スタチンは放射線療法後の心血管系合併症を減少させる
乳がん既往者は心疾患リスクに直面する
新たなデータは若年乳がん患者における術後補助療法のガイドとなる(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract 503)
ビタミンDはがん関連死を減少させる(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract 1534)
リンパ腫の特定の亜型を有する患者は化学療法を回避することができる可能性がある(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract 7508)
乳房部分照射によりQOLが向上する(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract 508)
チェックポイント阻害薬は肺がん再発を減少させるのに有望である(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract 8504)
HIV患者に対する免疫療法薬は安全であることが示された(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract 2500)
転移性前立腺がんの新たな治療選択(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA2)
肝転移において低侵襲がん手術は有効である(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA3516)
ペムブロリズマブは非小細胞肺がん患者の生存率を上昇させる(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA9015)
オラパリブはBRCA変異を有する膵臓がんの増悪を遅延させる(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA4)
新たな治療法は進行尿路上皮がんに対し有効である(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA4505)
新しいクラスの薬剤は進行前立腺がん患者において有効である(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract 5006)
閉経前進行乳がんにおける生存率の改善(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA1008)
新たに診断された進行胃がんに対する有望な代替手段(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA4007)
レナリドミドは多発性骨髄腫の発症を遅延させる(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract 8001)
小児プレシジョン・メディシンの試験は予測を超える(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract 10011)
スタチン療法は放射線療法後のがん患者の脳卒中リスクを低下させる [2019-06-25]
Statin therapy reduces risk of stroke in cancer patients following radiation therapy

胸部、頭頸部の放射線療法後にコレステロール低下薬スタチンを内服したがん患者は、脳卒中、あるいは他の心血管系合併症を発症するリスクがかなり低かった、とJournal of the American Heart Association に掲載された。スタチンは脳卒中を32% 減少させた。また、心筋梗塞および脳卒中、さらにこれらの心血管系イベントによる死亡などの心血管系イベント全般において、強い減少の傾向が認められたが、この15% の減少は今回のスタディ対象患者がハイリスク群であったため、統計学的に有意ではなかった。

早期乳がんを有する閉経後女性は治療後数年経過してからの心血管疾患リスクが高い [2019-06-25]
Postmenopausal women with early stage breast cancer are at greater risk of cardiovascular disease years after treatment

早期乳がんを有する閉経後女性は、乳がんと診断されていない女性に比べ、心血管疾患で死亡するリスクがかなり高く、このリスクは乳がん治療後何年も持続する、とNorth American Menopause Society の学会誌であるMenopause オンライン版に掲載された。研究者らは、乳がん既往閉経後女性はメタボリック症候群、糖尿病、動脈硬化、高トリグリセリド血症、および腹部肥満と著明に強力な関連があることを明らかにした。心血管疾患死亡率のリスクは、がんそのものによる死亡率と同等に上昇した。これらの心血管系への影響は、放射線療法後5年以上経過してから現れるようであり、リスクは30年後まで持続した。

TAILORx:閉経前女性の乳がん再発予防目的の術後補助療法に関する新たな情報 [2019-06-18]
TAILORx: New information about adjuvant therapy to prevent recurrence of breast cancer in premenopausal women

若年女性の乳がん再発リスクを、典型的な臨床像(腫瘍サイズおよび組織学的グレード分類)に基づき評価することにより、21-遺伝子アッセイによる再発スコア(RS)に補完的な予後情報が追加される、と2019 ASCO Annual Meeting で発表され、New England Journal of Medicine に掲載された。TAILORx試験の研究者らは、RSの結果が16〜20で50歳以下の女性は臨床的にリスクが低く化学療法の必要性がない、と述べている。このことはまた、より効果的な抗エストロゲン療法でベネフィットを得られる若年女性を同定するのにも役立つ可能性がある。

ビタミンDを3年以上摂取することは、がん患者に延命効果をもたらす可能性がある [2019-06-18]
Vitamin D taken three years or more could help cancer patients live longer

ビタミンDは単に骨の健康に寄与するだけでなく、重要なベネフィットをもたらすようである、と2019 ASCO Annual Meeting で発表された。少なくとも3年間摂取することで、ビタミンDはがん患者の生存期間を延長するのに役立つことが、試験の結果示された。研究者らは、79,000人超(平均年齢68.07歳、女性78.02%)の疾患予防に関するデータを調査した。ビタミンDはプラセボに比べ、がん関連死を有意に減少させた(p=0.05)。ビタミンDはプラセボに比べ、がん罹患率の有意な減少とは関連がなかった(p=0.46)。

