動物モデルの研究から、opiate受容体が遮断されるとアルコールへの嗜好が減少することが示された。この知見をもとに、アルコール乱用やアルコール依存にnaltrexoneを用いる臨床研究が導かれた。
Naltrexoneの最初の臨床研究はデイケアセンターに通所する男性退役軍人のアルコール症患者の無作為試験であった。参加者は2つのグループに分けられた。一群はnaltrexone治療と社会心理的介入を受けた。もう一群はプラセボと社会心理的介入を受けた。Naltrexone治療を受けた群ではアルコールへの渇望がより少なく、アルコール摂取も少ないと報告された。その結果、naltrexone治療を受けた群では再発がより少なかった。また、退役軍人患者が再飲酒した場合でも、心的報酬が少なく、飲酒によるハイな気分が得られないとのことであった。この研究は長期にわたって(9ヵ月)、異なる集団、すなわち女性や社会心理的介入をほとんど全く受けていない人々などについて追試されている。すなわち、一連の結果はnaltrexone治療が明らかに有効であることを示している。

Naltrexoneが最も効果的な患者はアルコールへの渇望が強い患者と家族歴にアルコール症をもつ患者である。この種のアルコール症患者では、飲酒していないと血漿中β-エンドルフィン濃度が低く、強いアルコールへの渇望にみまわれる。飲酒によって、血漿中β-エンドルフィン値はアルコールへの渇望が少ない患者と同じレベルまで上昇する。
この種の患者では、naltrexone治療中にアルコールへの渇望が減ることで回復が容易になると報告している。さらに、渇望が減少することで、患者は人生の重要な他の部分に目を向けることができる。O'Brien博士はnaltrexoneはアルコール症患者のうち、ある群には有効であると結論した。
Naltrexone治療の中断が再飲酒につながると指摘する研究がある。したがって、naltrexone治療から効果を得るには患者はその服薬を続けなければならない。服薬継続はnaltrexone治療における重要なポイントである。患者によっては、その副作用によって治療に応じない場合もある。Naltrexone治療における一般的な副作用は嘔吐、焦燥感の増強や性欲亢進である。これらの副作用の中でnaltrexone治療の中断につながる主な理由は嘔気である。
レポーター:
Andrea R. Gwosdow, PhD
日本語翻訳・監修:昭和大学医学部精神医学教室助教授 三村 將
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