DOL APA2002 学会速報




 
 
Medical Director
Bruce B. Dan, M.D.
日本語版総監修
上島国利
(昭和大学医学部
精神医学教室教授)


アルコール症のnaltrexone治療:この10年の臨床における進歩
Naltrexone Treatment of Alcoholism: A Decade of Clinical Progress
  
アルコール症の治療におけるnaltrexoneの有効性
Efficacy of Naltrexone in the Treatment of Alcoholism
 
アルコール症の治療にnaltrexoneを使用することについて概説した。Naltrexone治療を受けているアルコール症患者では、アルコールへの渇望が少なく、飲酒することも少なく、再発も少ないとされる。また、飲酒してもその心的報酬が少なく、ハイな気分になれないという。アルコールへの渇望が強い患者や家族歴にアルコール症をもつ患者はnaltrexoneに最もよく反応する。
  
アルコール依存に対するnaltrexone治療の効果を高めるには
Optimizing Naltrexone Treatment of Alcohol Dependence
 
Naltrexoneはアルコールへの渇望を減少させる安全で効果的な治療である。アルコール渇望度が高い、あるいはアルコール症の家族歴をもつ患者では、naltrexoneを服用すると、臨床面でより良い結果が得られる。患者が服薬コンプライアンスを保てるか否かがnaltrexone治療の成否に大きく関与する。服薬コンプライアンスを保ち、治療を維持する方略としては、一般的な社会心理的介入やBRENDAと呼ばれる動機付けの強化法などが挙げられる。  



薬物療法における問題点
Issues in Medication Management
  
パニック障害患者のコンプライアンスと治療中断について
Compliance and Treatment Discontinuation in Panic Disorder Patients
 
パニック障害・広場恐怖(PD)患者の多くは抗うつ薬によって治療されている。多数の患者は副作用、治療抵抗性および症状の寛解のために治療を中断する。治療を維持する患者は、広場恐怖がより重症で、罹病期間が長く、依存的で抑うつの素因をもち、寛解が得られた時期が遅かった。  
  
授乳中の母親の母乳および乳児における抗うつ薬濃度についてのメタ解析
Meta-Analysis of Antidepressant Levels in Lactating Mothers' Breastmilk and Nursing Infants
 
本研究の目的は母乳を授乳中の産褥期うつ病患者の治療に最も適した抗うつ薬を同定することである。用いた基準は、乳児への曝露が最小限となる薬物を決定するためのものである。得られた結果から、ノルトリプチリンとパロキセチンが望ましい薬物であることが示唆された。第二選択薬はsertralineであった。母乳授乳中の母親のうつ病治療において避けるべき薬物はfluoxetineとcitalopramである。  


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