Smart Start:リンパ腫の試験により、化学療法前の分子標的薬併用療法は有効であることが示された [2019-06-18]
Smart Start: Lymphoma trial finds combination targeted therapy effective prior to chemotherapy

化学療法を用いないリツキシマブ、イブルチニブ、およびレナリドミドの併用療法は、新たに診断されたnon-germinal (non-GCB) 型びまん性大細胞型リンパ腫(DLBCL)患者において非常に効果的である、と2019 ASCO Annual Meeting で発表された。第II相Smart Start 試験の結果、新たに診断されたnon-GCB DLBCL患者に対し、全ての化学療法の前にこの分子標的薬併用療法を施行した場合、全奏効率は84.6% であり、完全完解は38.5% であることが示された。本試験対象患者の90% 超は、1年後も寛解を保ったままであった。副作用は軽度であり、多くが化学療法によるものであった。

化学療法なしで乳房部分照射を施行された患者は、倦怠感は弱く、整容性はわずかに劣る [2019-06-18]
Patients who received partial breast irradiation without chemotherapy experienced less fatigue, slightly poorer cosmesis

患者報告アウトカムから、術後補助化学療法を受けない乳がん患者に対する乳房部分照射(PBI)は、全乳房照射(WBI)に比べ利便性が高いことが示された。PBI 群の参加者はまた、治療後36か月の時点で、倦怠感は弱く整容性はわずかに劣っていたが、整容性に関しては化学療法とPBI またはWBI を受けた患者で同等であった。両群において、PBI 患者の方が治療終了時点での痛みが少なく、治療関連症状はWBIの方が不良であった。これらの結果は2019 ASCO Annual Meeting で発表された。

NEOSTAR:早期肺がんに対する術前のチェックポイント阻害薬の併用は有効である [2019-06-18]
NEOSTAR: Combination checkpoint blockade effective in pre-surgical setting for early-stage lung cancer

免疫チェックポイント阻害薬を用いた術前補助療法による病理学的奏効率(MPR)は、治療された早期切除可能非小細胞肺がん患者において33% であった、と2019 ASCO Annual Meeting で発表された。第II相NEOSTAR 試験において、術前にニボルマブ(抗PD-1抗体)およびイピリムマブ(抗CTLA-4抗体)の併用療法を施行された患者21人中7人がMPR を達成したのに対し、ニボルマブ単独療法でMPR を達成したのは23人中4人であった。これら2群を比較するには検出力は不足しているが、併用療法は手術時点でviable な腫瘍を減少させるのにより有効と思われた。

抗PD-1抗体治療は良好にコントロールされているHIV患者のがん治療に適切である [2019-06-18]
Anti-PD-1 therapy is appropriate for cancer patients with well-controlled HIV

HIVに感染し様々な致命的がんの1つを有する患者は、免疫療法薬ペムブロリズマブを用いて安全に治療することができる、と2019 ASCO Annual Meeting で発表され、同時にJAMA Oncology に掲載された。患者30人を対象としたこの試験では、抗PD-1抗体治療薬ペムブロリズマブのみを調査した。治療されたがんは肺がん、カポジ肉腫、非ホジキンリンパ腫、肝臓がん、肛門がんおよび進行扁平上皮がんであった。有害事象プロファイルは、HIV患者を除いた過去のスタディと実質的な差はなかった。この結果はT細胞表面のPD-1 またはPD-L1 受容体をブロックする5つの類似薬にも適用できると思われる。

ENZAMET:標準治療にエンザルタミドを併用することにより転移性ホルモン感受性前立腺がん男性の生存率が改善する [2019-06-11]
ENZAMET: Adding enzalutamide to standard treatment improves survival for men with metastatic hormone-sensitive prostate cancer

