小児期にがんを有していた成人生存者の多くは、自己の疾患に対する適切な長期管理に関して知識が不十分である[2002-04-30]
Many adult survivors of childhood cancer may have insufficient knowledge about their disease to receive proper long-term care
小児期にがんを有していた成人生存者の多くにおいては、彼らがもっている自己の疾患に関する知識とその診断および治療の記録との間に大きなギャップがあり、それにより彼らが適切な長期管理を受けることができない可能性がある、という報告が Journal of the American Medical Association (JAMA) 4月10日号に掲載された。Nina S. Kadan-Lottick博士らの米国の研究グループは小児期にがんを有していた成人635人を調査した(平均年齢29歳、がん診断時の平均年齢8歳)。そのうち72%が彼らの疾患の診断名を正確かつ詳細に報告したが、化学療法に使用した薬品に関してはヒントを与えてもその名前を言える者ははるかに少数しか存在しなかった。これらの対象者のうち、彼らの疾患に関する説明書類を受け取ったのはわずか15%にすぎなかった。博士らは、このような情報伝達不備の問題は、今後疾患を有する小児が成人期まで生存する確率が高まるにつれ増大していくであろうと述べている。
 
無症状の乳がんの診断が20週以上遅延すると予後に有意に影響する[2002-04-30]
Delay in diagnosis of asymptomatic breast cancer greater than 20 weeks significantly affects prognosis
無症状の乳がんの診断が20週以上遅延すると予後の不良因子になる、という報告がCANCER 4月15日号に掲載された。研究者らは4,465人の乳がん患者の腫瘍のサイズおよびリンパ節転移、スクリーニングで異常を指摘されてから病理診断が下されるまでの時間、およびがんの疑いの程度や診断時年齢を含むその他の情報を解析した。がんの疑いの程度を調整した結果、診断が20週以上遅延すると有意に予後不良と結びつくとの結果が得られた。スクリーニングの時点でがんの可能性が高い者においては、可能性が低い者よりも早期に診断が下されたことから、スクリーニングで異常を指摘された被験者全員を、その疑いのレベルにかかわらず、可能な限り早期にフォローアップすべきかどうかという疑問が提起される。
第I相臨床試験の結果により、新薬phenoxodiolは軽度の副作用でがんの進行を抑制することが明らかとなった。[2002-04-23]
Phase I results for the novel agent phenoxodiol show arrest of disease progression with minimal toxicity
第I相臨床試験の結果、phenoxodiolが耐容投与量で10人中6人においてがんの進行を抑制した、とAmerican Association for Cancer Research の年次会議で報告された。この臨床試験には、大腸がん、黒色腫、胸腺がん、および前立腺がんが含まれていた。副作用としては嘔気、倦怠感、および息切れが認められた。この新薬は、がん発生のメカニズムの基礎となっているアポトーシスを制御することを目標としている。また、同薬剤はスフィンゴシンキナーゼやカスパーゼなどの重要な分子と相互に作用する。
 
赤ぶどうジュースがラットおよび培養細胞において乳がんの成長を抑制する[2002-04-23]
Purple grape juice inhibits breast cancer cell growth in rats and in cell cultures
雌のラットに赤ぶどうジュースを摂取させたところ、乳房腫瘍容積および1個体当たりの腫瘍の数が減少した、とハーバード大学医学部後援のComplementary, Alternative and Integrative Medical Research国際学会で発表された。赤ぶどうジュースを投与されたラットに発生した腫瘍の容積は、同様の発がん性物質を与えられ、赤ぶどうジュースと類似の栄養成分を有する人工乳を投与された対照ラットと比較し、28%から36%少なかった。さらに、赤ぶどうの抽出色素は培養細胞における有糸分裂を有意に阻害した。
最近の治験結果によると転移性肝がんに対するウイルス療法は有望である[2002-04-16]
Early clinical trial results of viral therapy for liver metastases of colon cancer are promising
フェイズIおよびIIの治験結果から、遺伝子組み替えを行なったアデノウイルスを肝動脈内に注入することにより正常肝組織を傷害することなく大腸原発転移性肝がんに有意な毒性をもたらせることができる、とSociety of Cardiovascular & Interventional Radiologyの年次会議で報告された。この不活化させたウイルスは腫瘍抑制遺伝子p53に異常を有する細胞のみに感染する。投与量が最も多かった患者28人の平均生存日数は、予測平均生存日数180日と比較し、369日であった。この有効性を証明するにはさらなる治験の結果が必要であろう。
 
