小児期にがんを有していた成人生存者の多くにおいては、彼らがもっている自己の疾患に関する知識とその診断および治療の記録との間に大きなギャップがあり、それにより彼らが適切な長期管理を受けることができない可能性がある、という報告が
Journal of the American Medical Association (JAMA) 4月10日号に掲載された。Nina
S. Kadan-Lottick博士らの米国の研究グループは小児期にがんを有していた成人635人を調査した(平均年齢29歳、がん診断時の平均年齢8歳)。そのうち72%が彼らの疾患の診断名を正確かつ詳細に報告したが、化学療法に使用した薬品に関してはヒントを与えてもその名前を言える者ははるかに少数しか存在しなかった。これらの対象者のうち、彼らの疾患に関する説明書類を受け取ったのはわずか15%にすぎなかった。博士らは、このような情報伝達不備の問題は、今後疾患を有する小児が成人期まで生存する確率が高まるにつれ増大していくであろうと述べている。
第I相臨床試験の結果、phenoxodiolが耐容投与量で10人中6人においてがんの進行を抑制した、とAmerican
Association for Cancer Research の年次会議で報告された。この臨床試験には、大腸がん、黒色腫、胸腺がん、および前立腺がんが含まれていた。副作用としては嘔気、倦怠感、および息切れが認められた。この新薬は、がん発生のメカニズムの基礎となっているアポトーシスを制御することを目標としている。また、同薬剤はスフィンゴシンキナーゼやカスパーゼなどの重要な分子と相互に作用する。
雌のラットに赤ぶどうジュースを摂取させたところ、乳房腫瘍容積および1個体当たりの腫瘍の数が減少した、とハーバード大学医学部後援のComplementary,
Alternative and Integrative Medical Research国際学会で発表された。赤ぶどうジュースを投与されたラットに発生した腫瘍の容積は、同様の発がん性物質を与えられ、赤ぶどうジュースと類似の栄養成分を有する人工乳を投与された対照ラットと比較し、28%から36%少なかった。さらに、赤ぶどうの抽出色素は培養細胞における有糸分裂を有意に阻害した。
転移の可能性の高い乳がんの検出において、たとえその原発腫瘍の大きさが1cm未満であってもRhoCと呼ばれる蛋白は将来的にマーカーとなりうる、とAmerican
Association for Cancer Researchで発表された。研究者らは182の組織検体を評価し、そのマーカー検査で転移性の高い浸潤がんを88%の特異度で検出できることを見出した。すでに転移を来たしている小型の腫瘍については特異度は92%であった。正常乳房組織、良性乳房嚢胞、あるいは非浸潤性乳がんにおいてはRhoC蛋白の上昇度は軽度であった。しかし、臨床治験が開始されるまでには1年以上かかるであろう、とCelina
Kleer博士らは語った。
がん化した前立腺細胞に特異的に認められる蛋白を多く発現させる遺伝子が、前立腺特異抗原よりも前立腺がんのスクリーニングに適している、という報告がJournal
of the American Medical Association 誌4月3日号に掲載された。今回特定された蛋白はa-methylacyl-CoA
racemase (AMACR) という酵素で、限局的前立腺がんを含む300以上の標本の95%以上において認められ、良性の前立腺組織からは全く認められなかった。94個の針生検標本の免疫染色では前立腺がんの診断の感度は97%、選択性は100%であった。報告者であるMark
A. Rubin博士らはさらに多くの組織標本について測定し、前向き臨床試験にて測定結果と生検所見の関連を調べる予定である。
Mayo
Clinic Proceedings3月号に掲載された論文によると、アスピリン、イブプロフェンなどの非ステロイド抗炎症薬を定期的に使用すると、前立腺がんに対し予防効果がある可能性が報告された。Rosebud
Roberts博士らは、1,362名の白人アメリカ人を対象として追跡調査(平均5.5年)を行い、その結果は非ステロイド抗炎症薬を毎日使用していない患者が前立腺がんを発症する確率は9%であったのに対し、毎日使用している患者の発症率は4%と低かった。60才以上の患者を対象とした結果から、この効果は年齢とともに増加することが示唆された。著者らはこの関連を確認するためにさらに研究を進めるべきだとし、その関連の生物学的根拠を明らかにする研究を始めている。