標準治療にアンドロゲン受容体阻害薬であるエンザルタミドを併用した場合、従来の非ステロイド性抗アンドロゲン薬(NSAA)併用に比べ、転移性ホルモン感受性前立腺がん男性に対する有効性は高い、と2019 ASCO Annual Meeting で発表され、同時に New England Journal of Medicine に掲載された。第III相 ENZAMET 試験の中間解析の結果、エンザルタミドを投与された患者においてはその他のNSAAを投与された患者に比べ、死亡リスクが33% 低下したことが示された。重篤な有害事象の発現は、エンザルタミド群の42% に対し、NSAA群では34% であった。

OSLO-COMET:肝転移を有する大腸がん患者の生存期間は腹腔鏡手術と開腹術とで同等である [2019-06-11]
OSLO-COMET: Colorectal cancer patients with liver metastases live just as long after laparoscopic surgery as open surgery

ランダム化OSLO-COMET 試験の結果、大腸がん患者の肝転移巣切除にあたり、腹腔鏡手術は開腹術に比べ生存期間は同等であることが示された、と2019 ASCO Annual Meeting で発表された。全体として、腹腔鏡手術または開腹術にかかわらず、術後患者は6.5年超生存した(p=0.91)。腹腔鏡手術群における無再発生存期間中央値は19か月であり、開腹術群では16か月であった。患者は腹腔鏡手術後に健康関連のQOL が改善したと報告し、また術後合併症も少なかった(腹腔鏡手術19% 対開腹術31%)。

KEYNOTE-001:進行非小細胞肺がんに対するペムブロリズマブの効果を調査したスタディにおいて、PD-L1の高発現は生存期間が最長であることの予測因子であった [2019-06-11]
KEYNOTE-001: Higher levels of PD-L1 expression predict longest survival in study of pembrolizumab for advanced non-small cell lung cancer

第Ib相KEYNOTE-001試験の5年間データから、ペムブロリズマブは安全かつ有効であり、進行非小細胞肺がん(aNSCLC)の全生存率を大幅に上昇させることが示された。特に、化学療法の前治療歴のない患者の23.2% および化学療法の前治療歴のある患者の15.5% が5年後に生存しており、最も有益性が認められたのはPD-L1の高発現患者であった。これは、aNSCLC の5年生存率が平均5.5% であった免疫療法以前の時代から、著明に改善したことを示している。このスタディ結果は2019 ASCO Annual Meeting で発表され、Journal of Clinical Oncology に掲載される。

POLO:PARP阻害薬オラパリブを用いた維持療法はBRCA変異を有する膵臓がんの増悪を遅延させる [2019-06-11]
POLO: Maintenance therapy with PARP inhibitor olaparib delays progression of BRCA-related pancreatic cancer

2019 ASCO Annual Meeting で発表された第III相POLO試験の結果、PARP阻害薬オラパリブを用いた維持療法により、プラセボに比べ、BRCA 遺伝子変異を有する転移性膵臓がん患者の増悪が著明に遅延することが明らかにされた。一次治療であるプラチナ製剤ベースの化学療法終了後、疾患が増悪しなかった患者に対しオラパリブが投与された。オラパリブはプラセボに比べ、疾患増悪リスクを47% 減少させた(ハザード比=0.53)。無増悪生存期間中央値はオラパリブ群で7.4か月、不使用群で3.8か月であった。2年後、オラパリブ投与患者の22.1% において疾患の増悪を認めず、一方、プラセボ投与患者におけるその割合は9.6% であった。

新たな分子標的抗体治療は進行尿路上皮がん患者の約半数に有効性を発揮した [2019-06-11]
Novel targeted-antibody treatment produced responses in nearly half of patient with advanced urothelial cancer

単一群第II相臨床試験の結果、尿路上皮がんの97% に認められるネクチン-4を標的とした新たな薬剤enfortumab vedotin(EV)が、局所進行または転移性尿路上皮がん患者の44% において奏効し、うち12% は完全奏効であったことが示された。患者はプラチナ製剤による化学療法およびPD-1 またはPD-L1 免疫チェックポイント阻害薬の治療歴を有していた。免疫チェックポイント阻害薬が奏効しなかった患者の41% 、および肝転移を来した患者の38% においてEV が奏効した。このスタディ結果は2019 ASCO Annual Meeting で発表された。

TITAN:転移性前立腺がん患者において新薬が強力な結果をもたらした [2019-06-11]
TITAN: New drug for men with metastatic prostate cancer yields strong result