転移性の高い乳がんの検出においてRhoCと呼ばれる蛋白は、将来的に生物学的マーカーとなりうる[2002-04-16]
Protein called RhoC may be future biomarker for breast cancer tumors most likely to metastasize
転移の可能性の高い乳がんの検出において、たとえその原発腫瘍の大きさが1cm未満であってもRhoCと呼ばれる蛋白は将来的にマーカーとなりうる、とAmerican Association for Cancer Researchで発表された。研究者らは182の組織検体を評価し、そのマーカー検査で転移性の高い浸潤がんを88%の特異度で検出できることを見出した。すでに転移を来たしている小型の腫瘍については特異度は92%であった。正常乳房組織、良性乳房嚢胞、あるいは非浸潤性乳がんにおいてはRhoC蛋白の上昇度は軽度であった。しかし、臨床治験が開始されるまでには1年以上かかるであろう、とCelina Kleer博士らは語った。
新しく同定された遺伝子マーカーは前立腺特異抗原よりも鋭敏に前立腺がんを検出できる。[2002-04-09]
A newly identified genetic marker may prove more accurate and more sensitive than prostate-specific antigen in detecting prostate cancer
がん化した前立腺細胞に特異的に認められる蛋白を多く発現させる遺伝子が、前立腺特異抗原よりも前立腺がんのスクリーニングに適している、という報告がJournal of the American Medical Association 誌4月3日号に掲載された。今回特定された蛋白はa-methylacyl-CoA racemase (AMACR) という酵素で、限局的前立腺がんを含む300以上の標本の95%以上において認められ、良性の前立腺組織からは全く認められなかった。94個の針生検標本の免疫染色では前立腺がんの診断の感度は97%、選択性は100%であった。報告者であるMark A. Rubin博士らはさらに多くの組織標本について測定し、前向き臨床試験にて測定結果と生検所見の関連を調べる予定である。
 
タモキシフェンが乳腺細胞に対して抑制的である一方で子宮内膜細胞に対して増殖促進的である機序に関する新知見が得られた。[2002-04-09]
Insight gained into how tamoxifen suppresses breast cells but stimulates endometrial cells
タモキシフェンが乳腺細胞に対して抑制的効果を示す一方で子宮内膜細胞に対して増殖促進効果を示す現象の原因となる機序が同定された、という報告がScience 誌3月29日号に掲載された。Myles Brown博士らによると、子宮内膜細胞においてタモキシフェン-受容体結合が起きると引き続いてさらに幾つかの増殖促進効果を有する蛋白が結合し、子宮内膜の増殖促進シグナル網を形成する。その一方、ラロキシフェンは受容体と結合しても増殖促進効果を有する蛋白の結合は起こらない。今回得られた知見により乳がんのリスクを減らし、かつ子宮内膜がんのリスクは増やさない新しい薬物治療を開発することができるであろう。
乳がん腫瘍切除術中の境界領域の幅と、境界領域に存在する腫瘍の量から、残遺がんの存在を予測できる[2002-04-01]
Margin width and extent of tumor presence in the margin predict likelihood of residual breast cancer tumor after lumpectomy
Cancer4月1日号に掲載された論文によると、境界領域の幅と、境界領域における腫瘍の存在が、残遺がんの存在を予測する最も重要な予測因子である。Neuschatz博士らは、腺管がんに対し腫瘍切除術を施行後、再度切除を行った253例を検討し、遺残がんの存在を予測する2個の重要な予測因子を見出した。一見正常な乳腺組織の境界領域が大きいほど、そしてこの境界領域に存在するがんの量が少ないほど遺残がんがあるリスクは小さかった。著者らは、このことにより残遺がんの存在する可能性が低く追加治療の必要性が低い患者と、残遺がんの存在する可能性が高く追加の積極治療が必要な患者を識別するのに役立つだろうと述べた。
 
非ステロイド抗炎症薬を使用すると、前立腺がんのリスクが低下する[2002-04-01]
  Use of nonsteroidal anti-inflammatory drugs may decrease risk of prostate cancer
  Mayo Clinic Proceedings3月号に掲載された論文によると、アスピリン、イブプロフェンなどの非ステロイド抗炎症薬を定期的に使用すると、前立腺がんに対し予防効果がある可能性が報告された。Rosebud Roberts博士らは、1,362名の白人アメリカ人を対象として追跡調査(平均5.5年)を行い、その結果は非ステロイド抗炎症薬を毎日使用していない患者が前立腺がんを発症する確率は9%であったのに対し、毎日使用している患者の発症率は4%と低かった。60才以上の患者を対象とした結果から、この効果は年齢とともに増加することが示唆された。著者らはこの関連を確認するためにさらに研究を進めるべきだとし、その関連の生物学的根拠を明らかにする研究を始めている。
 


 
 

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