アルコール依存に対するnaltrexone治療の効果を高めるには
Optimizing Naltrexone Treatment of Alcohol Dependence

Joseph R. Volpicelli, MD
University of Pennsylvania
Philadelphia, PA, USA


Naltrexoneはアルコール渇望を減少させる安全で効果的な薬物である。Naltrexoneに良好な反応を示しやすい患者の特徴が明らかにされつつある。例えば、アルコールへの渇望の程度が強い患者、あるいは強いアルコール症の家族歴をもつ患者では、naltrexoneを投与された場合、プラセボを投与された同様な患者と比較して、臨床的に良好な転帰をたどる。

Volpicelli博士は、アルコール症の家族歴をもつ人はアルコールによりもたらされる快楽への感度が高いと説明した。研究によると、この種の人では非アルコール症の人と比較して血漿β-エンドルフィン値が低いことが示されている。飲酒によってこれらの人の血漿β-エンドルフィン値は非アルコール症の人と同程度まで上昇する。このことはアルコールの遺伝的素質を生物学的に説明し得るかもしれない。

臨床研究では主に50mg/dayの経口内服が用いられてきている。しかし、最近の研究ではnaltrexoneのより多い投与量(100mg/dayないし150mg/day)も十分耐容性があることが示されている。原因はまだよくわかっていないが、より高用量のnaltrexoneに反応する患者もいる。Volpicelli博士のデータでは、naltrexoneの有効性は長期の治療継続に伴って向上することが示されている。治療によって、アルコール症患者はアルコールへの渇望がなくなり、飲酒しても、アルコールによる多幸感はもはやなくなる。Naltrexoneはアルコールへの渇望が低い患者には適当でないかもしれない。それらの患者には心理社会的介入が最も効果的である。

臨床試験の結果によれば、アルコール症の薬物療法は治療の服薬コンプライアンスを保てるか否かによって大きく左右される。副作用によって治療を中断する患者もいる。Naltrexoneの治療コンプライアンスが不良となる主な副作用は嘔気と嘔吐である。

臨床研究により、アルコール症治療に対するnaltrexoneの効果を高めるための様々な方略が示唆されている。一つは服薬の遵守と治療の継続を向上するために、コンプライアンスを強化する手法を用いることである。定型的な心理社会的介入は服薬遵守と治療継続の向上にきわめて有効である。コンプライアンスを高めるために、Volpicelli博士はBRENDAと呼ばれるアプローチを開発した。BRENDAは動機付けを強化する技法を活用する。コンプライアンスと治療継続は心理社会的介入とnaltrexone治療の組み合わせによって大幅に改善された。Volpicelli博士はこのような介入技法は薬物治療のコンプライアンスを高めるために容易に日常診療レベルの臨床に応用できると述べた。


レポーター: Andrea R. Gwosdow, PhD
日本語翻訳・監修:昭和大学医学部精神医学教室助教授 三村 將