-27]

Alcohol increases risk for rectal cancer but increase is less among regular drinkers of wine
アルコールを常飲する者においては直腸がんのリスクが上昇するが、摂取するアルコールのうち赤ワインが3分の1以上を占めている場合そのリスクが減少する、という報告がGut 5月号に掲載された。このデンマークにおける研究では29,000人の成人からアルコール摂取および他のがんのリスク(喫煙、体重、および運動など)の情報を得た。その結果、男性はより大量に飲酒をする傾向にあり、大量飲酒者は少量飲酒者よりも喫煙をし、体重が重い傾向にあった。約15年ののち、大腸がん411例および直腸がん202例の発症が認められた。大腸がんに対するアルコールの影響は少なかったが、直腸がんとは高い関連性が認められた。大量飲酒者における直腸がん発症率は非飲酒者の2倍であった。興味深いことに、直腸がんの発生率は摂取するアルコールのうちビールやリキュールを飲む割合が高い人はリスクが非飲酒者の3.5倍高くなり、ワインの占める割合が高い者においては2倍以下であった。
マウスを使用した研究によると治療的ウイルス療法は悪性神経膠腫に対し有効な可能性がある [2003-05-19]
Mouse research indicates that a therapeutic virus technique may be effective against malignant glioma
マウスを使用した研究によるとoncolyticウイルスは悪性神経膠腫に対して有効な可能性がある、という報告がJournal of the National Cancer Institute 5月7日号に掲載された。研究者らは感染、複製し、かつ健常細胞の抗ウイルス活性には弱いためがん細胞のみを破壊する変異アデノウイルスを作成した。彼らは脳腫瘍を有するマウスを三群に振り分け、いずれの群においても薬剤を腫瘍に直接注入した。コントロール群のマウスの平均生存日数は19日であった。治験薬を投与されたマウスの26匹中15%は完治したと考えられ(4ヵ月以上生存)、60%は無症状であり長期生存した。National Cancer Instituteはこれらの結果を、2004年後半にも臨床治験を行える様、資金を投資して開発すべき有望な薬物レベルのウイルス研究であると考えている。
 

ラジオ波凝固療法は頭頚部腫瘍容積を縮小させ疼痛も軽減する [2003-05-19]

Radiofrequency ablation reduces volume of head and neck tumors and decreases associated pain
ラジオ波凝固療法は、従来の治療法が不可能な、あるいはそれを希望しない進行頭頚部がん患者の治療に有効である、とAmerican Head and Neck Society学会で発表された。計11人の患者が治験を受けた。この技術は、腫瘍内に金属製のプローブを挿入し交流電流を流し、発生した熱によりプローブ周囲に球状の組織凝固を起こさせるものである。治療を受けた患者においては腫瘍容積の減少、腫瘍に伴う疼痛や口を閉じることができないなどの症状の軽減、その他多数の良好な結果が得られた。筆者らはこの治療の大規模研究の必要性を主張している。
非ステロイド性抗炎症薬の大腸がん予防作用に対する新たな知見 [2003-05-13]
New insight into how nonsteroidal anti-inflammatory drugs can act to prevent colon cancer
2003 Annual Meeting of the American Association for Cancer ResearchのProceedingによると、非ステロイド系抗炎症薬の大腸がん発症予防に働く経路が発見されたことにより、さらに有効な大腸がん予防および治療へとより一歩近づいた。米国の研究チームは大腸がん細胞が免疫系蛋白IL-6を上昇させることを発見した。この蛋白は、大腸表面の正常細胞の死を阻害するsecond protein (STAT1) を活性化することにより発がん性を発揮する。イブプロフェン、アスピリン、およびスリンダクはIL-6によるSTAT1の活性化を阻害した。
 

前立腺がん細胞により引き起こされるアンドロゲン非依存性に対する新たな見解 [2003-05-13]

New findings provide insight into the development of androgen independence by prostate cancer cells
近年の研究により前立腺がん細胞により引き起こされるアンドロゲン非依存性に対する新たな見解が得られた、という報告がAnnual Meeting of the American Urological Associationで発表された。発表を行った研究グループは、アンドロゲン非依存性前立腺がん症例の約3分の2において変異のみられるp53遺伝子を調べ、アンドロゲン非依存性の発育を促す4つの特有の変異を発見した。彼らは標的siRNA分子を用いてそれらのうち1つの変異の活性を抑制することに成功した。他の研究グループはp53遺伝子の変異を有するアンドロゲン非依存性腫瘍細胞において高度に発現している遺伝子を探した。マイクロアレイ法を使用することにより、彼らは細胞の加齢を抑制し腫瘍の攻撃性を促す蛋白を暗号化するId-1と呼ばれる遺伝子を発見した。
日焼け止めを毎日塗ることにより日光角化症の発症を遅延させることが可能であるが、一方ベータカロチンは無効である [2003-05-06]
Daily sunscreen slows development of solar keratoses whereas daily doses of beta carotene have no effect
日焼け止めを毎日塗ることにより、皮膚がんの強力な予測因子である日光角化症の発症を遅延させることが可能であるが、一方ベータカロチンは無効であるとのオーストラリアの研究結果がArchives of Dermatology 4月号に掲載された。合計1,621人の成人を日焼け止めを毎日使用する群、任意に使用する群、ベータカロチンを1日30mg内服する群、およびプラセボを内服する群に無作為に割り付けた。二年後に、日焼け止めを毎日塗った群の人々は任意に使用した群と比較し日光角化症の数が24%、つまり1人につき1箇所の割合で減少した。一方ベータカロチンは有効性を認めなかった。
 

マウスを使った実験結果によると、化学療法薬剤によって引き起こされるDNA低メチル化によりある組織内のがんが発生する可能性がある [2003-05-06]

Mouse studies indicate that hypomethylation due to chemotherapeutic agents can cause cancer in some tissues
DNAの低メチル化を介して働く化学療法薬剤は他の組織内にがんを発生させる可能性がある、という報告がScience 4月18日号に掲載された。研究者らは生物操作されたマウスを使用し、DNAメチル化の減少は消化管のがんに対しては防御的に働くが、胸腺の発がん性を増強することを発見した。また、肉腫を発症しやすくするように操作されたマウスにおいては、低メチル化を引き起こすことにより、より若年で腫瘍が発生した。さらなる動物実験およびヒトの腫瘍を用いた研究により、健常な細胞の維持あるいはがんの誘発における(遺伝子変異に対して)遺伝子発現の役割に対する新たな見解がもたらされるであろう。


 

DOLについて - 利用規約 -  会員規約 -  著作権 - サイトポリシー - 免責条項 - お問い合わせ
Copyright 2000-2025 by HESCO International, Ltd.