転移性去勢感受性前立腺がん患者に対しapalutamide を用いた治療は、標準治療に比べ、全生存率を有意に改善し死亡リスクを33% 減少させた(p=0.0053)。Apalutamide はX線画像上の疾患増悪を有意に遅延させ、化学療法開始までの期間は有意に改善した。第III相TITAN 試験は、ドセタキセル投与歴を有する、腫瘍量の多いおよび少ない患者を対象とした。その結果、解析された全ての群において有益性が認められた。これらの早期結果に基づき、独立データモニタリング委員会は、全ての患者がapalutamide と標準治療の併用を受けられるよう、非盲検とするように勧告した。このスタディ結果は2019 ASCO Annual Meeting で発表され、New England Journal of Medicine に掲載された。

MONALEESA-7:ホルモン療法にribociclibを併用することで閉経前進行乳がんにおける生存率が改善する [2019-06-04]
MONALEESA-7: Adding ribociclib to endocrine therapy improves survival in premenopausal advanced breast cancer

HR陽性/HER2陰性進行乳がんを有する閉経前女性に対し、ribociclib を標準治療であるホルモン療法に併用することで、ホルモン単独療法に比べ全生存率の顕著な改善がみられた、と2019 ASCO Annual Meeting で発表された。国際共同ランダム化第III相試験 MONALEESA-7 は、42か月後の生存率が併用療法を受けた女性で70% であり、ホルモン単独療法を受けた女性では46% であったことを明らかにした。これは、相対死亡リスクが29% 低下したことを示している。Ribociclib 投与群女性における増悪なしの期間中央値は23.8か月であり、プラセボ群においては13か月であった。

KEYNOTE-062:ペンブロリズマブは進行胃がんおよび胃食道接合部腺がんに対する化学療法に匹敵する [2019-06-04]
KEYNOTE-062: Pembrolizumab comparable to chemotherapy for advanced gastroesophageal junction and gastric cancers

PD-L1 陽性、HER2 陰性の進行胃がんおよび胃食道接合部(G/GEJ)がんを有する患者に対し、ペンブロリズマブによる一次治療は標準化学療法に匹敵する生存率をもたらした、と2019 ASCO Annual Meeting で発表された。ランダム化第III相試験 KEYNOTE-062 はまた、PD-L1 高発現腫瘍を有する患者に対し、ペンブロリズマブの全生存率における臨床的に意味のある改善も示した。2年後、ペンブロリズマブを単剤投与された患者の39%(すべてPDL-1 高発現患者)は生存しており、標準化学療法を受けた患者では22% であった。重篤な副作用の発現率は、ペンブロリズマブを単剤投与された患者群で最も低かった。

レナリドミドは、前がん状態の骨髄腫が明らかな多発性骨髄腫に進展する高リスク患者におけるリスクを軽減する [2019-06-04]
Lenalidomide reduces risk that precancer myeloma will progress to overt multiple myeloma in high risk individuals

2019 ASCO Annual Meeting で発表されたランダム化第II/III相試験 E3A06 で、レナリドミドは中等度または高リスク患者におけるくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)−前がん病態−が、がんに進展するのを有意に減少させることを明らかにした。一般的に、多発性骨髄腫においては臓器障害がみられ、これがSMMと鑑別する方法である。3年後、レナリドミドを投与されたSMM患者の87%(第II相)および91%(第III相)で病態が多発性骨髄腫に進展しなかったのに対し、この治療を受けず病態進展の可能性を経過観察のみで行った患者におけるこの割合は66% であった(第III相)。経過観察がこの疾患における現在の標準治療である。

Pediatric MATCH:試験の結果、小児がんにおいて標的とされる遺伝子変異が予測を上回る高頻度で認められた [2019-06-04]
Pediatric MATCH: Trial finds more frequent targetable genetic alterations in pediatric cancers than predicted

2017年のPediatric Molecular Analysis for Therapy Choice (NCI-COG Pediatric MATCH) 試験の開始時点で、難治性がんを有する小児、青少年、および若年成人における腫瘍シーケンシングにより、試験対象の標的薬に適合する遺伝子変異が発見されるのは、スタディ参加者の10% であろうと推定された。スクリーニングされた患者400人超の中間解析の結果、適合率はそれよりもかなり高いようで、24% の患者が今回の試験対象となった薬剤の少なくとも1つを用いた治療に適合した。このスタディの最新情報が、2019 ASCO Annual Meeting で発表される。